忘れられない思い

yoyo

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秘めた思い⑴

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「あ、先生、ごめんなさい。今日やらなきゃいけない仕事、持って帰って来てるんでした。今日はこれで帰ります……」

   そんな風にまくし立てて、真野は慌てて行ってしまった。テーブルに置かれたお金をボーッと眺める。今日の真野は少し、様子がおかしかった。
    家に帰ってからも、今日のことは頭の中から離れなかった。額に触れたのが、いけなかったのだろうか……。でも、あれは体調を心配してだし、変な行動ではなかったはずだ……


   いや……下心が全くなかった訳ではない……
   真野に触れたいと思ったのも、事実だ……






   オレは中学の初恋からずっと、恋愛対象は男だった。そのことで、学生の頃は周りから誤解されたり、噂されたりしたことが1度ではなくあった。だから、周りの人達との関わりは本当に気をつけていた。まわりの空気を一早く読んで、誰とでも仲良く、少しおちゃらけたキャラを作って、変な空気になりそうな時は、冗談ぽく流していた。それは、仕事で生徒達と関わる時も一緒で、男女共にフレンドリーな先生を演じていた。

   真野は不思議な生徒だった。いつもは、目立たない存在であったが、真野がいると場が和むような、空気が変わるような雰囲気があって、それはオレにとってとても心地がよく、素の自分になってしまいそうだった。
   興味本位から、真野を目で追うことが多くなり、見ているうちに、真野もまわりの空気を読んで、色々なことによく気づく奴だと知った。自分たち2人だけしか、気づいてないとき、必ず真野と視線が合って、2人で秘密を共有しているような、少しくすぐったい感覚になることもあった。

   知れば知るほど、もっと知りたくなって近づきたくなった。だけど、真野は未成年で、自分の生徒であり、また自分の感情も一般的ではないことは、よくわかっていたから、自分の気持ちに蓋をして気づかないフリをした。
   真野が卒業してからは、会うこともなく特別気持ちを引きずっていた訳ではない。長くは続かなかったが付き合っていた奴もいた。だけど、7年ぶりにあの居酒屋で真野を見た瞬間、7年前の記憶と気持ちが一気に溢れて出てきた。


   あの日、居酒屋のトイレで声をかける前から、真野が店にいることに気づいていて、トイレで会ったのも偶然ではなかった。少し話が出来れば、それでいいと思っていた。だけど、足早に店を出て、途中でしゃがみ込み、あやしい女の人に連れていかれそうになるなど、放っておける訳がなくて、気づいたら体が動いていた。

   7年経った真野は、大人の顔になっていて、前以上にオレをドキドキさせ、近づけば近づくほど、高鳴る鼓動を止めることは出来なかった。もっと近づきたいと思う一方で、今の関係を壊したくない気持ちも強く、悶々とする日々を過ごした。
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