すれ違う恋の行方〈大学編〉

秋 夕紀

文字の大きさ
38 / 41
最終章 立松千宙(21歳)=梅枝七海(21歳)

§1出身中学での再会

しおりを挟む
 立松千宙は大学4年生になって、自分の進路を決めかねていた。教職に就く事も考えて教職科目を受講しているが、IT関連の仕事にも関心を持っていた。6月には教育実習を控えていて、それが終わってから改めて考えようと思っていた。
 一方、梅枝七海は大卒後の進路を教員志望に絞り、教育実習の準備をしていた。両親は仙台に今は住んでいて、出身高校は静岡、中学校は東京と静岡で、どこで実習をするか悩んだ末、2年間在籍した東京の中学校に依頼した。ただ都心の寮から通うには遠く、ウィークリーマンションを借りる手配もしていた。
 実習当日の朝、打ち合わせで二人は久し振りに顔を合わせた。他に4名が来ていたが二人の目には入らず、紹介されてからの挨拶も上の空だった。控室に案内され、
「七海、久し振り!やっぱり実習をここで受けるんだね。」
「千宙、よろしく!今は無理だけど、後で話しがしたい。」と会話を交わした。
 ほぼ3年ぶりに会う七海は、すっかり大人の女性になっていて、成長していない俺は恥ずかしかった。「やっぱり」なんて言ってしまい、俺が期待していたと思われたかもしれない。確かに、もしかしてという思いをめぐらしていた。

 授業の参観、昼休みの給食、放課後の部活動と忙しく、控室に戻ってからも他の実習生と一緒に授業研究にいそしんだ。実習生の内の4人が同級生で、その一人の田村に、「立松と梅枝は、中学の時に付き合ってたよな!まだ続いてるの?」と冷やかされた。二人は同時に否定したが、心の中ではお互いを思っていた。他の実習生たちが帰るのを見計らって、千宙から声を掛けた。
「やっと二人だけになったね!中学校、懐かしいな。」
「うん、あの頃のいろいろな事を思い出すわ!わたしたち、仲良かったわよね!」と校庭を眺めながら、彼女は感慨深げだった。そこへ、養護教諭の片平かたひら先生が来て、
「あんたたち、元気そうだね!二人で思い出話してるの?それとも、まだお付き合いが続いているの?」と質問攻めに遭った。適当に口裏を合わせてその場をしのぎ、先生も入って懐かしい話で盛り上がった。帰る頃にはすっかり暗くなっていて、当時もこんな風だったと思いながら、帰り道を一緒に歩いた。
「七海はどこに帰るの?まさか寮まで帰るの?」
「さすがにそれはないわよ!近くに賃貸マンションを借りてるの!」
「そうなんだ!どうせなら、家に泊めて上げれば良かったな。」とつぶやくと、彼女は返事をせずに微笑んでいた。

 二人は歩きながら、中学時代の思い出話に夢中だった。しかし、気まずい別れについては一切触れず、その時の事は暗黙の内に封印していた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

清掃員と僕の密やかな情状

MisakiNonagase
恋愛
都心のオフィスビルで働く会社員の26歳・高城蓮(たかぎれん)。彼の無機質な日常に唯一の彩りを与えていたのは、夕方から現れる70歳の清掃員・山科和子だった。 青い作業服に身を包み、黙々と床を磨く彼女を、蓮は「気さくなおばあちゃん」だと思っていた。あの日、立ち飲み屋で私服姿の彼女と再会するまでは――。 肉じゃがの甘い湯気、溶けゆく氷の音、そして重ねた肌の温もり。 44歳の年齢差を超え、孤独を分かち合った二人が辿り着いた「愛の形」とは。これは、一人の青年が境界線の向こう側で教わった、残酷なまでに美しい人生の記録。

熟女教師に何度も迫られて…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
二度と味わえない体験をした実話中心のショート・ショート集です

妻の遺品を整理していたら

家紋武範
恋愛
妻の遺品整理。 片づけていくとそこには彼女の名前が記入済みの離婚届があった。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...