危険な森で目指せ快適異世界生活!

ハラーマル

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第2章:異世界の人々との出会い

第78話:やり手の商人

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トレイロ商会は、でかい目立つ建物なので、割と見つけやすい。
領主の屋敷から出て、台地を下りて、町の太い道に出たら直ぐに見つかった。

「乗れ乗れ」の圧が凄かったマーラに乗って、トレイロ商会を目指す。
マーラはご機嫌で、足取り軽く歩いている。
いや、本当に。バイズ辺境伯から貰った白金貨と金貨、私を乗せているのに、全く余裕そうな感じである。
そりゃ、重い鎧を装着して、フル装備の騎士を乗せているわけだから、これくらい余裕なんだろうけどさ・・・
とりあえず、買い物しても平気そうなので安心した。


10分ぐらいして、トレイロ商会に到着した。
途中、多くの視線を感じたが、まあ気にしないでおこう。


マーラを連れて中に入るわけにはいかないので、入り口で警備をしていた男性に声を掛けて、どこかで待機させておく場所があるか聞く。

裏側に、馬車や馬の待機場所があるらしく、担当の人がやって来たので、マーラを任せておく。
担当の人は、カイトくらいの少年だった。
やっぱこの世界では、この位の年齢から働くんだね・・・

中に入ると、結構混雑していた。
1階はいろんな商品が販売されている、スーパーみたいな感じなので、当然か。
一応トレイロに挨拶しておこうと思ったので、受付に進み、名前とトレイロに会いたい旨を伝える。


少しして、トレイロの部下の人、番頭さんがやってきた。

「ご無沙汰しております、コトハさん。こちらへどうぞ」

そう言って、前回と同様に2階の部屋に通された。

「トレイロを呼んで参りますので、こちらでお待ちください」
「うん、ありがとう」


数分して、トレイロが入ってきた。

「ご無沙汰しております、コトハさん。ご健勝そうで何よりです」
「こちらこそ久しぶり。1階を見てきたけど繁盛してるね」
「おかげさまで。王国の遠征も終わり、冒険者や町の者には日常が戻って参りましたので・・・」
「でも、商人としては、遠征が継続していた方が儲かったんじゃないの?」
「・・・確かに今回の遠征では、最初に物資を購入いただいただけでしたね。直ぐに終了しましたので・・・。ですが、壊滅的な被害を出して遠征が失敗し、貴族の取り潰しや降爵した貴族が多く、その事後処理に携わりましたし、軍事物資が多く失われ、補填するために多く購入いただいたので、結果的にはかなり儲かりました」

そう、軽く笑みを浮かべながら答えた。
・・・うん、思っていた通りの“商人”だね。
戦争や軍事作戦って、多くの物資を調達する必要があるし、事後処理にもお金がかかる。
だから、軍隊に物資を売る商人って、儲かるんだよねー


「・・・・・・そうはいっても、クライスの大森林に攻め入る、というのは正直、最後にしていただきたいですね。コトハさんたちに救われたナミプトルの襲撃では命の危険を感じました。それに遠征が森に影響して、森の魔獣が領都に攻めてきたら、廃業ですからな・・・」
「・・・そうだね」

そういえば、トレイロには、私たちが森に住んでることは伝えてなかったっけ?
・・・うーん、教えてもいいんだけど、こっちにメリットないしなー


「それで、コトハさん。本日は・・・?」
「・・・領都に用事があったから、ついでに足りなくなったものを買おうかなって思ってね。挨拶だけはしておこうと思ったのよ・・・」
「・・・そうでしたか。必要なものは、1階で揃うものでしょうか?」
「うん。野菜とか調味料が中心だから、揃うと思うよ・・・」
「・・・そうですか。・・・・・・・・・私どもの商品を気に入っていただき光栄です」

・・・確かに、野菜とか調味料は、自分の近所で買えって話だよね。


「私の住んでる周りには、いいお店が無いのよね。これからも定期的に買いに来るつもりだからよろしくね」
「・・・・・・分かりました。これからもよろしくお願い致します。他には何かありますでしょうか?」
「・・・そうねー。本って置いてる?」
「本、でございますか。基本的には取扱いはしておりません。ただ、先程申しました、貴族家の後片付けで、元貴族家から入手したものならございます。ご覧になりますか?」
「・・・うん。お願い」

そっか、本って昔は貴重だったはずだし、貴族が持ってる程度なのかな。
この世界の常識勉強の一助として、教科書的に読んでみたいと思ったんだけど、少し無茶だったかな。
普段はカイトに教わっているんだけど、カイトも自分の訓練があるし、ポーラへの教育もしているから、できるなら自分で調べてみたかったんだよね・・・




トレイロに案内されて、別の部屋に入った。
さっきまでいた応接室?よりは、広い部屋に、机や本棚があり、そこに50冊くらいの本が収納されていた。

「ご自由にご覧ください。本棚に収納してあるのが、内容を確認できた、売り物になる本です。机に置いてある本は、言語的な問題があり内容の判別が困難だったり、読むことはできるものの内容が意味不明だったりして、売るのに適さないものになります。ご興味のある本がございましたら、仰ってください」
「・・・分かった。ありがとう。見させてもらうね」

そう言って、トレイロは部屋から出て行った。


まずは、本棚にある本から確認しようかな。

・・・本棚にあった本は、はっきり言って面白みのない本ばかりだった。
貴族の教養的な教科書なのか、剣術や戦術、経済に関する入門書があったが、どれも内容はイマイチだった。
カイトも似たような本で勉強したのかもしれないので、一応買っておく。
ポーラの勉強に役立つかもしれないし。


机に置かれている本は、本棚にある本に比べて、古く傷んでいるものが多かった。
だが、不思議とどれも読むことはできた。内容を理解できたかはともかく・・・
・・・なんで読めるの?

そういえば、深く考えたことは無かったが、この世界に来て、言語で困ったことは無い。
これまで関わったことのある『人間』はラシアール王国の者のみで、加えてレーベルと会話しているが、普通に会話できている。
・・・・・・・・・謎だな。

可能性としては、2つ、か?
私がこの世界 ―少なくともラシアール王国やレーベルに通じる言語— をマスターしていて、それを使っている可能性。
もしくは、魔法的な何かが、意思疎通の補助をしている可能性だ。
リンやマーラたちとも意思疎通ができること、それが従魔契約という魔法によるものであることに照らすと、後者が有力か。
私は、日本語を話しているつもりだし、日本語を聞いているつもりだ。それに今は、日本語を読んでいるつもりだ。
英語もできなかった私が、別言語を習得しているとは思えない。

だとすると、本を読めるのも魔法的な何かの恩恵ってことになるのかな?
でも、本は人と話すのとは違うような気もするんだけど・・・
まあ、困っては無いから、それでいいか。


机の上の本を全部見てみたが、7冊あるうち5冊は、無価値なものだった。
3冊は日記、2冊はメモ?みたいな書き殴ったもので、とても貴重な内容が書いてあるようには思えない。
トレイロたちには読めなかったから、貴重なものに見えたのかもしれないな・・・

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