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第九章 大会の賞品はEカップ?

第十九話 日程が延びたのでエイミアとリジーの実践的訓練開始!…なんですよね…

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貴族に大量の欠員・・が出たためトーナメントの組み合わせをまた組み直すことになったそうだ。

「また数日順延になっちゃいましたね…」

「エイミアの試合は本当なら今日だったんだよな…本当なら・・・・

そうねそうね!ホントならね!

「私はその方がいい。もう少し訓練したかった」

「そうね。リジーの訓練ももう少し実践的な段階まで引き上げたかったし…」

あ、そうだ。

「エイミア、あんたも訓練に混じらない?」

「え?私ですか?」

「あんたの静電気訓練も仕上げ段階だし…リジーに協力してもらえればちょうどいいわ」

「ん。私もエイミア姉と訓練したい」

「そういうことなら…わかりました。私も参加させてもらいます」

「ならリルも協力してくれない?」

「…もう敗退してるから訓練の意味ねえんだけど…」

「リジーとエイミアの訓練でリルに協力してほしいのよ。リルにとってもムダにはならないからさ」

「私の協力って……エイミアにはキツいんじゃねえか?」

「大丈夫よ…あんたもびっくりするわよ?エイミアの成長ぶりは目覚ましいんだから」

…というわけで。
今日1日かけてエイミアとリジーの実践的訓練をすることになった。
え?何の実践だって?
…今言ったら面白くないでしょ。


「…よし、この辺りね」

「けっこう深い森ですね…」

私達は帝都の近くに広がる森林地帯に来ていた。

「なぜ森で訓練?」

「あんた達の仕上げのためよ。黙って待ってなさい」

そう言って私は森の拓けた場所に半径2~3mくらいの円を書く。

「じゃあエイミア。この円の中に入って」

「あ、はい…私は何をすればいいんですか?」

「ちょっと待ってなさい…リルー!準備はいいー?」

『……おーう!いつでもいいぜー!』

私はニッコリと笑って振り返った。

「じゃあ始めましょうか」


「エイミア。あんたは絶対に円から出てはダメよ」

「へ…?」

「リジーは逆に円に入っちゃダメよ」

「…?」

「さて…説明するわ。今から2時間、リルがエイミアを狙う。それを完全に凌ぎなさい」

「「…へ?」」

「ただしエイミアとリジーにはそれぞれ制限をつける。まずエイミア」

私はエイミアの釘棍棒を取り上げた。

「エイミアは円から出ることも攻撃することも禁止。ただ円の中でリルの動きを探知してなさい」

そしてリジーからは“首狩りマチェット”を取り上げた。
…て呪われてるんだった!

「危ない危ない…リジーは“不殺の黒剣”アンチキル以外の武器の使用は禁止。エイミアが探知したリルの位置を頼りに、ひたすらリルからの攻撃を止めること」

「私は防御するだけか?」

「攻撃できそうならしても良いわよ…ていうか攻撃する余裕があれば・・・・・・・・・・だけどね」

そう言ってから私はエイミアを指差す。

「勝敗条件は『2時間エイミアが無事でいられるか』ということ。もし一発でもエイミアが攻撃をうけた場合は…」

…厳しいけど仕方ない。

「…エイミアとリジーには大会を辞退してもらう」

…エイミアとリジーは息を飲んだ。

「それぐらいの覚悟でやってもらうわ…どうする?やめとく?」

エイミアはすぐに。リジーは少しだけ考えてから。

「やります!」
「………私も…やる」

…結論を出した。


「じゃあ…始め!」

私の掛け声と同時にリルが気配を消した。≪猫足≫を使いだしたみたい。

「…|≪蓄電池≫《バッテリーチャージ》」

エイミアも静電気の膜を広げる。
…しばらくは何の動きも無いまま時間が過ぎていく…。

「リジー!右に飛んでください!」

リジーが反射で右に転がる。

ドスッ

リジーがいた場所に矢が突き立った。

「防いでください!」

再び放たれた矢をリジーが短剣で弾く。

「…移動したみたいです…」

「エイミア姉、追うことはできない?」

「…膜の限界すれすれをウロウロしてるから難しいです…無理して追うとせいでんきが尽きてしまいかねません」

「そっか…なら現状維持で」

「わかりました」


…それから30分。
リルはまったく動かない。

「はあ…はあ…」

ずっと|≪蓄電池≫《バッテリーチャージ》を維持したままのエイミアは息があがっている。

「…エイミアは『体力』もあげないとダメね…」

エイミアみたいにスキルを主にして戦うタイプには『体力』が低いのは致命的な欠点だ。

「………」

一方、リジー。
エイミアの声がかかったら、すぐに動けるように待機してるけど…。

「…さすがに集中力が途切れがちね…」

あちこちキョロキョロしたり、鳥が飛び立つ音に反応したり…。
集中力ってどのステータスが影響してるのかしら?

「リジー後ろ!」

「痛っ!!」

咄嗟に反応できなかったリジーの肩を矢が掠めた。

「だ、大丈夫ですか!!」

「駄目!集中して!」

|≪蓄電池≫《バッテリーチャージ》が途切れかけたことを察知したリジーがエイミアに注意する。

「!!…ごめんなさい…」

エイミアは再び|≪蓄電池≫《バッテリーチャージ》を展開する。
すると。

「3歩前へ!」

…今度は反応できたらしく、余裕を持って矢を避ける。

「わ、私に向かって…わっ!」

エイミアを狙って飛んできた矢は、ギリギリでリジーが弾いた。

「ごめん。反応遅れた」

「大丈夫です。このまま集中しましょう」

「わかった!」


そして。
2時間。


「…はい、終わり」

…エイミアとリジーは。

「…はぅああああ…疲れました……」

「もう無理…ヘロヘロ」

…耐えきった!

「やっったわね!」

「わ!」「ひゃ!」

「あんた達ほんっとによくやったわ!文句無しの合格よ!」

私は嬉しさのあまり、つい2人を抱き寄せて頬擦りしまくった。

「ちょ、ちょっとサーチ!」
「う~~…苦しいけど嬉しいような…」

「おいおいサーチ。エイミアが窒息しかかってるぞ。離してやれよ」

いつの間にか戻ってきたリルが苦笑しながら私に言った。

「ん?…ああ、ごめんごめん」

…なぜか顔を真っ赤にしたエイミアが俯いた。

「サーチ姉。私の短剣は…」

「もう大丈夫よ。防御という観点から見れば文句無し。免許皆伝ね」

…防御だけの免許皆伝だけどね。

「……あ、あの……私は…モジモジ」

…何で口で「モジモジ」言ってるのかは謎だけど…まあいいか。何が言いたいかはわかるし。

「エイミアも完璧よ。2時間もの間よく維持したわ」

「!…じゃあ…」

私は満面の笑みで頷いた。

「そうよ。エイミアの|≪絶対領域≫《アルティメットゾーン》は完成よ!」
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