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第十三章 帝国潰してもEんです!

第十四話 1つの章には必ず1つの温泉回!これが絶対の法則なんですよね!「…法則?」

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リファリス・リフター伯爵夫人のいろんな意味で「あまりにも…」な過去にドン引きした一堂。
さらに「エイミアとヴィーは気に入られちゃった」という事実に、さらにさらに引きまくる一堂。
ていうか主に2人。

「……き、今日はお開きにしましょうか……ていうか今から何かする気力は全くないし…」

全員力無く頷き…私の提案どおりにお開きとなった。


「ねえスケルトン伯爵。帝都には温泉はないの?」

「…有る無しを語る以前に…我が家の風呂が温泉なのだがぐゎぐゎぐゎ!」

「温泉!?ホントに!入っていい?入っていい?ていうか入るから!」

「おいサーチ、スケルトン伯爵を離してやれよ。あんまりガクガクするから、アヒルみたいな声出してるぞ?」

え?…あ、しまった。
あまりの衝撃発言に、伯爵の襟首掴んでガックンガックンしちゃった。

「ぐゎぐゎぐゎ…が、はあはあ…。す、少し違う世界が見えかけたぞ…」

ご、ごめんなさい…。

「…は、入りたければ入るがいい。ただし源泉掛け流しだから、少し熱いかもしれぐゎぐゎぐゎ!」

「ホントに!?ホントに源泉掛け流しぃ!?」

「だからサーチ、止めてやれよ…」


「すっごおおおい!自分の家にこんな広い風呂があるなんて!しかも源泉掛け流しよおおおっ!」

「あの、サーチ。嬉しいのはわかりますが…素っ裸で風呂の周りをグルグル回るのは止めませんか?」

「なあに言ってんのよ!!ヴィーも温泉でタオル巻くなんて、ヤボったいことは無し無し!」

バサッ

「きゃあ!…もう…しょうがないですね…」

「きゃほー!」

私が温泉一番乗りぃぃ!!

どっぼおおおん!

「ぅあっちいいいいい!!」


「…水を混ぜないと熱くて入れないって、早く言って欲しかったわ…」

エイミアに薬草を塗ってもらい、改めて温泉に浸かる。火傷も即効で治るからありがたい。

「でも源泉掛け流しって聞いた時点で、想像しておくべきだったのでは?」

「う…」

言い返せない…。
まさかエイミアから、つっこみをいれられるとは…。

「エイミア姉。サーチ姉は温泉があれば、溶岩にだって飛び込むと思われる」

死ぬわっ!!

「否定はできねぇだろ。前は私達がサーチを温泉に誘ってたクチだったのに、今じゃ率先して飛んでいくからな」

…うぅ…言い返せない…。

「ま、気持ちはわかるけどな…こんだけ気持ち良いんだから~…」

あ、リルが蕩けた。
背泳ぎをする要領で、温泉に浮かんで漂っている。
だけどどうしても胸の浮力・・・・が乏しいため、たまに沈む「ぶっ殺すぞてめぇ」…すすすいません。

「贅沢よ~…贅沢過ぎるわよ~…自宅に源泉掛け流しなんて…」

「何回も同じこと言わなくてもわかりましたから…でも本当に贅沢ですよね…」

ヴィーの頭の蛇も蕩けている。蛇って変温動物だから、あったまり過ぎるとよくないんじゃ…。

「あー…蛇も大人しくなって更に良い」

…そういうこともあるのね。なら逆にヴィーにはうってつけか。

「なあ、サーチ」

「はあ~~……ん?なーにー?」

「…蕩けすぎだよ……ちょっとリフター伯爵夫人について聞きたいんだけど」

「はにゃ~~…いいわよう~~…」

「………」

ばしゃあ!

「いひゃあああ!な、何すんのよ!!」

リルのヤツ、頭に水をぶっかけやがった! 

「いい加減に元に戻れ!お前がシャンとしないと話が進まないんだよ!」

はいはい、すいません。

「で?何だったっけ?」

「おま…水ぶっかけて正解だったぜ…」

「悪かったわよ…で、何?」

「リフター伯爵夫人のことだよ。大丈夫なのか、あれ?」

あれって…あんた伯爵夫人に対して失礼よ。

「大丈夫よ。確かにリファリスは大量虐殺者だけど、好きでやってるわけじゃないからね」

「おいおい、好きでやったわけじゃないって…好きでもなきゃ一つの国をぶっ潰す・・・・・・・・・ことはないだろ…」

あんたは冒険者のことをわかってないわね…。

「もしリファリスがあのまま逃げ出して行方を眩ませたなら…もう2度と冒険者としては復帰できないわ。『逃げただけの臆病者』というレッテルは一生ついてまわるわね」

「はあ!?まさか伯爵夫人が冒険者に復帰する可能性があるってのか!?」

「それは本人次第だけど…今リファリスが復帰するって言えば、どこのギルドも大歓迎でしょうね」

「た、大量虐殺者をか?」

「本人が好き好んで虐殺してるなら問題外だけど、リファリスの場合は復讐っていう理由があったでしょ?やられっ放しで済まさない分、逃げるよりはマシね」

「そ、そういうもんか?」

「リファリスの場合、復讐対象が国家という途方もない相手だった。しかも完遂した。戦闘目的の依頼ならリファリスは引く手あまたでしょうね」

「そうですね…確かに冒険者としての箔を付ける・・・・・という意味では最高の材料ですね」

「ま、リファリスも貴族のしての仕事もあるだろうから…そう気軽に復帰できないでしょうね」

そんな会話をしていると、何やら考え込んでいたエイミアが口を開いた。

「サーチ。今さらですけど…リファリスさんって強いんですよね?」

ホントに今さらね!

「そりゃあ…最年少でB級に昇格したくらいだから強いわよ」

「ですよね…」

「…それで、どうしたの」

「いえ、リファリスさんがそれだけの実力者なら…なぜ闘技大会に出なかったのかな~…と思いまして」

「確かに…国を潰せるくらいだから、“刃先”エッジといい勝負ができると思われ」

ああ、そういうことか。

「ダメダメ。リファリスじゃ“刃先”エッジの敵じゃないわね」

「は?」

「一対一なら私でも勝てるわよ」

「何故?意味不明」

「リファリスはね、対集団戦のプロなのよ。逆に一対一じゃ真価を発揮できないわね」

「「「「…はい?」」」」

「ん~…リファリスの戦い方については口では説明しにくいのよ…実際に目にしないと理解できないでしょうね…」

ちなみにリファリスは、「一対一に極端に弱い」っていう事が理由でA級になれなかったのだ。 

「そうでしょうな。彼女の戦い方は独特です。全く型にはまらない動きは、私達には到底真似できるものではありません」

「……………ちょっと」

「何か?」

「…何でスケルトン伯爵あんたが温泉に入ってるのよ」

「何故と言われても…自分の家の風呂だから、としか…」

「質問を変えるわ。何で私達と一緒に入ってるわけ?」

「混浴ですからふぎゃ!」

「そんな理由が通じるかああああ!」

「マジでぶっ殺していいよな?」
「…|≪蓄電池≫《バッテリーチャージ》をフルで開放していいですよね?」
「セクハラ許すまじ!石化していいですね?」
「…killっていい?」

「…許可」


…1時間後。

…スケルトン伯爵は湯船に浮かんでいる。ただのしかばねのようだ。
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