限定能力の使い方

羽柴未来

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優奈ちゃん襲来

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疲れた……。
今日の私は死ぬほど忙しかった。

買い物しようとスーパーに行ったら高校の時の友達に出会い、今なにしてるの攻撃を食らいまくったのです。

いつもマイペースな私が地面に落としたアイスが溶けるかのように忙しかった。


「ただいま~……」

それにしてもお腹が空きました。
今日は金曜日なので肉じゃがの差し入れもありません。

これはカップラーメンを食べるしか…。


いやぁ、それにしてもいい匂いがします。
台所からジュージューと何かを焼く音も聞こえる。
いいなー。
私もあったかい食べ物が食べたいですー。

カップラーメンもあったかいのは確かにあったかいけれど…。






なーんて。




さすがにこれはおかしいと思います。
だって私は一人暮らしです。
なのに部屋には煙が上がり、いい匂いといい音が聞こえているんです。



「ママーのお胸はぺったんこ♪私とお姉はボインボイーン♪牛乳飲もうよボインボイーン♪」



なんか台所で小さな女の子が殺意のある歌を歌っています。
サイズは小学生並みの女の子。
髪は肩過ぎくらいを下で2つに結んでいます。




……………えっ??



私は速攻で外に出てドアを閉めた。
中からなにか聞こえるけど聞こえないフリをします。
私は誘拐はしてないし冤罪はごめんです。
今の世の中すぐ裁かれるんです。何してたの攻撃に合うんです。



そこへ静葉さんがやって来ました。
ドアを抑えている私に中からなにやら騒いでいる女の子の声。

これは不味いです。



「静葉はん?ご、ご機嫌いかがかしらですわ」

「その子、私の妹なんですー」


ニコニコしながら言う静葉さん。
とりあえずメロンを強めに叩きました。




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「話くらい聞いてよ!ずっと無視してー!」


中に入って座ると女の子がピーピー言ってます。


「貴女が真美子さん?お姉に聞いて部屋に入ってみれば食材もなにもないじゃない!普段なに食べてるの!」


女の子は私に次々と言葉を出してきます。
今私は疲労感たっぷり&混乱で構ってあげられないんです。


「えーっと…。伊東ちゃん。改めまして、この子は優奈。私の妹よー」


なるほど妹ですか。
確かに姉妹なのかもしれません。

顔も似てると言えば似てる。
胸だって……ちっ。やはり遺伝なんでしょうか。


「で、その優奈ちゃんはなんでウチにいたんですか?」

「お姉と真美子さんに料理作ろうってことになったんだけど。食材買って部屋の扉回してみたら鍵空いてたから入っちゃった!」


ああ、入っちゃったなら仕方がないですね。
勝手に人の家に入ったというのも私に料理を作ってくれようとしてのことなら仕方ないですね。

あとで静葉さんには4の字固めをプレゼントします。


「確かに部屋は綺麗だけど…綺麗っていうか物が無いように思えるし。カップラーメンばっかりだし、貴女すごく心配」


「こーら。優奈、伊東ちゃんに失礼でしょー」


「だってお姉ー!」


はい、4の字固めをジャーマンスープレックスに変更しますね。
小学生くらいの女の子に心配される日が来るとは…世も末ですね。

私くらいの大人になれば色々あるんですよ色々。ありますとも、色々。


「ところで優奈ちゃん。晩ご飯は何を作ってくれたんですか?」


「ハンバーグだよ!」



あらー。あらあらー。
私が好きな食べ物と聞かれて脊髄反射よりも早く答えられるハンバーグをチョイスするとは。


「やった!ハンバーグ大好きです!」


優奈ちゃんは実はいい子なのかもしれないです。
ほら、名前に優しいが入っているし。

奈のほうはほら…それも多分優しい的な意味ですよ。




実際に食べてみたけどめちゃくちゃ美味しかった。



「優奈ちゃんは明日学校でしょ?そろそろ帰らなくても大丈夫ですか?」

「大丈夫大丈夫。泊まるって言ってあるから」




なるほど、それなら大丈夫ですね。



……っていやいや。




「優奈ちゃん小学生でしょ。ちゃんと学校には行かなきゃダメですよ」

「私は!18歳の!大!学!生!!」



えー。

でも家に帰ってきたらいきなり知らない女の子がいる以上の衝撃ではないですね。
疲れてるからリアクションする元気はないんですよ。












――翌朝、目覚めると優奈ちゃんが我が家でテレビを見ていた。


「真美子さん!お姉に聞いた!私も今度スロット打ってみたいよー!!」


「えー…というよりなんでまた居るんで……」


「朝ごはんはプチ目玉焼きハンバーグとクッパです」

「ラジャー!」



すっかり仲良くなりました。はい。
どうやらこれが胃袋を掴むという威力らしいです。


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