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「アリシア・ハーネット!お前との婚約を解消する」
王立学園で開かれたダンスパーティに参加している令息や令嬢たちは、響きわたる声になんだなんだと注目した。
そこにいたのはアリシア・ハーネット伯爵令嬢と、その婚約者、クライヴ・アシュリー侯爵令息。
そしてもう一人。クライヴにしなだれかかるように寄り添っているフレデリカ・ダルトン男爵令嬢だ。豊満な肢体に鮮やかなブロンドの髪。ぱっちりとした目は長い睫に覆われており、目を引く美貌の持ち主である。
周囲の令嬢やまともな令息は寄り添う二人に眉をひそめている。礼節を守るべき貴族でありながら人目もはばからぬ所業に、冷たい目線が向けられるのは当然だろう。だがそれに気付くどころか、クライヴはフレデリカを抱き寄せてより一層身体を密着させた。
「お前のように、自分の意見ひとつも言えないような女に侯爵夫人は務まらない。フレデリカはしっかりと自分を持った女性だ。彼女こそ俺の妻にふさわしい」
観衆たちの目はアリシアへと注がれた。彼女がどう反応するのか、固唾を呑んで見守っている。
同情の目で見る者もいるが、大半は興味本位な様子だ。噂話の大好きな貴族たちは、しばらくこの話で持ち切りになるだろう。
「誰かと思えば、”人形姫”ハーネット伯爵令嬢ではございませんこと?」
「え、人形姫?あんなに麗しい令嬢だったか?」
「ああ、ほとんど喋らず口を開けば『はい、承知致しました』しか言わない令嬢か。もっと地味な容姿だったと記憶しているが」
ざわつく貴族たちの声をよそに、アリシアが一歩進み出る。しかしその口から発せられた言葉は、観衆の期待を裏切るものだった。
「その婚約破棄、お受けすることはできません」
王立学園で開かれたダンスパーティに参加している令息や令嬢たちは、響きわたる声になんだなんだと注目した。
そこにいたのはアリシア・ハーネット伯爵令嬢と、その婚約者、クライヴ・アシュリー侯爵令息。
そしてもう一人。クライヴにしなだれかかるように寄り添っているフレデリカ・ダルトン男爵令嬢だ。豊満な肢体に鮮やかなブロンドの髪。ぱっちりとした目は長い睫に覆われており、目を引く美貌の持ち主である。
周囲の令嬢やまともな令息は寄り添う二人に眉をひそめている。礼節を守るべき貴族でありながら人目もはばからぬ所業に、冷たい目線が向けられるのは当然だろう。だがそれに気付くどころか、クライヴはフレデリカを抱き寄せてより一層身体を密着させた。
「お前のように、自分の意見ひとつも言えないような女に侯爵夫人は務まらない。フレデリカはしっかりと自分を持った女性だ。彼女こそ俺の妻にふさわしい」
観衆たちの目はアリシアへと注がれた。彼女がどう反応するのか、固唾を呑んで見守っている。
同情の目で見る者もいるが、大半は興味本位な様子だ。噂話の大好きな貴族たちは、しばらくこの話で持ち切りになるだろう。
「誰かと思えば、”人形姫”ハーネット伯爵令嬢ではございませんこと?」
「え、人形姫?あんなに麗しい令嬢だったか?」
「ああ、ほとんど喋らず口を開けば『はい、承知致しました』しか言わない令嬢か。もっと地味な容姿だったと記憶しているが」
ざわつく貴族たちの声をよそに、アリシアが一歩進み出る。しかしその口から発せられた言葉は、観衆の期待を裏切るものだった。
「その婚約破棄、お受けすることはできません」
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