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身を案じる者が駆けていく!

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 城で一番足が速い馬を用意しておいてと頼んだだけあって、思ったより早く到着した。

「ここは!?エキドナ公爵邸ではありませんか!?」

「そうよ。ここにウィルはいる」

 トラスに私は自信を持って答える。

「なぜわかるんだ?」
 
 フルトンがそう尋ねた時だった。私が答えるより先に、エリックの声がした。

「はぁ!?なんでここにリアン様とトラスとフルトンが!?」

「それはこっちのセリフだ!」

「エリック、まさか陛下の密命でいなかったのか?」

 三騎士は騒ぐ。私はなんだと肩をすくめた。

「ウィルはウィルの策があったのね……エリックをしっかり送り込んでるなんて。三騎士が揃ってるなら手っ取り早いわ。公爵邸にのりこむわよ!」

『ええっ!?』

 三騎士達の声がハモる。仲良いわね……。

「危険だと思う。公爵の私兵が、かなりいる!だから、今から城の兵を動かし、陛下奪還のため、囲むところだったのに……」

 エリックはそう言って止める。

「フフッ。大丈夫よ。さあ!行くわよ」

 私は笑って、呼び鈴を鳴らし、正面から入った。玄関に来た執事風の男が私の顔を見た。

「どなた……おや?リアン様。……と、いうことは?」

「始めるわよ」

「かしこまりました」

 スッと綺麗なお辞儀を従順にする執事。

「な、なんだって!?誰なんだよ!?」

「エキドナ公爵の執事じゃないのか!?」

 執事は屋敷中に聞こえるように叫ぶ。

「大変です!城からの使いの者がやってきましたー!!」

 使用人たちが驚いて集まって来た。執事が小さく指でスッスッスッとサインを出した。それを見て、了解!と動き出す者たちがいた。

「さあ、三騎士達、陛下を出せ!と騒いでちょうだい」

 えっ!?あ!?と戸惑いながらも演技がかった声を玄関ホールに響かせる。

「陛下がこちらにいるとの情報がある!」
 
「陛下の身をさっさと渡せ!」

 警備隊長らしき人が飛んで来た。並ぶ三騎士の姿に傍目から見てもわかるほどに動揺している。

「ななななんのことだ!?公爵様は不在ゆえ、通せない!」

「公爵が不在なのに陛下はここにいる?おかしな情報です。公爵邸内をみせてもらいます」

 トラスが淡々と……しかし、もう待てないとばかりに足を踏み入れた。

「いなかった場合、公爵家への不敬ととってもいいのだな!?その場合、逆に拘束させてもらい、公爵様に報告させてもらう!」

 警備隊長が悪あがきし、警備兵を集めている。

「さっさと調べよーぜー」

 フルトンが待ちきれないとソワソワしている。エリックがこっちだと呼ぶ。

「そっちへ行くな!」

 エリックが隠されている地下扉を安々と見つけると警備兵が止める。

「見て困るものがあるの?」

 私が尋ねると警備兵がうっ!と怯む。少しカビ臭い地下通路は暗くて、走る三騎士と私の足音が響く。

 奥の扉の前でエリックが止まり、ドンドンとドアを叩いた。

「来ましたよーっ!陛下!いますか!?」

 ここなのね、私は思わず叫ぶ。

「ウィルバード!無事なの!?」

「リアンも来たのか?大丈夫だよ」

 中から、冷静な声がする。ホッとした……。

「鍵をぶんとってきた!」

 フルトンが警備兵から鍵を奪ってきたらしい。ガチャリと空いた瞬間、私はウィルに抱きついた。

 ……血の匂い?

 顔を上げると口の端や服に血が滲んでいる。だけど、ウィルは余裕の顔を作り、笑った。

「リアン、ここまで来るなんて、ちょっとお転婆すぎないか?」

 ……私はウィルの口の端の血を無言で拭った。手につく赤い色。

 その色に頭の中がカッと熱くなる。よくもウィルにやってくれたわね。ぐっと拳を痛いほど握りしめた。

 私が怒るには十分な状況だった。

 
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