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これから⑻
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あんな顔をさせたい訳じゃなかった。でも、遠い昔に封印した相手と今は付き合っていると聞かされて、まだ全然頭が追いついていなかった。
10日前、病院のベットで医者に名前や住所、仕事について聞かれたけど一瞬言葉が詰まった。「あなたの名前は?」と小さな子供でも答えられるような質問に即答できない自分がいた。ど忘れしてしまったような、長い休日で曜日感覚がなくなり、今日が何曜日が一瞬わからくなるような感覚に近い。だから、免許証を出され〝奥田春人〟であると言われると「あーそうだった」とすぐに思い出すことができた。住所も職場もそんな感じで、何かきっかけがあれば何とかその紐を引っ張って手繰り寄せることができた。
でも、何故あの駅にいたのかはモヤがかかったように思い出すことができず、鞄に入っていた参加したであろう研修の資料を見ても記憶を引っ張ってくることはできなかった。そのあと、詳しい検査をして逆行性健忘症と診断された。今回の事故で脳に強い衝撃を受けて意識障害が起こった以前に遡って思い出すことができない状態であり、オレはここ1、2年の記憶がすっぽり抜けている状態だった。
職場先の高校には、緊急連絡先を姉の美鈴にしていたから、病院が高校に連絡を取って美鈴に連絡がいった。駆けつけてくれた美鈴には階段から落ちたことに、散々「鈍臭い」とも言われたけど。
美鈴から真野の話が出たときは、9年前のあの真野であるとは全く思いもしなかった。ケータイがないなら、向こうも連絡取れなくなって心配しているのではないかと言われ、ネットでまんぷく屋の連絡先を調べて泰輔に電話した。今は連絡先は全てケータイに入れているから、それがなくなると誰の連絡先もわからない状態だった。記憶喪失にならなかったとしても、真野の連絡先も泰輔の連絡先もわからない状態だ。今回のことで改めてそんなことも思い知って恐ろしく感じた。
泰輔と話をして今付き合ってるらしい真野が、あのときの真野であることがわかり、正直頭が真っ白になるほどビックリして信じられなかった。電話を切ってから、当時の真野の記憶が蘇り思い出したかのように心臓がうるさく高鳴った。
実際、成長した真野の姿を見ても残念ながら思い出すことはなかったけど、初めて会った気はしなかった。高校生の真野の記憶があるからおかしなことではなかったけど、そういうことだけでなく大人になった真野にも会ったことがあるような不思議な感覚だった。抜けている記憶に関しても、全く何も思い出せない訳ではなく全てにモヤがかかっているような、喉元まで出かかってるのに、思い出せないもどかしい感じが何度もあった。
「春人……」
振り返ると心配な顔をした泰輔がいた。
「泰輔……今回は悪かったな……」
「いや……それより、お前大丈夫か……?」
「オレと真野は……本当に付き合ってるんだよな?」
「……あぁ。付き合ってるよ。やっぱり何も覚えてないのか?真野くんが高校生の頃から好きだったんだろ?」
「あとちょっとで思い出せそうな気もするんだけど、思い出せなくてイライラする……はぁ~でも、オレはそんなこともお前に話してたのか……」
ニヤニヤしている泰輔を見て、しまったと思う。
「直接、好きだったとは聞いてないけど、やっぱそうだったんだね~。まぁ、バレバレだったけど。付き合ってからもラブラブだったし、何も不安にあることはないんじゃない?」
オレが不安になるというよりは、真野を不安にさせたくない。あいつは妙に勘が鋭いことがあったから、オレがなかなか思い出せなくてイラついていることも全部わかっているのではないかと思う。久しぶりに会った真野にもあの時と同じようにまた惹かれたし、胸が高鳴ったけど、どうやって接していいのか戸惑っている自分もいた。オレは真野とどんな風に付き合っていたのだろうか。
10日前、病院のベットで医者に名前や住所、仕事について聞かれたけど一瞬言葉が詰まった。「あなたの名前は?」と小さな子供でも答えられるような質問に即答できない自分がいた。ど忘れしてしまったような、長い休日で曜日感覚がなくなり、今日が何曜日が一瞬わからくなるような感覚に近い。だから、免許証を出され〝奥田春人〟であると言われると「あーそうだった」とすぐに思い出すことができた。住所も職場もそんな感じで、何かきっかけがあれば何とかその紐を引っ張って手繰り寄せることができた。
でも、何故あの駅にいたのかはモヤがかかったように思い出すことができず、鞄に入っていた参加したであろう研修の資料を見ても記憶を引っ張ってくることはできなかった。そのあと、詳しい検査をして逆行性健忘症と診断された。今回の事故で脳に強い衝撃を受けて意識障害が起こった以前に遡って思い出すことができない状態であり、オレはここ1、2年の記憶がすっぽり抜けている状態だった。
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泰輔と話をして今付き合ってるらしい真野が、あのときの真野であることがわかり、正直頭が真っ白になるほどビックリして信じられなかった。電話を切ってから、当時の真野の記憶が蘇り思い出したかのように心臓がうるさく高鳴った。
実際、成長した真野の姿を見ても残念ながら思い出すことはなかったけど、初めて会った気はしなかった。高校生の真野の記憶があるからおかしなことではなかったけど、そういうことだけでなく大人になった真野にも会ったことがあるような不思議な感覚だった。抜けている記憶に関しても、全く何も思い出せない訳ではなく全てにモヤがかかっているような、喉元まで出かかってるのに、思い出せないもどかしい感じが何度もあった。
「春人……」
振り返ると心配な顔をした泰輔がいた。
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「……あぁ。付き合ってるよ。やっぱり何も覚えてないのか?真野くんが高校生の頃から好きだったんだろ?」
「あとちょっとで思い出せそうな気もするんだけど、思い出せなくてイライラする……はぁ~でも、オレはそんなこともお前に話してたのか……」
ニヤニヤしている泰輔を見て、しまったと思う。
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