天才と呼ばれた彼女は無理矢理入れられた後宮で、怠惰な生活を極めようとする

カエデネコ

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気まずい対面

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 兄弟のように仲が良いと言われていただけあって、コンラッドはウィルに相談したいことがあったように思えたので退室した。

 私は良いわねぇとウンウン頷いて、用意されている控室へ向かう。アナベルとエリックが付き添う。ちなみにセオドアは常にウィルバートの傍だ。いるのかいないのか時々忘れるくらい影に徹する。

 廊下は賑やかで少し開けたホールでは楽しげに会話している人々もいた。さすが大国ユクドール。戴冠式の華やかな雰囲気がそこら中に満ちていた。

「おっと、失礼した。大丈夫だろうか?」

 いきなり目の前にぬっと現れ、ぶつかりかけた人はどこかで会ったことがある気がした。公式の場ではなくて……。

「ダレン副将軍ではありませんか。この度はコンラッド殿下が即位されることお祝い申し上げます」

 エリックがペラペラと私の代弁をしてくれる。

「その顔はエイルシアの三騎士……と初めてお会いするが、もしや?」

 茶色の髪に白いものが混じるダレン副将軍が私の方に声をかけてきた………そう!城の中へおびき寄せ、石化させちゃった人じゃないのおおおおお!こ、こんなところで会うなんて!しかも元凶の私とエリック。私はバレてないでしょうけど!?

「そうです。こちらはエイルシア王国の王妃、リアン様です」

 喋らないでおこう。頼むわよ!エリック!私の意図を察したらしく、彼はダレン副将軍の相手をしてくれる。

「ほほぅ……かの有名な?」

 ゆ、有名!?どういう意味で!?私は動揺を隠すために扇子を顔に当てる。

「アハハ。うちの王妃様は美しいですからねぇ~」

「……そういうことにしておこう。ゆっくり話してみたい人物ではある。コンラッド殿下が気に入っているという話でもあるしな。どんな方なのか見定めたい。とりあえず石化を解いてもらって礼を言おう」

 軽口でかわそうとしたエリックに鋭い眼光を向ける。エリックは私とアナベルを守るように前に立ち、さすがは三騎士と言われるだけあって、その威圧感に負けずにヘラヘラと笑っている。

「王妃様は馬車の移動で疲れているので休ませてあげたいので、これで失礼しますよ。また式やパーティーでお会いしましょう」

 エリックはスススッと私を促してダレン副将軍から離す。

「フ~ッ。まだ睨んでるよぅ。リアン様、よく考えたら、あなたが参加し、あなたの策であったことを知ってる者はいるので、気をつけないといけないかもしれませんね」

「恨みに思ってる人もいるってこと?」

「まあ、そうですね。いるかもしれません」

 そりゃそうよねと私は顎に手をやり、思案する。汗かいたーと襟首を緩めるエリック。

 アナベルがお茶を淹れかけたが、控室に置かれていたお茶に手を付けるのはやめときましょうと言った私なのだった。
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