天才と呼ばれた彼女は無理矢理入れられた後宮で、怠惰な生活を極めようとする

カエデネコ

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急な来客

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 オレとリアンが国に帰ってくると、意外な来客がいた。

「ウィルバート久しぶりねっ!」

「だれだ?」

「嫌だわ~。忘れちゃったの?わたくしを思い出して!」

「まったくわからない!」

 冷たいわねぇと女性がプンプン怒る。いや、ほんとにわからない。リアンがやきもちを焼くんじゃないかな?と隣を見ると、笑いを堪えている。なぜだ!?

「誰の許可で、勝手に王宮内に知らない人をいれて……」

「私にはわかるわ。はじめまして。ウィルのお姉さまですわね?どことなく似てますわ。結婚式の時にチラッと見かけました」

「えええ!?そんな似てる?知らなくて当たり前だから、ちょっとからかっただけよ。結婚式のときも挨拶したけど下を向いていたから……」

 姉さん!?……そう言えば居たかも。他国に嫁いでだいぶ経つし、そんなに仲が良いわけでもないから、顔をパッと見てあいさつをする程度で、他国の王より関係が薄いほどだ。むしろコンラッドのほうが弟っぽい。

 リアンがオレと姉を見比べて、楽しそうに緑の目を輝かせている。

「すごーく似てるわけではないけど、どことなく共通点がある。蜂蜜色の髪に琥珀色の目をしていて、外見はそんなに似てはいないんだけど、笑うとちょっとウィルバートっぽいわ」

 オレは腕を組む。姉と言っても接点が少なかったので、他人に近い。

「何しに来た?」

「えー?遊びに来たのよぅ!可愛い弟の顔を見にきちゃいけないのー?」

 嘘だ。絶対嘘だ。弟なんて思ってないよな。それならもっと昔から関わりがあったはずだ。色々あったため、オレははっきりいって、血の繋がりのない姉妹たちを信用していない。

「……怖い顔してるわね」

 リアンがそう言って、オレのわき腹をツンツンした。フッと警戒心が緩む。

「あ、いや……すまないけど……」

 姉の滞在を拒否しようとした時だった。姉の琥珀色の目からポロポロと大粒の涙が溢れる。

「実はね、きゅうに寂しくなっちゃったの。後宮にいたんだけど、なんだかね……グスッ……」

「下手な芝居は止めろ!絶対何かあるだろ!」

「ウィルバート、ひどいわ……そんなわけないでしょう……」

 ……なんだこれ?姉が泣いてオレが怒るという構図に周囲が息を呑んで見守っている。どう収拾をつけようか?と思っていると、横から声がした。

「お姉様をしばらく後宮でお預かりするわ」

「リアン!?」

 リアンがニコッと笑う。大丈夫よとオレに囁く。緑の目がキラッと楽しそうに光る。

「私に任せてくれない?」

 どうやらいつもの調子を取り戻したらしい。それなら大丈夫かもしれない。

「じゃあ、頼むよ……オレ、姉妹は苦手なんだ」
 
「そんな感じがしたわ」

 ヒソヒソ話を終えると。リアンがニッコリと涙目の姉に笑いかけて言った。

「しばらくエイルシアでの滞在をお楽しみくださいな」

 姉はええ!いいの!?と嬉しそうに答えたのだった。


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