天才と呼ばれた彼女は無理矢理入れられた後宮で、怠惰な生活を極めようとする

カエデネコ

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ラッセルの想い

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 私は怪しんでいる。そう。最近、ウィルの周囲をチョロチョロしてるラッセルのことだ。でもなにか企みがあるわけではなさそうなのよね。むしろウィルの仕事が楽になっているみたいだから、悪くもない。

 しかし何かがあるような気がしてならない。

「リアン様、先生から手紙が来ましたよ」

 アナベルが手紙を渡してくれる。ピッと封を切る。

「ええええええええ!?」

「お嬢様!?な、何事でしょう!?」

 私の叫び声に、アナベルが驚いていた。

 師匠からの手紙は相変わらず短い。今回のは特に短い。そこには思いがけない単語のみが書かれていたのであった。

 その日の午後、私は図書室へ行った。クロードが巻き込まれたくない!勘弁してくださいよぉと情けない声をあげた。

「今日の護衛は……エリック様ですか。そりゃ、面白がりますね。陛下に怒られても知りませんよ!?」

 クロードがそういうが、エリックはどうにかするから、いいんだよーとお気楽に笑う。エリックは私からすでに話を聞いているし、私に頼まれてしたことだった。

「図書室に来いって……わざわざ呼び出すなよ。俺は陛下のために働いていて、忙しいんだ。わかるだろう?ただ後宮にいてゴロゴロ怠惰に過ごしてる王妃とは違うんだ」

 やってきたラッセルが嫌味を交えて言う。

「ラッセル……私のこと昔からキライだったわよね?」

「今更、確認しなくてもそうだ!わざわざそれを聞くために呼んだのか!?」

「その理由ってまさかだとは思うけど……ウィルが私のこと好きだから?嫉妬心から嫌がらせしてきていたのかしら。その……つまり、あなた、もしかしてウィルのこと好きなの?」

 私の一言で一気に顔が赤面した。えええ!?やっぱり当たりなの?と思わず額に手をやってしまう。

「ばっ、馬鹿か!?なにか勘違いしてるだろう!?」

「あなたがウィルに好意を持っている。そう考えたら思い当たる節があるのよね」

 私塾時代のことが浮かび上がってきた。

 私とウィルが隣に座って昼食をとっているとラッセルは大声でひやかしたり、私とウィルが歩いているとわざわざ真ん中を通ってぶつかってきたり、私が本を抱えていてウィルが持ってくれようとした時、わざとウィルを呼んだり、グループにわかれて研究する時もなぜか同じグループに入ってきて、私とウィルの会話を邪魔してきた。

 昔話を延々とする私にラッセルは赤くなったり青くなったりしている。

「やめろおおおおおお!!」

 叫びだしたラッセルに驚き、エリックが反射的にバッ!と私の前に立つ。ビシッとラッセルは私に向けて指を指した。

「リアンになにがわかるんだっ!こっちはずっとずーっとウィルのことを見ていて、伝えられない好意を秘めていたのに!後宮に入ってみたら、たやすく何の苦労もなく王妃になって、王がウィルだったってそれなんだよっ!?おかしいだろ!?甘っちょろい人生送りやがってええええ!」

 護衛のエリックが叫びを聞いて、ヤバイ奴じゃないか?これ自暴自棄になっちゃう?と小さく呟く。右手は剣の柄に置いたままだ。
 
「ウィルはウィルで王様だって?まだ信じられない。あの優しくて穏やかなウィルはどこいってしまったんだよ!俺が好きだったあのウィルを返してくれよ!」

 無理よ。あのウィルは……今は……と私は口を開こうとしたが、ラッセルの勢いは止まらないため、口を挟む余地がない。

「私塾で、女のくせに首席を譲らず、天才ともてはやされて!それなのにアッサリ嫁に行くとかどうなんだよ!まあ!いい!おまえはそうやって後宮から出ないでいればいい。俺の出世を指を咥えてみてやがれ!部屋から一生でるなっ!ざまあみろおおおおお!」

 最後は半泣きで叫んで図書室から出ていった。

「まさかの青春?良いねぇ。若者は!」

 クロードがメガネをちょっと直して微笑んだ。

「えーと、なにもなかったけど、リアン様、大丈夫ですか?固まってますか?」

 エリックの言葉にハッ!と我に返る。

「ええ……大丈夫だけど、あそこまで拗らせてるとは思わなかったわ……私のこと嫌うはずよね……」

 そう……ウィルは私塾に来たら、常に私の傍にくっついていた。他の人と交流もしていたけれど、私のことを面白いとか楽しすぎるとか飽きないとか言ってウィルは傍を離れなかった。

 ラッセル、不憫すぎるわ。いや……でも……ウィルの私に対する感情が、愛とか恋とかいうものではないと思っていたから、びっくりしたんだけどね。

「わが主はモテますね。切ない恋バナになるかと思ったら、やけに賑やかな男だったなぁ。叫びがすごかった」

 エリックが楽しそうに言った。

「恋心を持つ人がウィルの傍にいるって危険かしら?」

 私がエリックに尋ねるとハハッと笑われた。

「例え、襲われても陛下なら相手の腕、足、首をへし折りますから大丈夫です。相当強いですからね」

「そんな爽やかな笑顔で言うことじゃないけど、安心したわ」

 うーん……ウィルに言うべきか言わないほうがいいのか?

 図書室は夕闇が迫ってきていた。少し切なさの残る夕暮れだった。

 昔のウィルがいいと叫んだラッセル。だけど彼が求める穏やかで優しくて少しぼーっとしていたあの時のウィルは今はいないのよと赤く染まる部屋で私は佇んだ。
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