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娘と母と祖父
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「お父様、世界商人の勉強をクロエにさせてるでしょう?」
「悪いか?」
「一国の王女にそういう教育いらないでしょう!?」
お父様は少し歳をとったものの、まだまだ元気で、生気に満ちていて、商売ものりにのっている。そして王国への貢献度を評価されて、クラーク男爵家からクラーク伯爵家へとなった。
「好き勝手に勉強していたおまえがそれを言うか!?」
コンコンと扉がノックされる。どうぞと私は返事をした。
来客が誰だか顔を見せる前に予想がつく。
「失礼しますわ。お祖父様がいらっしゃってると聞きましたの」
お行儀よく入ってきたのはクロエだった。
「おー!クロエ!会いたかったぞ。ちょうど土産を持ってきた!」
「お祖父様!大好きー!」
……まったくこの二人は。私は机をトントントンと指で叩いて険悪な顔をした。
「演技は止めて。二人とも、どうせクロエになにかあげる約束をしていたんでしょ」
お父様がハハハと笑い出す。
「リアンの前で下手な演技は効果ないか。クロエ王女様、どうぞ約束の品です。差し上げましょう。世界地図に航路を書き込んでおきました」
「お祖父様、よそよそしい喋り方、止めてよー」
父は孫娘にそう言われて、にっこり微笑む。この二人、やけに気があって仲が良い。
「商人はいろんな顔を持つのです。その時々で、変化させることが上手いものだけが商談を成功させます」
「お父様!だからっ!いちいちクロエに商人の心得みたいなことを吹き込まないでよっ!」
クロエが私の反応に唇を尖らせる。
「いいじゃなーい!それくらい!わたし、王宮内だけの教育は退屈だもの。それにちゃんと王宮での教育の課題も済ませてるでしょう」
「そういう問題じゃないと思うわよ」
バチバチと私とクロエの視線がぶつかり合う。プイッとクロエが部屋から出て行く。
クックックとお父様が笑いを噛み殺している。私は半眼になって、お父様を非難がましく見た。
「私の時は私塾へ行くことに、いい顔しなかったくせに……」
「孫には甘い。世の中の祖父などそんなものだ」
さてと……と、父は真剣な顔をし、本題に入る。世界商人と呼ばれる者の顔つきになったと言ってもいいだろう。
「世界商人は物流のながれ、物価の変動を読み解いて、世界の情勢の行く末すら読む。おまえはどうみる?」
「平和に見えて平和ではないわね。わずかにバレないようになのか、巧妙に隠すように……穀物と金属が値上がりしているわね。その2つが消えた先も気になるわ」
「そう思ったか?」
ええ……と私が頷くと、父も少し難しい顔をした。
「今度、国外へ商談に行く。少し様子をみてこようと思う。その時にこの国の美しい宝石を持っていきたいが、許可願えるかな?」
私とお父様はしばらく静けさの中、睨み合うという表現が近いかもしれない。張り詰めた空気が流れた。
「……いいわ」
その場の雰囲気を緩めたのは私からだった。
「陛下には私から話しておくわ。だけどその宝石はけっして変わりがないものなので、壊したり失くしたりしないと約束できるならばよ」
「王妃様はアイシャを覚えていますかな?」
ハイロン国にいた時に、私の侍女として傍にいた女性のことだった。
「もちろんよ」
「アイシャを宝石の護衛に付けようと思う」
なるほどと私は頷く。彼女なら安心だわ。
「宝石に手や足が勝手に生えて、勝手に出ていかれるよりはマシだわ。城の者を使えば、バレて絶対反対されるし、安全に密かに宝石を運びたいわ……」
私は額に手を当てる。
「リアン、子育てとは両親の思い通りにはいかないものだ。そう自分を省みて思わないか?そして言うだろ?『かわいい子には旅をさせよ』ってな!」
うっ……とお父様に言われて言葉に詰まる私なのだった。そう言いつつ、後宮へいれたのはだれよ?ドヤ顔が何となく憎らしく感じたのは気の所為だったのだろうか?
「悪いか?」
「一国の王女にそういう教育いらないでしょう!?」
お父様は少し歳をとったものの、まだまだ元気で、生気に満ちていて、商売ものりにのっている。そして王国への貢献度を評価されて、クラーク男爵家からクラーク伯爵家へとなった。
「好き勝手に勉強していたおまえがそれを言うか!?」
コンコンと扉がノックされる。どうぞと私は返事をした。
来客が誰だか顔を見せる前に予想がつく。
「失礼しますわ。お祖父様がいらっしゃってると聞きましたの」
お行儀よく入ってきたのはクロエだった。
「おー!クロエ!会いたかったぞ。ちょうど土産を持ってきた!」
「お祖父様!大好きー!」
……まったくこの二人は。私は机をトントントンと指で叩いて険悪な顔をした。
「演技は止めて。二人とも、どうせクロエになにかあげる約束をしていたんでしょ」
お父様がハハハと笑い出す。
「リアンの前で下手な演技は効果ないか。クロエ王女様、どうぞ約束の品です。差し上げましょう。世界地図に航路を書き込んでおきました」
「お祖父様、よそよそしい喋り方、止めてよー」
父は孫娘にそう言われて、にっこり微笑む。この二人、やけに気があって仲が良い。
「商人はいろんな顔を持つのです。その時々で、変化させることが上手いものだけが商談を成功させます」
「お父様!だからっ!いちいちクロエに商人の心得みたいなことを吹き込まないでよっ!」
クロエが私の反応に唇を尖らせる。
「いいじゃなーい!それくらい!わたし、王宮内だけの教育は退屈だもの。それにちゃんと王宮での教育の課題も済ませてるでしょう」
「そういう問題じゃないと思うわよ」
バチバチと私とクロエの視線がぶつかり合う。プイッとクロエが部屋から出て行く。
クックックとお父様が笑いを噛み殺している。私は半眼になって、お父様を非難がましく見た。
「私の時は私塾へ行くことに、いい顔しなかったくせに……」
「孫には甘い。世の中の祖父などそんなものだ」
さてと……と、父は真剣な顔をし、本題に入る。世界商人と呼ばれる者の顔つきになったと言ってもいいだろう。
「世界商人は物流のながれ、物価の変動を読み解いて、世界の情勢の行く末すら読む。おまえはどうみる?」
「平和に見えて平和ではないわね。わずかにバレないようになのか、巧妙に隠すように……穀物と金属が値上がりしているわね。その2つが消えた先も気になるわ」
「そう思ったか?」
ええ……と私が頷くと、父も少し難しい顔をした。
「今度、国外へ商談に行く。少し様子をみてこようと思う。その時にこの国の美しい宝石を持っていきたいが、許可願えるかな?」
私とお父様はしばらく静けさの中、睨み合うという表現が近いかもしれない。張り詰めた空気が流れた。
「……いいわ」
その場の雰囲気を緩めたのは私からだった。
「陛下には私から話しておくわ。だけどその宝石はけっして変わりがないものなので、壊したり失くしたりしないと約束できるならばよ」
「王妃様はアイシャを覚えていますかな?」
ハイロン国にいた時に、私の侍女として傍にいた女性のことだった。
「もちろんよ」
「アイシャを宝石の護衛に付けようと思う」
なるほどと私は頷く。彼女なら安心だわ。
「宝石に手や足が勝手に生えて、勝手に出ていかれるよりはマシだわ。城の者を使えば、バレて絶対反対されるし、安全に密かに宝石を運びたいわ……」
私は額に手を当てる。
「リアン、子育てとは両親の思い通りにはいかないものだ。そう自分を省みて思わないか?そして言うだろ?『かわいい子には旅をさせよ』ってな!」
うっ……とお父様に言われて言葉に詰まる私なのだった。そう言いつつ、後宮へいれたのはだれよ?ドヤ顔が何となく憎らしく感じたのは気の所為だったのだろうか?
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