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第十四章 シリアスにDなんだぜ!

第十話 梯子を武器にして戦うって…どうなるんでしょうか…?…ですよね…

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「どーどーどー、よーしよし。どーどーどー、よしよし。」

「ふーっ、ふーっ…も、もう落ち着きましたから大丈夫ですよサーチ」

「…ホントに?」

私は近くにぶっ倒れているヴィーを指差した。頭にはでっかいたんこぶができている。

「同じようなこと言われて近づいたヴィーの頭に“正義の棍棒”ジャスティスパイク振り下ろしたのは…あんただからね?」

「え゛っ!?う、嘘…!ヴィ、ヴィーしっかりしてください!ヴィー『がぶがぶっ』いったああああああい!!」

心配してヴィーを揺らしていたエイミアの手に、ヴィーの頭の蛇が噛みついた。
気絶してる本体ヴィーを守ろうとしたのか、エイミアに純粋に仕返ししたかったのか、どっちかはわかんないけど。

「…蛇達~、ちょっとゴメンね~。本体ヴィーの治療のために、たんこぶに薬草塗るからね~」

「「シャシャシャア!」」

…蛇が退いたってことは…「よろしくお願いします」ってことか。
てことはエイミアは仕返しされたわけね。

「痛い痛いびええええっ!」

…また暴走バーサーカーモードに入られても困るから…治療とフォローはしときますか。
親友フォロワーは大変だ。


しばらくして回復したヴィーは、頭を擦りながらボヤいていた。

「うう…何故こういう時は蛇達は全員避けるんでしょうか?」

…あ、そうか。
蛇がクッションになってくれてたら、本体ヴィーのダメージも少なくて済んだはずよね。

「…君たちは本体ヴィーより自分が大事なのかね」

あ、蛇達が全員視線を逸らした。つまりそういうことらしい。

「ヴィー…また今度奢ってあげるわ…」

「…ありがとうございます…」

…お互いに苦労話で盛り上がりそうだ。
…何て話してるとリルとエイミアが戻ってきた。
「痛い痛い!」とうるさいエイミアをリルにくっつけて偵察に行ってもらってたんだけど…戻ってきた途端にヴィーに抱きついた。

「大丈夫ですか?本当にごめんなさい!」

「大丈夫ですよ。もう気にしてませんから…本体わたしは」

「へ…?『がぶがぶっがぶ』痛い痛い!いったああい!」

…また噛みつかれてるし。

「すみません、エイミア…蛇達にはよく言っておきます」

…止めないってことは、ヴィーも根に持ってるわけね…。
蛇にぐるぐる巻きにされて刑を執行されているエイミアを放置して、リルから偵察の報告を聞くことにした。

「マジでモンスターはいねえな。エイミアが全部破壊しちまったのは間違いない」

「…じゃあ…コアも?」

「………カケラくらいしか無かった」

おぅふ。これは痛い。
コアって結構良い値で売れるのだ。少しでも貯金を増やしておきたかったのに…。

「…カケラでも売れないわけじゃないから…見つけたら回収よろしく」

「わかった」
「はい」
「うぃー!」

「…完全な状態だったらカケラの10倍の値段はついたのに…」

…まあ蛇達にさんざんシメられてるみたいだから、許してやるか。

「それよりも!かなり厄介なモノがあるんだ!リジーならわかるかもしれねえ!」

…厄介なモノで…リジーがわかるモノ!?

「それって呪われアイテム以外ないじゃない!」

「呪われアイテム!!!どこドコ何処!?連れてって連れてって連れてけ」

「リジーはうるさいわよ!…でどうなの?」

「わからねえんだ。見た目は普通なんだが、暴れだすんだよ・・・・・・・…」

「「…暴れだすって…?」」

…私とリジーは同じように呟いて同じように首を傾げた。


「…一体何が呪われてるっての?」

リルに案内されて着いた場所。そこは地上に出るために設置された梯子の前だった。
歩いてきた距離と場所の雰囲気から見て…この梯子を昇った先に最終目的地の神殿があるのだろう。

「あとは梯子を昇るだけでしょ?何が呪われて…」

そう言いながら私が梯子を昇り出した時。

ガタッ!ガタタッ!

「きゃっ!な、何!?」

突然梯子が揺れ始めた。

ガタン!ガタッ!ガタタッ! 

「わっ!わっ!ひゃああ!」

ずでぇん!

…私は梯子に振り落とされて、激しくお尻をぶつけた。

「いったああ…な、何なのよこの梯子!!」

「だから…この梯子が呪われアイテムなんだよ…」

呪われた梯子なんて聞いたことないわよ!

「要は梯子が暴れるだけなのよね?なら楽勝よ」

私とヴィーとでガッチリと梯子を押さえる。

「今のうちよ!リル昇っちゃって!」

「お、おう!」

リルが駆け足で梯子に飛び乗った。
が。

ガタッ!ぶおーん!

「「「あひゃあ!」」」

ぶおーん!ぶおーん!

「「「うひいい!」」」

ぶおん!ぶおん!ぶんぶんぶんぶんぶーん!

「「「と、止めてええええっ!!」」」

…10分ほど振り回された後、解放され…。

「お、おえええ…」

酔ってえずくリル。

「目、目が…目が目が目が…」
「「「シャシャシャア…」」」

蛇ともども目を回し、床に大の字で横たわるヴィー。
無事なのは私とリジーだけか。

「…2人はしばらく戦力外ね…」

「サーチ姉は大丈夫?」

「ま、まあね…完全ではないけど…」

歩けなくはないけど、まっすぐ歩ける自信はない。

「リジー、あの梯子何とかならない?」

「ん~…やってみるけど…あれは梯子じゃない・・・・・・と思う」

…へ?
梯子じゃない??

「……誰がどうみても立派な梯子よ…?」

「いいから、私に任せてサーチ姉」

「わ、わかったわ…」

ていうか私も戦力になりそうにないしね。

「では…参る」

リジーは“首狩りマチェット”を構えると、梯子に向かって斬りかかっていった。

ザグン!

梯子がかかっていた壁に大鉈がぶっ刺さる!
…て梯子が避けた!?

ぶおん!
ギイン!

「くぅっ!」

横から攻撃してきた梯子を、リジーが受け止める。
…て梯子が攻撃!?

「たあっ!」

ブウン!
がぎいん!

…リジーが…梯子と戦ってる。
宙を浮いて襲いかかってくる梯子と、それに真剣な表情で挑むリジー。
………めっちゃシュールだ………。


結局小一時間ほど戦闘が続き、リジーの大鉈が折れたことで決着が着いた。
…梯子、WIN。


「はあっ!?梯子じゃなくて武器ぃ!?」

「そう。ここが尖ってて刺せるようになってるでしょ」

…確かに先端が尖ってるけど…梯子が武器ってどういうことよ!?

「…昔の絵巻に梯子をぶん回す火消しの絵があった覚えがあります」

「そう。鳶口と同じで昔の火消しが使っていた道具が武器に昇華した」

いやいや、鳶口はわかるけど…梯子が武器になるの?

「でも敵を捕える際に梯子で囲んでる図がありましたね」

…武器ではないよね!?

「…あまりにも武器と認識されず…結局ダンジョンの梯子として使われる始末……。その無念さが募って呪われアイテムになった」

…コメントが浮かばないくらいどうでもいい…。

「でも大丈夫。梯子が私を主と認めた。だから私が使う」

………まあいいけどさ。
一緒に戦うのはイヤだなあ…。


こうしてリジーは“首狩りマチェット”を失った代わりに“血塗られた梯子”スカーレットラダーを手に入れた。
…これがリジーの後の異名「梯子乗りのリジー」の由来である。
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