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第十二章 保護活動でFになっちゃった。

第十三話 最悪ダンジョンの攻略法が意外なところで判明!…だけど厄介な同行者が増えたんですよね…

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「はあ!?超最短ルートがあるぅ!?」

夜。
偽名を使い|≪化かし騙し≫《トリック》で姿を変えて、どうにか旅館に泊まることができた私達はリルの報告に耳を疑った。

「いや、それはないでしょ。ダンジョンにそんなモノあったら難易度もクソもないじゃない」

「私もそう思います。ソレイユが必死に守ろうとしてる“秘密の村”がある場所ですよ?普通より難しくすることはあっても、抜け道なんていうモノは作らないと思います」


“八つの絶望”ディスペア・オブ・エイトの最難関ダンジョン旋風の荒野トルネード・ウェルデネス
ソレイユがモンスター達を守るために作り上げた堅牢な風の防壁。
触れた者は皆天空に巻き上げられ、真空によって八つ裂きにされるという。
触れたら即死とも言える風の防壁は、風であるが故に見えない・・・・壁なのだ。
そんな凶悪なモノが広い荒野のあちこちに点在しているのだ。どう考えても攻略する術はない。
はずなんだけど…。


「ああ、私もあり得ないって思った。『お前、私をナメてるのか?』って脅しまくって、かなり深く深爪もやったさ!」

深爪やってるのかよ!
あんだけ“深爪”って言われるのを嫌がってたクセに!

「そしたらあの男が言うんだよ!『じゃあ聞くけどよ!なんでダンジョン内を自由に行き来してるモンスターがいるんだよ!』って!」

へ?モンスター?
たしかに旋風の荒野トルネード・ウェルデネスにはモンスターはいるけど…出現するのは風の防壁の外のはず。風の防壁内部にはいないはずじゃ…?

「どうやら例の半蛇人ナーガが風の防壁内をウロウロしてるのが目撃されたらしくてな…」

…ああ、そっか!そういうことか!

「…“秘密の村”の住人であるモンスターには、安全に風の防壁を行き来できる何か・・がある…ていうことか」

「そうですね…守られる側にまで牙を剥く防壁なんて、あっても害悪でしかないですもんね…」

モンスターだって腹は減る。ダンジョンの外に出て食料を調達しなきゃいけないわけだし。

「ならソレイユに聞くのが早いですね。連絡してみます!」

そう言ってエイミアは年話水晶を取り出す。

「ちょっと待ってエイミア。たぶん後からのほうが…」

「いえ!こういうことは急いだほうがいいですから」

…止めてもムダか。

「わかったわ…あ、悪いけど隣の部屋で連絡してきて」

「?…わ、わかりました…」

エイミアは「何でだろ?」と言いながら部屋を出てった。
たぶんエイミアは、相当あられもない姿のソレイユを目撃することになるでしょう。
…私達まで変な気分にはされたくないからね。人身御供はエイミア1人で十分。

「私はケンタウルスに連絡してみるわ」

…デュラハーンはめっちゃ株が下がっちゃったからね…ケンタウルスみたいな常識人は貴重だ。

「ケンタウルスは念話水晶持ってるのか?」

暴風回廊ゲイルストームに常備してあるそうだから、そっちに連絡してみるわ」


『申し訳ないんですが、私は知りません』

重要人物ケンタウルスが知らないってオチは想像してなかったあ!
はあ…仕方ない…イヤだけどデュラハーンに…。

『スワリが目覚めてますから、彼女に聞いてみては?“秘密の村”出身ですよ』

「そうなのっっ!?出して出して今すぐ出して!」

『構いませんけど…デュラハーンという選択は…』

「ない!ないない!あんなセクハラゾンビ!」

全員賛同してくれてる。後ろで頷いてるのがわかった。

『……そう悪く言わないでくださいな。一応私の亭主ですので』

………………はい?

「…誰と誰が?」

『私とデュラハーンが、です』

う~ん…何ともワイルドな組み合わせ…。

「あの~…」

エイミアがおずおずと手をあげる。

『はい、何ですか?』

「お子さんは…」

うわ、すっげえ気になる質問!
首が外れるケンタウルスとか生まれるのか!?

『はい、いますよ』

「「マジで!?」」

『?…そんなに気になることです?』

はい、スゴく。

「ハーフになりますよね?私も別の種族とのハーフだから気になったんです」

お?エイミアにしてはうまい聞き方。

『そういうことですか。うちの子は元気なアンデッドケンタウルスですよ』

…そうなったか。

「首はとれないんですか?」

『ええ…まだ・・

そのうちとれるの!?


ちょっと話が脱線しているうちに、ケンタウルスの後ろをウロウロする影が見えた。たぶんスワリだろう。

「すいません、後ろにいる人見知りの子と代わってもらっていいですか?」

『え?…あら、スワリいたんですね。ちょっと待ってください』

ケンタウルスがスワリを捕まえに向かった。
…しばらくすると、じたばたと暴れているスワリを片手でぶら下げているケンタウルスが戻ってきた。力あるねえ…。

『ほら、ちゃんと話をしないと駄目ですよ?』

『あぅぅ…』

半分涙目でスワリが念話水晶の前に座らされる。

「久しぶりねスワリ」

『ひぇ!!ごごごごめんなさいぃぃっ!』

「もう気にしてないから」

『ででででも!わわわわ私がわるわるわる悪かったんですから!』

「ちょっと落ち着きなさいよ」

『おおお落ち堕ち墜ちオチ落ち着いてましゅ・・!』

「誰が落ち着いてるって!?どう見てもテンパってるじゃないの!」

『ひええ!すいませんすいませんごめんなさいごめんなさいごめんなさいー!!』

「だからテンパるなああああ!!人の話を聞けえええええええっ!!」


…結局らちが明かないので、物腰が柔らかいエイミアのほうがいいだろう…ということで。

「エイミアー、頼めるー?」

「は、は…私に何か用でしゅ・・か?」

エイミアを呼びに行ったんだけど…完全に茹で上がってるじゃない。やっぱり刺激が強かったみたいね。

「…大丈夫?」

「だ、だいじょう!」

「ダメだああ!エイミアもテンパってるううう!」

ああもう!どうすればいいのよ!

「おいサーチ」

「何よ!」

「お前が落ち着けよ…リジーが上手いことやってくれてるぜ」

…へ!? 


『あひゃひゃひゃひゃ!ひい、ひい、いひゃひゃひゃひゃ!』

何よこの笑い声!?

「あ、サーチ姉。何かウケた」

「…みたいね」

『うひゃひゃひゃひゃひゃひいいっ!ごめんなさいー!』

何で私が覗き込むとテンパるのよ!

「…リジー、任せるわ。旋風の荒野トルネード・ウェルデネスの最短ルート聞き出して」

「あ、それはすでに解決」

はいいっ!?

「スワリが一緒だと大丈夫らしい。だから同行してもらうことになった」

…同行っすか。大丈夫かな。

『いひゃひゃひゃひゃひゃ!』

…リジーを見て笑ってるか。

『きいあああ!許して許してごめんなさいいい!』

…私を見て怯える。

あーあ。
めんどくさい同行者が増えちゃった…。
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