上 下
347 / 357
第十七章 原点回帰でキビCんです!

第十二話 『飲め飲め!』 「飲む飲む!」 という状態で、なぜか早々と目的のモノをゲッツ! なんですよね…

しおりを挟む
 何というご都合主義。
 思わぬカタチで炎の真竜ファイアマスターとご対面となった。

「お……お久しぶりです、炎の真竜ファイアマスター

『まあ待ちなさい。折角気持ちの良い時間を過ごしておるのじゃ。堅い挨拶は抜きにして、温泉を堪能しようではないか』

「……そうですね♪」

 そう言って私と炎の真竜ファイアマスターは、打たせ湯に身を委ねた。

「『はあああああ………」』


「……サーチは何処へ行ったのでしょうか……」

「あ、でも脱ぎ散らかしてあるビキニアーマーや下着を辿っていけば……」

「……流れ的に、パンツの落ちてる先がサーチ姉のいる場所……似た童話の記憶があり……」


『ほほぅ! お主も相当イケる・・・口のようじゃな』

「いやいやいや、炎の真竜ファイアマスター様には敵いませんよぅ……ほら、もう1杯もう1杯」

『ぐびぐびぐび……ぷはあ! 次はお主の番じゃ! まあお主は瓶から直接飲んでも大丈夫じゃろ』

「あー、そんなこと言っちゃいますか? なら飲んじゃいますよ? 私はお金払いませんよー」

『おお、良い意気じゃ! 金なんぞ儂が全部払っちゃるわい! この宿の備蓄が無くなるまで飲み干してしまえ!』

「なーらイッちゃいまーす……」

 ごっごっごっ!

「ぶはあああ! 美味しい……!」

『大した娘じゃ! それよりお主、以前来た時よりも胸が大きくなったのう!』

「あぁーー! わかってくれる? わかってくれますーー?」

『おぅ、わかるわい! 一気飲みしておる際の、揺れる胸! 真に見事じゃったわい!』

「うん! 普段なら変態認定して、半殺しにするとこだったけど……あんたは許す!」

『何か態度がデカくなったが、気にせんわい! もっと飲もうぞ!』

「おー!」


「……あ、サーチのパンツ見つけました。この柄は間違いありません」

「…………何故ヴィーは、サーチのパンツの柄を把握してるの…………?」

「うぐっ!? すっごく酒臭い……間違いなく、サーチ姉はここ」


「あーーっはっはっはっは!!」
『ワーーッハッハッハッハ!!』

『おお、なかな柔らかい……! 良い張りをしとるのう!』

「何を触ってるのかなあ……? 秘剣“竹蜻蛉”!」

『ぐっはあ! ワハハハハ! 良い一撃じゃ! ますます腕を上げたようじゃのう!』

「ていうか……未完成ながら秘剣“竹蜻蛉”食らっておいて、『ぐっはあ!』 だけで立ち上がるあんたも、十二分にスゴいわよ……」

『ワハハハハハハ! 当たり前じゃ、儂は炎の真竜ファイアマスターじゃぞ! これぐらい大した事ないわい!』

「……普通の攻撃ですぐに死にかける、氷の真竜マスタードラゴンもいますけど……」

『あれは魔術に特化しておるからのう……打撃にはからっきしじゃ』

「……もしかして……あんたは打撃に特化?」

『そうじゃ! 儂は|≪灯り≫《ライト》の魔術でも死ねるぞい!』

 ある意味スゴいな!

『そうじゃろう、そうじゃろう! まあ飲め飲め! ワッハッハッハッハ!!』

「……どういう理屈で『飲め飲め!』 になるのか、よくわかんないけど……いただきます」 

 そう言って炎の真竜ファイアマスターに注いでもらっていると。

「あ、サーチ姉いた」

「もう、探しましたよサーチ!」

「あ、やっぱり飲んでる! すっごい酒の匂い!」

「酒池肉林?」

「リジー、その4文字熟語は現状とは違うからね?」

 リジーの言葉を聞いたとたんに、炎の真竜ファイアマスターが大笑いを始めた。

『ワーーッハッハッハッハ!! 酒池肉林とは愉快なり! よければお主らも温泉に入らぬか?』

 ヴィー達は戸惑ったような仕草を見せる。どうしたんだろ?

「あの……サーチ、この方の性別は?」

 あ、そういうことか。
 炎の真竜ファイアマスターは見た目では、オスかメスかわかんないからね……。
 ちなみに炎の真竜ファイアマスターの外見は、小型のドラゴンだ。

『儂か? 儂は炎の化身故に雌雄同体じゃ! ワーーッハッハッハッハ!!』

 よく笑うドラゴンだこと。

「……雌雄同体だったら……良いんじゃないですか?」

「そうですね。私は入ります」

「………………悩む」

 露出を嫌うリジー以外は、さっさと装備品を外し始める。

「え? ヴィー姉もエイミア姉も入っちゃうの?」

「リジーも入るなら、さっさと脱ぎなさい。1人だけ見学なんて嫌でしょう」

「リジー、先に入りますね~~♪」

 オタオタするリジーを尻目に、2人は湯船に入ってきた。

「うわ~~、温かいです~!」

「温かさがじんわりと浸透してきます。軟らかいお湯ですね」

 あ、リジーが羨ましそうにしてる。なら。

「リジー」

「何、サーチ姉? ってわわ!?」

 ざっぱあああん!

 リジーをムリヤリ温泉内に引き摺りこむ。

「がぼぼぼぼぼっ!? ぶはあ……サ、サ、サーチ姉!!」

「あはは、これで脱ぐしかないわね」

「う~~……もう!」

 リジーが剥れながらも、装備していた鎧を無限の小箱アイテムボックスへ片付ける。

「サーチ姉には今度、呪われアイテムの掃除、手伝ってもらう!」

「わかったわよ。今度付き合ってあげるから」

「「付き合う!?」」

 ヴィーとエイミアが激しく反応する。

「……ていうか、何であんたらは『付き合う』っていう言葉に、いちいち反応するわけ!?」

「「……だって……」」

『ワッハッハッハッハ!! 良い娘達ではないか! 両手に花、というのも良いモノじゃぞ?』

 ……ヴィーとエイミアが、スゴ~~~~く複雑な顔をしてるから止めれ。

「私はそういうつもりは一切ありません!」

「「えぇっ!?」」

「だから……いちいち反応するなっつーの! 今は、てことよ! 七冠の魔狼ディアボロスの件が解決しないと、色恋どころじゃないでしょうが!」

「あ、そういう事ですか……」
「私はてっきり……」

『おお、そうじゃった。今は七冠の魔狼ディアボロスの件が、最優先課題じゃったな』

 そう言うと炎の真竜ファイアマスターは、無限の小箱アイテムボックスから靴を取り出した。

『ほれ。これをやるわい』

「……それは?」

『儂の対極に位置するモノ。「怠惰」の対となる「七つの美徳」の化身、勤勉の靴じゃ』

「勤勉の……靴ぅ?」

 どういう靴なのよ。

『先日、儂の寝床の近くから出てきたのじゃ。お主達が探しておるのは、これじゃないかの?』

 私はリジーに視線を向けた。リジーは嫌そうな顔をして頷く。間違いないらしい。

「あ、ありがとうございます!」

『なあに。儂もこの世界は好いておる。故に滅びるのを見過ごす事はできぬ』

 ようし! 今回は手早く手に入ったから……。

「みんな! 今夜は飲み明かすわよーー!」

『ほっほ。儂の奢りじゃ! 遠慮せずに飲み干すが良いぞ!』

「「「「イェーーイ!!」」」」


「……流石に可哀想だから……もういいわよ、リル」

 ゴシゴシゴシゴシ……

「うぅ~、呪ってやるぅ~……」
しおりを挟む

処理中です...