天才と呼ばれた彼女は無理矢理入れられた後宮で、怠惰な生活を極めようとする

カエデネコ

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集う三国の王

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「やあ。ウィルバート、シザリアの船を退けた話を聞きましたよ」
  
 コンラッドが遊びに来ている。こっそり息抜きに来たんですと……まぁ、国内が一応落ち着き、ひと段落したのだろう。

「げっ!なんでおまえがいるんだよっ!」

 シザリア王がコンラッドを見て、そう言う。

「こっちのセリフですよ。なぜウィルバードのところに海賊風情の男がいるんでしょうか?」

「海賊じゃない!シザリア王と呼べよ!相変わらず、すました顔して気取ったお高いユクドール王だな。遊びに来ていて悪いか!?」

「そんなに仲が良いわけでもなく、先日、海でいざこざを起こした人なのに遊びに来るとかおかしいでしょう」

「待て待て!おまえだって、エイルシア王国に攻めてなかったか!?」

「アレは父の命令ですから」

「無様に負けてたけどな!」

「シザリア王も人のこと言えないでしょう?」

 何を~っ!とシザリア王がコンラッドに掴みかかろうとする。オレはバンッと机を叩く。静かになる。

「そこまでだ!……二人共、なにしに来たんだ?」
 
「遊びに来ただけです!」

「遊びに来た!」

 性格も見た目も正反対の二人がそう言う。コソコソと王でありながら、お忍びでやってくる意味はなんなんだ!?

「仕事にならない……しかたない」

 仕事を中断し、テーブルに酒や食べ物を用意するように手配する。

「あのじゃじゃ馬王妃は元気なのか?」

「元気だが?」

「ここに呼んで一緒に、語り合いませんか?」

 シザリア王とコンラッドが興味しんしんでそう言う。

「呼ぶかっ!」

 これ以上、リアンに興味を持ってもらっては困る!コンラッドに至っては油断も隙もないしな。

「ケチだな。あの面白い王妃と喋りたいのにな」

「おや?シザリア王までそんなことを?」

「おまえもか!」

「話していて楽しい相手はいるものですよね」

 二人の会話にオレは頬をひきつらせる。さっきまで仲違いしていたのに、いきなりリアンのことで気が合ってる。酒がグラスに注がれて、食べ物を口にしていく。

「今回の海上戦の策、ユクドールにいながらも耳にしましたよ。お見事です」

 コンラッドはニッコリ微笑む。シザリア王は赤い液体の入ったグラスを傾け苦笑した。

「女の策を起用するエイルシア王にも驚いたがな」

「リアンが立てる戦略は悪いものじゃない。だから話を聞いて、現実的に可能なのかどうかや細かい手筈も考えて、決めている。不可能なものや無謀なものは起用しない。リアンの策が破綻すればオレは迷わず強行突破、殲滅するほうを選ぶ覚悟もしてるしな」

 殲滅しようとしてたのかよ!とシザリア王が青ざめる。

 あの王妃の変わった策を起用し、実際にやってみようとする王はこの世にいませんよとコンラッドは笑う。

 リアンのことを信頼してるからこそできるさと口には出さずに思っておく。

 酒の合間にナッツやチーズをつまんで、シザリア王はニヤリとした。

「おもしれー国だな!羨ましい!」

「ウィルバードはリアン様を譲ってくれませんよ。ダメでした」

「……仕掛け済みかよ」

 コンラッドはシザリア王の問いにすました顔をした。

 やれやれ……どうでもいいが、なんでここに集まってくるんだ?オレはリアンとの時間をとりたいんだーーーーっ!
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