天才と呼ばれた彼女は無理矢理入れられた後宮で、怠惰な生活を極めようとする

カエデネコ

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ゲームは終盤に差し掛かる

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 私はハリムとゲームをして勝ち、もらったお金で、この国の女性達が頭に被る布を買っていた。

「……で、なぜ俺が、おまえが買った布を他の女性に贈らねばならんのだ!?」

「せっかく買ったけど、私はそんなたくさんいらないし、あなたに勝ち続けていて、物もお金も余ってるの。それにハリムの時間を私に使うことで、他の女性から私は恨みを買ってるでしょう」

「つまり贈り物をして、後宮の空気を和ませようっていうこと作戦か!?媚びるのか!?」

「怠惰に過ごしたいの。そのためには全力で媚びるわ!」

「清々しいほどはっきり言うな……」

「当然よ。平和を愛する私ですもの。のんびり過ごしたいの。あなたから贈り物をもらえたら、他の女性たちも、悪い気がしないでしょ?」

 頬杖をついて、つまらんなぁとハリムは言った。

「俺が他の女に贈り物をしても、なんとも思わないと言うことか?」

「今のところはなんとも思わないわね。それにゲームの敗者は勝者の望みを叶えるものよ」

 ハリムの表情が、ややスネ気味になり、わかった!と勢いよく立ち上がる。

「ふん!どうせ敗者だ!しかし、約束を違えたくはない。おもしろくないが、ゲームだ!罰ゲームだ!」

 私が示した布を手に持ち、怒ったように部屋から出ていってしまう。

「リアン様、今のはハリム様を怒らせる策なんですか?」

 アイシャが今のは意味が何かあるのかと首を傾げる。私はどうかしらねぇと微笑んだ。
 
 今夜もウィルはやってきた。

「ハイロン王は、それで他の女性たちに贈ったのか?」

「そうしてくれたみたいよ」

 アイシャに尋ねるともらった10名の女性たちはとても喜んていたという話だった。

「ふーん。……オレには単なる贈り物じゃないように思えるけどな。リアンの考えは別のところにあるな?」

 ウィルはその贈り物の含んだ意味に気づいたのね。さすがだわと私は思いながらも、その答えは口にせず、次の考えを口にした。

「ウィル、そんなに長く国を空けて居られないでしょう?明日か明後日には帰らないと、バレるわよ。アナベルとセオドアも心配だわ」

「わかってる。帰るさ……だけどリアンを連れて帰りたい」

 私はしばらく無言になる。策が成るには、もう少し時間がほしい気がしたため、返事ができなかった。

「オレの策じゃダメか?」

「どんな策なの?」

「コンラッドにリアンを買わせる。相手の言い値で買う。そしてシザリアの船を用意してある。すぐ乗って帰る」

「断られたら?」

「力ずくで奪っていく。リアンはエイルシアの王妃であり、返さないならエイルシアの軍を動かすことすらオレは厭わない」

「……………ウィル」

 フィッとそっぽを向くウィル。ハリムと同じように拗ねているけれど、世の中じゃ『獅子王』と呼ばれるほどの王なのに可愛らしい一面を私に見せる。可愛らしいだけではないのがウィル……ウィルバードだから、玉座の重みや国を背負う責任をわかっていての拗ねなのだから……だから私は彼が好きなのだ。

 きっとウィルは……。

「民や国を捨てるような男をリアンは選ばないよな。だからオレはリアンに選んでもらえるように、我慢している。本当はリアンを今すぐにでも、無理矢理だろうが、なんだろうが連れ去りたい」

 ここまで迎えに来てくれたウィルなら、そう言う気がしていたわ。私は涙が目の端に滲みそうになるのを我慢した。私だって本当はなりふり構わずに、ウィル、来てくれて本当に嬉しいとその腕の中に飛び込みたい。

「大丈夫よ。待っていて。必ずウィルバードのもとへ帰るわ。ハリムとのゲームは終盤に差し掛かっているところよ」
 
「ゲームでリアンが負けたことがないことをオレは知っている。それでも心配させてくれ」

 オレを頼ってほしい!求めてほしいんだ!と青い目が訴えている。ウィルのその表情に、私は自分の想いを伝えたい気持ちが溢れてくる。

「ウィル……私、あなたのこと……」

 大好きなのよと言おうとした時、そろそろですよーとエリックの合図が暗闇で一瞬チカッと光った。ウィルは名残惜しそうに帰って行ってしまったのだった。

 キングの駒がこちらに来たのは驚いたわ。でもなるべく使いたくないの。だって、このゲームはウィルバードのキングをとられたらゲームオーバーなのよ。

 彼に私が弱みや不安を見せれば、無茶してでも連れ去ろうとする。冷静な自分を保つのは難しい。大好きだと口にしなくて良かったわ。危うく言いかけた。私だってこれ以上、我慢できなくなるもの。ウィル……私がどれほどあなたの傍にいたいって思ってるのか気づいてる?

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