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招かざる訪問者
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驚くことに、死んでしまったんじゃないかとさえ思ったアランは、次の日には元気そのものだった。
『もう、ええから』って言われても、何度も感謝の気持ちを伝えた。それでも、全然足りない。
そして男子寮で色々と協力してくれたアランの友人にもお礼を言って、治りきっていなかった戦場の傷を全員綺麗に治してあげたりもした。みんな、本当にいい人だった。
アランの周りには、いつも優しい人たちがたくさんいる。
それは、きっとアランの人柄のお蔭なんだろう。
「どうしたんや。なんかさっきから浮かん顔してるやん」
「そうかな?」
「もしかして、サオトメの事か?」
実は、ローレンは未だに目を覚ましていない。
それはローレンだけじゃなく、他にもまだ数名いる。
上級クラス棟の最上階に作られた、下級クラス生入室禁止と書かれた部屋で、今もローレンは眠ったままだ。
そうなった原因は、私……
あの時、私を守るようにして壁になったローレンが鮮明に浮かび、思わず眉をひそめる。
「看護師がすぐ目ぇ覚ますって言うてたやろ。俺らはそれを信じて待つしかない。心配なんは分かるけど」
それは分かってるけど……
「前にも言ったけど、戦地での事なんやから気にせんとき。サオトメはシエルちゃんを助けたくて助けたんやろ」
私が周りをちゃんと見ていたら、あんな事にはならなかった……
そう思うと悔しくて、下唇を噛んだ。
「それに……目の前にいる大切な人を助けられんで、自分がのうのうと生き残るくらいやったら、助けて死ぬ方がマシやと思うで」
アランはテラスの手すりに背を向けて、手すりに肘を置いた。
「そんなっ……。死んだら意味ないじゃん!」
「あいつはどうか知らんけど、少なくとも俺は……」
アランの真剣な目が私を見て、ドキっとする。
次の瞬間、彼の手が私の頬にそっと触れた。
「死んでもいいから、シエルちゃんを助けたいって思った」
困ったように微笑むアランの顔に、私の目は大きく見開かれた。
「意味なんて……そんなのどうでもええねん。惚れた女を守れんで、男が立つ瀬がないやろ」
惚れた、女……?
「えっ……」
まさか……、まだ……
月明りに照らされたアランは、静かに眉をひそめる。
「シエルちゃん……俺、めっちゃシエルちゃんのことが好きやねん」
驚きのあまり、思わず口元に手を当てた。
「望みなさそうやって分かってても、この気持ちを止められへんくらい……俺……シエルちゃんの事が好きや!」
『もう、ええから』って言われても、何度も感謝の気持ちを伝えた。それでも、全然足りない。
そして男子寮で色々と協力してくれたアランの友人にもお礼を言って、治りきっていなかった戦場の傷を全員綺麗に治してあげたりもした。みんな、本当にいい人だった。
アランの周りには、いつも優しい人たちがたくさんいる。
それは、きっとアランの人柄のお蔭なんだろう。
「どうしたんや。なんかさっきから浮かん顔してるやん」
「そうかな?」
「もしかして、サオトメの事か?」
実は、ローレンは未だに目を覚ましていない。
それはローレンだけじゃなく、他にもまだ数名いる。
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そうなった原因は、私……
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「看護師がすぐ目ぇ覚ますって言うてたやろ。俺らはそれを信じて待つしかない。心配なんは分かるけど」
それは分かってるけど……
「前にも言ったけど、戦地での事なんやから気にせんとき。サオトメはシエルちゃんを助けたくて助けたんやろ」
私が周りをちゃんと見ていたら、あんな事にはならなかった……
そう思うと悔しくて、下唇を噛んだ。
「それに……目の前にいる大切な人を助けられんで、自分がのうのうと生き残るくらいやったら、助けて死ぬ方がマシやと思うで」
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「そんなっ……。死んだら意味ないじゃん!」
「あいつはどうか知らんけど、少なくとも俺は……」
アランの真剣な目が私を見て、ドキっとする。
次の瞬間、彼の手が私の頬にそっと触れた。
「死んでもいいから、シエルちゃんを助けたいって思った」
困ったように微笑むアランの顔に、私の目は大きく見開かれた。
「意味なんて……そんなのどうでもええねん。惚れた女を守れんで、男が立つ瀬がないやろ」
惚れた、女……?
「えっ……」
まさか……、まだ……
月明りに照らされたアランは、静かに眉をひそめる。
「シエルちゃん……俺、めっちゃシエルちゃんのことが好きやねん」
驚きのあまり、思わず口元に手を当てた。
「望みなさそうやって分かってても、この気持ちを止められへんくらい……俺……シエルちゃんの事が好きや!」
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