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新しい住人
しおりを挟む突然ですが、我が家。
というかアパートの紹介をします。
木造おんぼろアパートに住んでいる私こと、伊東 真美子ですが
私が住んでいるのは102号室です。
お隣の101号室が静葉さん。
そして二階の片方である201号室には『宇佐美』さんという方が住んでいるそうです。
…なぜこんな言い方なのかというと会ったことがないからです。
もう住んで結構たつのに一度も遭遇しない存在ですが、どうやら静葉さんは知っているようです。
そしてこの度、ずっと空席だった私の上の階。
つまり202号室に新しい住人が増えるそうなのです。
このアパート木造おんぼろだからきっと音が響くことでしょう。
できれば穏やかな人が入ってきてほしいものです。
ピンポーン。
…………。
ピンポーンピンポーン。
ピンポーンピンポーンピッピンポーン。
「どちらさまですか?」
やかましかったから、出てしまいました。
私は新入居者さんがどんな人か考えるのに忙しいんです。
早く帰ってもらわないといけません。
と、宅配便か郵便と思ったけど違いました。
そこには夏だというのに萌え袖全快のカーディガンを着た制服女子がいました。
パンパンに詰め込まれたであろう鞄の中はきっと教科書やジャージが丸まって入っているに違いありません。
「あの~ウチな~関西から引っ越してきた~、高山 美春っていうもんです~。どうぞよしなに~」
だらだら喋るんじゃありません。
あと…イントネーションがとにかく変です。
関西?大阪?
っていうか、よしなにって使う人初めて見ましたよ。
どこから・・・いえ、どの時代から来た子なんでしょうか。
髪は茶髪のポニーテール?
よく見ると後ろがお団子みたいになっててカンザシが一本刺さっています。
服装は今時の女子高校生といった感じですが、胸だけは女子高校生を限界突破しています。
静葉さんのほうが大きいですけど。
真美子が余りにも黙っていると、制服少女が口を開く。
「202号室に~引っ越してきたんどす~」
うーん…。京都?
意味がわかるだけ助かるけど、すごく気になります。
でも上下の間柄になるわけですから穏便に大人の対応をしなければいけませんね。
「私は伊東 真美子と申します。下の101号室に住んでいますので、よろしくお願いします」
「あーっ!そうですやんね!ウチは202ですから下の階になるわけや~ん。よろしゅうお願いします~」
……穏便に大人の対応をしなければ。
「そう、ですね。女子高生…ですよね?お一人暮らしなんですか?困ったことがあればいつでも言ってくださいね」
「そ~なんよ~。ウチ、一人暮らしもお初なもんで~。どうにかならんっちょばいやん。伊東さんがええ人で助かりどす~」
いや無理です。
気が短いと言われても無理なものはもう無理です。
助かりどすってなんですか。アポカリプスみたいに言わないでください。
下の階の住人として、大人としてここはしっかり伝えてあげなければならない場面ではないでしょうか。
それがきっと本当の大人――――。
「ウチ、両親が転勤族だったせいでな~…言葉が色んな地域のもんが混じってしもうて~、こんな喋りかたやから友達もろくにできりゃ~せん。ですんですご~く嬉しい……です」
―――――訂正。
「はいっ。上下同士、仲良くやっていきましょう!」
この子…美春ちゃんは大人のせいでこんな風になってしまったと言っています。
なら私はこの子に大人の対応を教えるんじゃなく、大人の暖かさを教えることにしましょう。
これからよろしくお願いします。美春ちゃん。
「ほんま、助かりどすぅ」
それを聞いた私は限界突破した部分を叩きました。
少しだけすっきりしました。
応援ありがとうございます!
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