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第十七章 原点回帰でキビCんです!
第二十話 リルの深刻な悩み発覚!? 私達で何とかしてあげなくちゃ……ですよね…
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……夜。
私が1人で夕ご飯の準備をしていると。
「……お待たせしました」
全身から湯気を立ち上らせたヴィーが戻ってきた。
「……なんかごめんね。私がいらないことを言ったばっかりに……」
「い、いえ! いえいえいえ! そんな事はありません! 私も食べてみたかったのです! そうなんですよ!」
……明らかにムリをしてるけど、そこはつっこまずにおく。
「そうなの? なら腕によりをかけて作らないとね」
「サ、サーチが私の為に……! うふ、うふふ……」
「エイミア、ちょっと手伝ってー」
「は、は~い」
……妙にちょこちょこと歩いてるけど……まだ返してもらってないのか。
「……少しは慣れないの?」
「な、慣れません! 何も付けてないから、歩く度に揺れて揺れて……先が擦れるのも考えモノです」
……ヴィーに話をつけてやろうかと思ったけど……止めた。
「ていうか……目立つわよ~……絆創膏でも貼っといたら?」
そう言って私は、服の上からでもわかるポッチを指で弾いた。
「ひゃみゅん!」
あ、エイミアの腰が砕けた。
「な、な、何をするんですかあ!」
「手伝ってって言ってるのに手伝わない、あんたが悪いんでしょ」
「…………忘れてました」
……だと思った。
「まあいいわ……それより、こいつの足持ってて」
「こ、こいつって……」
クォクェェェェェェ!!
バタバタバタバタ!
「な、何ですか、これ……」
「ん? 雷鳥よ」
前世に実際にいた雷鳥とよく似た鳥で、やはり高山にしか棲息しない貴重な鳥だ。ただ、前世の雷鳥とは決定的に違う点が2つ。
1つ。鳴き声がまるっきりニワトリと同じ。
そして2つ目が……。
バチィ! バリバリ!
「け、結構強い電撃ですね」
……名前の通り、電撃が放てること。まあ|≪充力≫《パワーチャージ》で電気を力に変換できるエイミアには無力だけど。
コケコケコケェェェェェ!
「すっごい暴れ方ですけど……どうするんですか?」
スパッ
バタバタバタバタ……ぱたっ
「どうするんですかって……食べるに決まってるじゃない。美味しいのよ~……ヴィーが苦労して獲ってきてくれたんだから」
「…………」
「あれ? エイミア?」
「………………はう」
雷鳥の死に様を見て……エイミアは卒倒した。
「ほ、本当に美味しいですね!」
「でしょ~? ダウロの郷土料理のコカちゃんも美味しいんだけど、雷鳥もなかなかでしょ」
「は、はい。にんにくとよく合います」
「……エイミア、あんたも食べなさいよ~」
少し離れた場所でリンゴを食べていたエイミアは、顔を真っ青にして。
「む、無理です! 無理です! 無理無理無理!」
……どこかへ逃げていった。
「……やっぱり元貴族のエイミアには、雷鳥を捌くとこを見せたのはマズかったか……」
「少々刺激が強かったかもしれませんよ」
そう言ってヴィーは軟骨の歯応えをコリコリと楽しんでいた。
「あ、聖杭の効果が切れてます」
夕ご飯の匂いに釣られたらしく、やたらとマウンテンビーストが集まってくるとは思ってたけど……聖杭の効果が切れてたとは。
「堕つる滝に行く前にチェックしといたはずなんだけど……」
無限の小箱からお手製のアイテムチェック表を取り出して確認する。
「……やっぱり……私がチェックしたときに『要交換』の欄にチェックいれといたわよ。誰よ、買い足してくれなかったの」
「……今回の買い出し組は……エイミアとリルでしたよね……」
「エイミア! ちょっとだけいい?」
「……あ、はい! 大丈夫です。今は念話してないですから」
「あんたさあ、リルと一緒に買い出し行ったじゃない」
「はい、私とリルが当番でした。2手に分かれて買い物しましたよ」
「……エイミアは何を担当したの?」
「私は食糧です。その他は全部リルが」
リルかよ!
「……あの?」
「あ、聖杭を買い足してなかったからさ……誰が忘れたか確認したかっただけよ」
「え? 聖杭ですか? でしたら私が預かってますよ」
「「エイミアが!?」」
「はい。リルがリジーを連れていったときに、私に預けていきました」
何だ、あったのか。なら一安心……。
「……はい、これです」
エイミアは自分の無限の小箱から、紙袋を取り出した。
「へ? これが? ……聖杭にしては小さいような……」
袋を開けて中身を取り出す………ふぁっつ?
「何よこれ……本じゃない」
「え? ……あ、本当ですね」
こちらの世界では、本はかなり普及している。|≪転写≫《コピー》魔術があるおかげだろう。
「でも表紙には何も書いてないわね……何の本かしら?」
聖杭のことはすっかり忘れて、本に没頭する。なになに……。
『序章……全ての悩める女性達へ』
「……意味深な序章ね……。リル、何か悩みでもあるのかしら……」
「普段の様子じゃ、悩んでるようには見えませんでしたよね……」
「サーチ、読み進めましょう。内容によって、リルの悩みがわかるかもしれません」
……そうね。どんどん読みましょう。
『第1章……まずは自分と向き合う事』
……あるがままの自分を受け入れること。現実から目を背けない……か。
「……武術に関する本かな……。精神論が書かれてる」
「そうですね。リルは弓術士だけど、メインは素手での格闘ですもんね」
「しかし……リルがそこまで悩んでいるとは思えませんが……」
そうよね。徒手空拳なら私でも敵わないくらいだし……。
『第3章……理想的なマッサージの方法』
「マ、マッサージ? 精神論からいきなり飛んだわね……」
「まさか……リル、深刻な怪我をしてるとか……?」
……ケガか! 確かに。それならあり得るかも。
「そんな……私に相談してくれれば、ちゃんと|≪回復≫《リカバリー》したのに……」
「……ヴィー、|≪回復≫《リカバリー》って古傷にも有効なの?」
「勿論です。傷でしたら、治せないモノはありません」
「なら、今度相談にのってあげて」
「わかりました」
……バカリル。せめて私には打ち明けなさいよ……。そう考えながら本を閉じようとしたとき。
『巨乳』
という文字が飛び込んできた。
「巨乳!? まさか……」
さらに読み進めてみると……。
『第4章……年齢なんて関係ない! 今からでも大きくなれる食事法』
『第5章……今すぐ巨乳になれる! 大きく見えるファッション大全』
「「「…………」」」
……巨乳のハウツー本かよ!
「……見なかったことにしよ」
「……そうですね」
「……さあ、寝ましょ。寝ましょ」
「……へっくし!」
「……? どうしたの、リル姉?」
「……なんだろ……イヤな予感がする……」
私が1人で夕ご飯の準備をしていると。
「……お待たせしました」
全身から湯気を立ち上らせたヴィーが戻ってきた。
「……なんかごめんね。私がいらないことを言ったばっかりに……」
「い、いえ! いえいえいえ! そんな事はありません! 私も食べてみたかったのです! そうなんですよ!」
……明らかにムリをしてるけど、そこはつっこまずにおく。
「そうなの? なら腕によりをかけて作らないとね」
「サ、サーチが私の為に……! うふ、うふふ……」
「エイミア、ちょっと手伝ってー」
「は、は~い」
……妙にちょこちょこと歩いてるけど……まだ返してもらってないのか。
「……少しは慣れないの?」
「な、慣れません! 何も付けてないから、歩く度に揺れて揺れて……先が擦れるのも考えモノです」
……ヴィーに話をつけてやろうかと思ったけど……止めた。
「ていうか……目立つわよ~……絆創膏でも貼っといたら?」
そう言って私は、服の上からでもわかるポッチを指で弾いた。
「ひゃみゅん!」
あ、エイミアの腰が砕けた。
「な、な、何をするんですかあ!」
「手伝ってって言ってるのに手伝わない、あんたが悪いんでしょ」
「…………忘れてました」
……だと思った。
「まあいいわ……それより、こいつの足持ってて」
「こ、こいつって……」
クォクェェェェェェ!!
バタバタバタバタ!
「な、何ですか、これ……」
「ん? 雷鳥よ」
前世に実際にいた雷鳥とよく似た鳥で、やはり高山にしか棲息しない貴重な鳥だ。ただ、前世の雷鳥とは決定的に違う点が2つ。
1つ。鳴き声がまるっきりニワトリと同じ。
そして2つ目が……。
バチィ! バリバリ!
「け、結構強い電撃ですね」
……名前の通り、電撃が放てること。まあ|≪充力≫《パワーチャージ》で電気を力に変換できるエイミアには無力だけど。
コケコケコケェェェェェ!
「すっごい暴れ方ですけど……どうするんですか?」
スパッ
バタバタバタバタ……ぱたっ
「どうするんですかって……食べるに決まってるじゃない。美味しいのよ~……ヴィーが苦労して獲ってきてくれたんだから」
「…………」
「あれ? エイミア?」
「………………はう」
雷鳥の死に様を見て……エイミアは卒倒した。
「ほ、本当に美味しいですね!」
「でしょ~? ダウロの郷土料理のコカちゃんも美味しいんだけど、雷鳥もなかなかでしょ」
「は、はい。にんにくとよく合います」
「……エイミア、あんたも食べなさいよ~」
少し離れた場所でリンゴを食べていたエイミアは、顔を真っ青にして。
「む、無理です! 無理です! 無理無理無理!」
……どこかへ逃げていった。
「……やっぱり元貴族のエイミアには、雷鳥を捌くとこを見せたのはマズかったか……」
「少々刺激が強かったかもしれませんよ」
そう言ってヴィーは軟骨の歯応えをコリコリと楽しんでいた。
「あ、聖杭の効果が切れてます」
夕ご飯の匂いに釣られたらしく、やたらとマウンテンビーストが集まってくるとは思ってたけど……聖杭の効果が切れてたとは。
「堕つる滝に行く前にチェックしといたはずなんだけど……」
無限の小箱からお手製のアイテムチェック表を取り出して確認する。
「……やっぱり……私がチェックしたときに『要交換』の欄にチェックいれといたわよ。誰よ、買い足してくれなかったの」
「……今回の買い出し組は……エイミアとリルでしたよね……」
「エイミア! ちょっとだけいい?」
「……あ、はい! 大丈夫です。今は念話してないですから」
「あんたさあ、リルと一緒に買い出し行ったじゃない」
「はい、私とリルが当番でした。2手に分かれて買い物しましたよ」
「……エイミアは何を担当したの?」
「私は食糧です。その他は全部リルが」
リルかよ!
「……あの?」
「あ、聖杭を買い足してなかったからさ……誰が忘れたか確認したかっただけよ」
「え? 聖杭ですか? でしたら私が預かってますよ」
「「エイミアが!?」」
「はい。リルがリジーを連れていったときに、私に預けていきました」
何だ、あったのか。なら一安心……。
「……はい、これです」
エイミアは自分の無限の小箱から、紙袋を取り出した。
「へ? これが? ……聖杭にしては小さいような……」
袋を開けて中身を取り出す………ふぁっつ?
「何よこれ……本じゃない」
「え? ……あ、本当ですね」
こちらの世界では、本はかなり普及している。|≪転写≫《コピー》魔術があるおかげだろう。
「でも表紙には何も書いてないわね……何の本かしら?」
聖杭のことはすっかり忘れて、本に没頭する。なになに……。
『序章……全ての悩める女性達へ』
「……意味深な序章ね……。リル、何か悩みでもあるのかしら……」
「普段の様子じゃ、悩んでるようには見えませんでしたよね……」
「サーチ、読み進めましょう。内容によって、リルの悩みがわかるかもしれません」
……そうね。どんどん読みましょう。
『第1章……まずは自分と向き合う事』
……あるがままの自分を受け入れること。現実から目を背けない……か。
「……武術に関する本かな……。精神論が書かれてる」
「そうですね。リルは弓術士だけど、メインは素手での格闘ですもんね」
「しかし……リルがそこまで悩んでいるとは思えませんが……」
そうよね。徒手空拳なら私でも敵わないくらいだし……。
『第3章……理想的なマッサージの方法』
「マ、マッサージ? 精神論からいきなり飛んだわね……」
「まさか……リル、深刻な怪我をしてるとか……?」
……ケガか! 確かに。それならあり得るかも。
「そんな……私に相談してくれれば、ちゃんと|≪回復≫《リカバリー》したのに……」
「……ヴィー、|≪回復≫《リカバリー》って古傷にも有効なの?」
「勿論です。傷でしたら、治せないモノはありません」
「なら、今度相談にのってあげて」
「わかりました」
……バカリル。せめて私には打ち明けなさいよ……。そう考えながら本を閉じようとしたとき。
『巨乳』
という文字が飛び込んできた。
「巨乳!? まさか……」
さらに読み進めてみると……。
『第4章……年齢なんて関係ない! 今からでも大きくなれる食事法』
『第5章……今すぐ巨乳になれる! 大きく見えるファッション大全』
「「「…………」」」
……巨乳のハウツー本かよ!
「……見なかったことにしよ」
「……そうですね」
「……さあ、寝ましょ。寝ましょ」
「……へっくし!」
「……? どうしたの、リル姉?」
「……なんだろ……イヤな予感がする……」
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