すれ違う恋の行方〈中学編〉

秋 夕紀

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第1章 梅枝七海(14歳)=立松千宙(14歳)

§10 プールでの触れ合い

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 今朝の電車やプールサイドでの会話、水の中での触れ合いや戯れで、私は二人の間にあった小さな溝が埋まったように感じた。遠慮していた事も平気でしゃべれるようになったし、気になっている事も直球で訊けるようになった。
「千宙君って、思ったよりも筋肉質だね。腕とか、胸とか。」
「それは鍛えているし、男だからね!筋肉、触ってみる?」と言われ、ためらっていたが、自分から問い掛けた責任もあり、恐る恐る手を伸ばした。
「すごいね!胸の筋肉なんか堅くて…」
「じゃあ、今度は俺の番ね。」と言われ、私は最初何の事か分からなかった。はたと気付いて、あわてて腕で胸を覆い隠した。
「冗談だよ!触るわけないよ!」
「もう、セクハラだし!千宙君も冗談を言うんだね。エッチな冗談だけど…」

 昼食にハンバーガーとポテトを、千宙君が買って来て食べていた。両手が飲み物とバーガーでふさがっている私に、彼はポテトを食べさせてくれた。
「もう、5本も入れたら、喉が詰まって死んじゃうよ!優しくないんだから!」
「七海が大きな口を開けるから、いっぱい食べたいのかと思ってさ!」
「じゃあ、お返しに私のカシスジュースを飲んでみる?おいしいよ!」と言って、飲みかけのジュースを差し出した。彼は「間接キスだ」と言いながら、喜んでストローを吸っていた。

 食べながら、普段から疑問に思っている事を彼に訊いた。
「プールの授業の時、男子は女子の水着姿を見ているの?」
「いきなり何を言い出すのかと思ったら、そんな事?それは自然と目に入るし、中には興奮して騒いでる奴もいるけどね。」と当たり障りなく答えた。
「千宙君はどうなの?わたしのことを見てたりする?」
「どうしたの?今日は随分攻めて来るんだね。それは見たことあるよ、当然でしょ!逆に俺から質問だけど、学校の水着の時よりも七海の胸、目立つよね!」
 私はさっきのように胸を隠し、横に居る彼をにらみつけた。
「またセクハラ発言?わたしの知らない千宙君が、今日は何度も現れてびっくりだよ!そんなことを男の子は考えてるんだ、驚いた!」
「ごめん!つい口が滑って、思ってることを言っちゃった!」
「正直な所に免じて、教えて上げる!この水着はスクール水着とは違って、胸を大きく見せるようにパットが入ってるの。参考になりましたか?」と私は、彼の顔を直視できずに正面を向いたまま話した。
 休憩を挟んでプールに入り、打ち解けた雰囲気で水遊びを楽しんだ。午前中よりもスキンシップは多く、子どものバタ足の練習みたいに私の両手を取ったり、潜って脚を引っ張ったりしてじゃれ合った。私も彼の肩にしがみ付いたり、体を密着させたりして、二人だけの時間を楽しく過ごした。
 今までにない色んな話ができて、充実した時間を過ごせた。普段はお世辞を言う事もないし、女の子には興味のない振りをしているのに、今日は千宙君の意外な面が見られた。私も今まで遠慮があって訊き出せない事を、平気で訊けるようになった。プールという開放的な環境の中で、閉ざされていた心の扉が開いたようだった。
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