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軍を率いるもの

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「あちらはコンラッド王子が来てるようです!」

「想定内だな」

 そうオレは淡々と返した。その報告を聞くまでもなく、来ると思っていた。

「いつするんだ!?腕がなるぜ!」

 三騎士のフルトンがワクワクしている。相手が強ければ強いほどフルトンは楽しむ性格で、なかなか肝が座っている男だ。

「おい、陛下の気持ちも察しろ」

 コンラッドとオレの仲を知っているため、真面目なトラスが叱責するが、純粋に戦う相手がいることにワクワクしてんだよーと悪びれないフルトン。

「大丈夫だ。あっちがコンラッド王子を使うと予想していた」

 複雑な気持ちではあるが、これが現実だし、相手に一番ダメージを与えるために何が良いのかあっちだって考えてくるだろうとは思っていた。

「一つはウィルバード……陛下を動揺させること、もう一つは獅子王の首を取り、勝利させることでコンラッド王子に次期王として自信をつけさせる狙いもあるんでしょう。そして王になるには仲のいいウィルバート………陛下すら討たねばならない残酷な決断をさせることで成長させるつもりだろうと思う。コンラッド王子はまだ甘いところがお有りですから」

 リアンことリアムがそう説明する。エリックが訝しげにリアムを見て指をさす。

「陛下~?小姓なのになんかエラソーじゃないかな~?この男の子はなんですかね?」

 ハッ!とリアムが我に返った。口を抑えている。

「ま、まぁ……そんな話をオレとしていたんだっ!」

 ジト目でエリックがオレとリアムを見る。黒髪の少年に扮するリアンは静かになった。

「エリック……陛下に絡むのは止めなさい。こうしている間にも進軍してきている。気は抜けない」

 トラスが地図を見るように促す。そう。今からそれを説明しようとしていた。

「今回の部隊は三つに分ける」

「三つに!?あっちは大軍できているのにタダでも少ないこっちは負けちまうだろ?」

 オレの言葉にフルトンが難色を示す。

「すべての隊を動かなさい。少数精鋭。これが今回の作戦。この地形を見て、何か思いつかないか?」

 オレは三騎士に問いかけた。トラスが面白いと思いますと言った。

「この城、橋、森、谷………」

 そう!そのとおり!とリアムは頷き、ニヤリと人の悪い顔をした。リアムは話したくて仕方なさそうだったが、グッと我慢し、オレに話してあげてと目で合図している。

「この地形をいかし、そして三騎士のそれぞれの性格をいかして策を立てた。この城はエリック。橋にはフルトン。森にトラスを配置する。この発煙筒で合図するから、それぞれの色別で行動を開始してくれ」

 オレが作戦を話していると、セオドアが天幕に入ってきた。

「ネズミはいないか?」
 
「この天幕の周囲にはもういません。どうぞ。心置きなくご説明を」

 顔色一つ変えずに言い切るセオドア。間者の心配はないか?術を使った形跡も………ないか?リアムが魔法のほうは大丈夫と自分の結界の強さに自信を持って答える。

「よし……じゃあ、今回の作戦内容を話す。オレを信用しろ。どんな作戦でも疑問を持たずに遂行してくれ。結果は後からわかる」

『了解!』

 オレの腹心の三騎士はそう快く返事をしたのにその十分後には『えーっ!?』と叫んでいたのだった。

 戦いが始まる。それは意表を突いた形で……。
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