少女たちの春[第2部]

秋 夕紀

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彼女たちの24歳~白石櫻子編~

3 看護大学に入学した櫻子は、SNSで知り合った男と会う

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 看護大学の1年目は勉強に忙しく、男子に目を向けている暇はなかった。ところが、2年生になってSNSの出会い系の存在を知り、ストレスの溜った心の癒しとして利用するようになっていた。最初の内は何人かの男と知り合い、チャットで交流していたが、一人の男と会う事になった。
「初めまして、ロミオです。チェリーさんですよね。」
 櫻子はハンドルネームを、チェリーとして公開していた。

[私は男性の性衝動とその行動について研究をしている看護学生です。
 男性と知り合う機会がなく、研究のためにお話ができれば幸いです。
 ただし、交際や性交渉、いわゆる出会いを望むものではありません。
 年齢19歳 身長162㎝ 詳細はメッセージで対応可 よろしくね]

 裏垢で登録されたアカウントには、老若男女問わず、数多くのメッセージが送られてきた。当然の事ながら、性交渉や援交を持ち掛けるものが多く寄せられ、櫻子にとっては研究資料となったが、すべて破棄していた。なるべく若く、経験のなさそうなDMを選んでやり取りをしていた。その中で、会って話したいと思ったのがロミオであった。
「ロミオさんは学生さんですよね。彼女ができないと書いていましたけど、本当なの?見た目は悪くないし、モテそうだけどな。」
 櫻子は初めて会う相手にフレンドリーに接し、話を聞き出そうとしていた。
「僕は女性が怖くて、こうしてチェリーさんと話していても落ち着かなくて。キスも経験ないし、何とかしようと思って会う事にしたんです。」
 彼の言葉に裏がない事を信じ、相談に乗る事にした。彼は小学生の頃に、女子高生から性的虐待を受けたらしく、それが原因で女性恐怖症になったようだ。高校、大学と告白されて交際する機会はあったが、女の子と二人切りになるのが怖かったという。と言っても、女の子に関心がない訳でもなく、性に対する興味もあるという。第2次性徴に伴う思春期の性的欲求にも問題はない、と判断した櫻子は彼にアドバイスをした。
「ロミオさんは、女子に好かれる顔をしているから、子供の頃に女の子に嫌なことをされたんだね。気にすることないよ、大人になって皆がすることを、ちょっと早く経験したんだと思えば良いんじゃないかな。」
 櫻子は悩み相談みたいだと思いつつ、自分の研究の糧になったと満足していた。こうして会って話すのも、新鮮だと思い始めていた。
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