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これが最後の手紙です
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【ベルトン王国歴824年3月】
アデーレ、何度も手紙を出しているのに、どうして返事をくれないんだい?
もしかして、以前二度と手紙を送るなと伝えたことを気にしているのか?君のそういう律儀なところは長所だと思うけれど、もう少し頭を柔らかくしてもいいんじゃないかな。
月末にはそっちへ戻る。待っていてくれ。
【ベルトン王国歴824年4月】
愛するアデーレへ
君へ会いに行ったのに、マリウスおじさんに追い帰されたよ。なんだか酷く怒っていて「お前みたいに不義理な男を、我が家へ入れることはできん!」と怒鳴られた。
何か誤解があるようだ。君からおじさんへ説明して欲しい。いずれは家族になるのだから、仲違いしたままじゃ君も困るだろう。
ロザリンデのことは気にしなくていい。あいつとは離婚するつもりだ。
あの女の言うことは全部嘘だった。「愛しているのはケヴィンだけ」と言っていたくせに、部隊のいろんな男と寝ていたんだ。
天涯孤独というのも嘘だった。既婚者と不貞をして、親から絶縁されたらしい。その上、行く先々で似たようなトラブルを起こして辺境へ流れてきたそうだ。師匠だと言っていた先輩治癒士も、前の男だった。
お腹の子だって、俺の子だか分かったもんじゃない。
ずっと騙されていた。同僚たちも、それを知っていたくせに黙っていたんだぜ。酷いだろう?
酔っぱらったホラーツがニヤニヤしながら俺に話したんだよ。
俺が「何で教えてくれなかったんだ!」と怒ったら、「みんな知ってるぜ。故郷で待ってる可愛い婚約者を捨てて、あんな女を嫁にするなんて奇特な奴だと思ってたんだ。まさか本当に知らなかったとはな」と笑い物にしやがった。
仲間だと思っていたのに……。その後、すぐに除隊手続きをした。あんな奴らと一緒に戦えるか!
なのに実家へ帰ったら、両親は怒って俺を追い出したんだ。息子が久しぶりに戻ってきたってのに、薄情な親だと思わないか?
やはり俺には君しかいない。
結婚したら、君の家の店を手伝うよ。俺という後継ぎが出来るんだ。おじさんやおばさんも喜ぶんじゃないかな。
そうそう、マリウスおじさんが「アデーレにはもう新しい婚約者がいるんだ。付き纏うのはやめてくれ」と言っていたけれど、嘘だよな?君が俺以外の男を愛するわけはない。
もしかして、無理矢理嫁がされようとしてるのか?
俺たちを引き裂くなんて許せない。今すぐ助けに行くから、荷物を纏めておいてくれ。
そのまま二人で新婚旅行ってのもいいな!
君のケヴィンより
【ベルトン王国歴824年4月】
ケヴィンさんへ
この手紙が届く頃には、私はこの街にいないでしょう。
貴方からの手紙を読んだ父と婚約者のフォルカーがひどく心配して、一足早く彼の実家のある街へ移ることになりました。
だから、これが最後の手紙です。
フォルカーと結婚するのは本当。貴方から婚約を破棄されて落ち込んでいた私を、彼はずっと励ましてくれたわ。ようやく立ち直った頃に「前から君の事が好きだったけれど、婚約者がいると聞いて諦めていたんだ。どうか俺を選んで欲しい」と求婚されたの!
まっすぐで優しくて、私を尊重してくれる良い人よ。私を貶めるようなことは絶対に言わないしね。貴方と違って。
父は回復したけれど本調子じゃないし、店は縮小すると言っているわ。いずれは店を畳むつもりみたい。今まで忙しかった分、両親にはゆっくりして欲しいわね。
貴方はご両親から受け入れて貰えなかったらしいけど、自分から縁を切ったのだから当然じゃない?
絶縁の手紙が届いた時のご両親の嘆きようを、貴方は知らないのでしょう。
「うちのバカ息子が済まない」と泣きながら謝る彼らに、私の心まで締め付けられるようだった。
ようやく息子の事を諦めて生きていこうとした所に、シレッとした顔で戻ってくるんだもの。そりゃ怒るわよ。せめて、土下座して謝るくらいすればいいのに。
それと、ロザリンデさんのことも。貴方は離婚すると言い張っているけれど、私との婚約を破棄してまで添い遂げようと思った女性なんでしょう?しかも身重ですって!そんな相手を簡単に捨てることができるのね。心底呆れたわ。
生涯を共にする覚悟を持って迎え入れたのだから、彼女の過去がどうであろうが、お腹の子の父親が誰であろうが、受け入れるべきじゃない?
というより、貴方の選択できる未来はそれしかないと思うわ。
貴方が一方的に婚約を破棄したことはこの街で知れ渡っているから、そんな男と結婚したがる娘さんはいないでしょう。
ご両親も、貴方を絶対に受け入れないと仰っていたしね。大人しく辺境へ帰った方がいいわよ。
ああ、でも兵役にも戻れないんだったわね。
乱闘騒ぎを起こして除隊されたんですって?ディルクから聞いたわ。
そちらで新しい職が見つかるといいわね。
私はフォルカーと幸せになるわ。貴方も、自分の幸せを追求してね。ロザリンデさんと共に。
アデーレ、何度も手紙を出しているのに、どうして返事をくれないんだい?
もしかして、以前二度と手紙を送るなと伝えたことを気にしているのか?君のそういう律儀なところは長所だと思うけれど、もう少し頭を柔らかくしてもいいんじゃないかな。
月末にはそっちへ戻る。待っていてくれ。
【ベルトン王国歴824年4月】
愛するアデーレへ
君へ会いに行ったのに、マリウスおじさんに追い帰されたよ。なんだか酷く怒っていて「お前みたいに不義理な男を、我が家へ入れることはできん!」と怒鳴られた。
何か誤解があるようだ。君からおじさんへ説明して欲しい。いずれは家族になるのだから、仲違いしたままじゃ君も困るだろう。
ロザリンデのことは気にしなくていい。あいつとは離婚するつもりだ。
あの女の言うことは全部嘘だった。「愛しているのはケヴィンだけ」と言っていたくせに、部隊のいろんな男と寝ていたんだ。
天涯孤独というのも嘘だった。既婚者と不貞をして、親から絶縁されたらしい。その上、行く先々で似たようなトラブルを起こして辺境へ流れてきたそうだ。師匠だと言っていた先輩治癒士も、前の男だった。
お腹の子だって、俺の子だか分かったもんじゃない。
ずっと騙されていた。同僚たちも、それを知っていたくせに黙っていたんだぜ。酷いだろう?
酔っぱらったホラーツがニヤニヤしながら俺に話したんだよ。
俺が「何で教えてくれなかったんだ!」と怒ったら、「みんな知ってるぜ。故郷で待ってる可愛い婚約者を捨てて、あんな女を嫁にするなんて奇特な奴だと思ってたんだ。まさか本当に知らなかったとはな」と笑い物にしやがった。
仲間だと思っていたのに……。その後、すぐに除隊手続きをした。あんな奴らと一緒に戦えるか!
なのに実家へ帰ったら、両親は怒って俺を追い出したんだ。息子が久しぶりに戻ってきたってのに、薄情な親だと思わないか?
やはり俺には君しかいない。
結婚したら、君の家の店を手伝うよ。俺という後継ぎが出来るんだ。おじさんやおばさんも喜ぶんじゃないかな。
そうそう、マリウスおじさんが「アデーレにはもう新しい婚約者がいるんだ。付き纏うのはやめてくれ」と言っていたけれど、嘘だよな?君が俺以外の男を愛するわけはない。
もしかして、無理矢理嫁がされようとしてるのか?
俺たちを引き裂くなんて許せない。今すぐ助けに行くから、荷物を纏めておいてくれ。
そのまま二人で新婚旅行ってのもいいな!
君のケヴィンより
【ベルトン王国歴824年4月】
ケヴィンさんへ
この手紙が届く頃には、私はこの街にいないでしょう。
貴方からの手紙を読んだ父と婚約者のフォルカーがひどく心配して、一足早く彼の実家のある街へ移ることになりました。
だから、これが最後の手紙です。
フォルカーと結婚するのは本当。貴方から婚約を破棄されて落ち込んでいた私を、彼はずっと励ましてくれたわ。ようやく立ち直った頃に「前から君の事が好きだったけれど、婚約者がいると聞いて諦めていたんだ。どうか俺を選んで欲しい」と求婚されたの!
まっすぐで優しくて、私を尊重してくれる良い人よ。私を貶めるようなことは絶対に言わないしね。貴方と違って。
父は回復したけれど本調子じゃないし、店は縮小すると言っているわ。いずれは店を畳むつもりみたい。今まで忙しかった分、両親にはゆっくりして欲しいわね。
貴方はご両親から受け入れて貰えなかったらしいけど、自分から縁を切ったのだから当然じゃない?
絶縁の手紙が届いた時のご両親の嘆きようを、貴方は知らないのでしょう。
「うちのバカ息子が済まない」と泣きながら謝る彼らに、私の心まで締め付けられるようだった。
ようやく息子の事を諦めて生きていこうとした所に、シレッとした顔で戻ってくるんだもの。そりゃ怒るわよ。せめて、土下座して謝るくらいすればいいのに。
それと、ロザリンデさんのことも。貴方は離婚すると言い張っているけれど、私との婚約を破棄してまで添い遂げようと思った女性なんでしょう?しかも身重ですって!そんな相手を簡単に捨てることができるのね。心底呆れたわ。
生涯を共にする覚悟を持って迎え入れたのだから、彼女の過去がどうであろうが、お腹の子の父親が誰であろうが、受け入れるべきじゃない?
というより、貴方の選択できる未来はそれしかないと思うわ。
貴方が一方的に婚約を破棄したことはこの街で知れ渡っているから、そんな男と結婚したがる娘さんはいないでしょう。
ご両親も、貴方を絶対に受け入れないと仰っていたしね。大人しく辺境へ帰った方がいいわよ。
ああ、でも兵役にも戻れないんだったわね。
乱闘騒ぎを起こして除隊されたんですって?ディルクから聞いたわ。
そちらで新しい職が見つかるといいわね。
私はフォルカーと幸せになるわ。貴方も、自分の幸せを追求してね。ロザリンデさんと共に。
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