忘れられない思い

yoyo

文字の大きさ
54 / 95

プレゼント⑸

しおりを挟む
   イワシの大群やクラゲの浮揚を見て回り、併設しているカフェで一休みしたり、場所を変えて自然公園を散策したり、展望台に登ったり……先生と楽しい時間を過ごす。外の公園でも、歩くときは先生の方から、手を差し出してくれて、ずっと手を繋いでいてくれた。
   日がだいぶ傾いて来て、ちょうどレンタカーを返して来たところだった。


「さて、夕飯はどうする?何か食べて帰ろうか?」

「いや……あとは家でまったりしたいです。先生も疲れてるだろうし、何か買って帰るのはどうですか?」

「オレは、大丈夫だけど。真野がそれがいいなら、そうしようか。何かつまみになるものとケーキ買って、家でお祝いするか」

「はいっ」


   買い物するのは、いつもの最寄り駅近くで、土曜日の夕方はそれなりに人もいる。それでもボクと先生の手は繋がったままだった。レンタカーのお店を出ても先生は、今までと同じように手を差し出してくれた。


「真野?どうかした?」


   そんなことをぼんやりと考えていたら、先生に顔を覗き込まれた。

「え、あ、ここでも手、繋いでてもいいのかなぁって」


   今更、ビックリしたように先生はボクと繋がっている手をみる。どうやら無意識だったらしい。


「今日は、もう、十分繋いでもらっちゃったんで大丈夫ですよ」そう言って、手を離しかけたとき、強く握られる。

「今日は、家まで繋いでいよう」そう言って、笑ってきた。






   先生の家でささやかなお祝いをして、次の日は休みだったから、泊まるつもりで部屋でまったりしている。


「誕生日プレゼントはこんなんで良かったのか?」

「はい。たくさんボクの我儘聞いて貰えて嬉しかったです。今日、すっごく楽しかったです」

「それなら、いいんだけど……あと、10分で誕生日が、終わっちゃうけど最後の我儘はないのか?」


   時計をチラッと見て、笑いながらそう尋ねてくる。
   ボクは、最後にこれを言おうかずっと迷っていた。今日はいつも出来ないことをしてもらえて、満足してしまって、言おうか少し躊躇っていたこと。ボクの一番の願い。

   先生がキッカケをくれたから思い切って、言葉にしてみる。


「あ、えっと……その……先生と最後までしたいです」

「えっ……?」


   びっくりした顔で、先生に見つめられて余計に恥ずかしくなって、抱えていたクッションに顔を埋めてしまう。


「えっと、真野?ほら、最後の我儘なんだろ。教えて」


   いつの間にか、先生はボクの隣に座って頭の上に手を置いている。顔を上げると、もうわかっていそうなのにボクに最後まで言わせようとしている、イジワルな先生のニコニコ顔があった。


「うー、イジワル……」

「オレに何をして欲しいの?誕生日が終わっちゃうよ」

「先生と……最後までエッチがした…んっ」


   言い終わる前に先生の唇でくちを塞がれ「はぁ~もう、かわいすぎ」と呟かれた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

イケメンモデルと新人マネージャーが結ばれるまでの話

タタミ
BL
新坂真澄…27歳。トップモデル。端正な顔立ちと抜群のスタイルでブレイク中。瀬戸のことが好きだが、隠している。 瀬戸幸人…24歳。マネージャー。最近新坂の担当になった社会人2年目。新坂に仲良くしてもらって懐いているが、好意には気付いていない。 笹川尚也…27歳。チーフマネージャー。新坂とは学生時代からの友人関係。新坂のことは大抵なんでも分かる。

BL短編まとめ(現) ①

よしゆき
BL
BL短編まとめ。 冒頭にあらすじがあります。

【創作BL】溺愛攻め短編集

めめもっち
BL
基本名無し。多くがクール受け。各章独立した世界観です。単発投稿まとめ。

オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?

中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」 そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。 しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は―― ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。 (……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ) ところが、初めての商談でその評価は一変する。 榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。 (仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな) ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり―― なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。 そして気づく。 「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」 煙草をくゆらせる仕草。 ネクタイを緩める無防備な姿。 そのたびに、陽翔の理性は削られていく。 「俺、もう待てないんで……」 ついに陽翔は榊を追い詰めるが―― 「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」 攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。 じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。 【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】 主任補佐として、ちゃんとせなあかん── そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。 春のすこし手前、まだ肌寒い季節。 新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。 風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。 何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。 拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。 年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。 これはまだ、恋になる“少し前”の物語。 関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。 (5月14日より連載開始)

ミルクと砂糖は?

もにもに子
BL
瀬川は大学三年生。学費と生活費を稼ぐために始めたカフェのアルバイトは、思いのほか心地よい日々だった。ある日、スーツ姿の男性が来店する。落ち着いた物腰と柔らかな笑顔を見せるその人は、どうやら常連らしい。「アイスコーヒーを」と注文を受け、「ミルクと砂糖は?」と尋ねると、軽く口元を緩め「いつもと同じで」と返ってきた――それが久我との最初の会話だった。これは、カフェで交わした小さなやりとりから始まる、静かで甘い恋の物語。

Take On Me

マン太
BL
 親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。  初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。  岳とも次第に打ち解ける様になり…。    軽いノリのお話しを目指しています。  ※BLに分類していますが軽めです。  ※他サイトへも掲載しています。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

仕事ができる子は騎乗位も上手い

冲令子
BL
うっかりマッチングしてしまった会社の先輩後輩が、付き合うまでの話です。 後輩×先輩。

処理中です...