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〈マリー視点〉
私がタイラー侯爵家に来たのは4歳の頃。
それまでは、お母さんと2人で暮らしていた。
時々お母さんに会いにくるオジさんが自分の父親だと言う。
「じゃあなんで一緒に暮らさないの?」
とお母さんに聞いたら、
「意地悪な人が居て、私とマリーがお父さんと暮らすのを邪魔してるからよ」
と言った。
ある日お母さんが笑顔で
「邪魔者が居なくなったから、お父さんと暮らせるのよ」
と嬉しそうにしていたから、私もなんだか嬉しくなった。
お母さんは私のせいで、お母さんのお父さんやお母さん、お兄ちゃんと仲が悪くなったと言っていた。
そう言われて、申し訳ない気持ちになった事を覚えてる。
今になって考えると、既婚者と付き合って、子どもまで作ってたんだから、お母さんの実家はお母さんと縁を切ってたんだろうと思う。
2人暮らしの頃から、お父さんの援助は受けていたようだが、そんなに暮らしは楽じゃなかった気がする。
そして、私は侯爵家の養女になった。
今まで暮らした家より数倍は大きな邸。
領地も広大だと言っていた。私は正真正銘の貴族になった。
そして、私には同じ歳の義姉が出来た。
お人形のような美しさを持つリリーローズ。
私とお母さんに意地悪してた内の1人。
私はこの子が大っ嫌いだった。
いつも澄ました顔で、微笑んでいた。
きっと腹中では私の事、見下しているに決まってる。
リリーローズは何でも持っていた。
綺麗なドレスも、素敵な宝石も、そして彼…ジェームス・カーライル。その人も。
私がジェームスを知った時には、既にジェームスはリリーローズの婚約者だった。
私だってタイラー侯爵の娘。なら、結婚するのは私だって良かった筈だ。
しかし、あちらからの要望で、リリーローズが婚約者になってしまった。
リリーローズの婚約者として紹介された彼に私は一目で恋に落ちた。
黒い髪に整った顔。そして深い海のような青い瞳。
どうしても、彼が欲しい。
今まで、リリーローズの持っている物を欲しがれば、なんでも私の物にしてくれていたお父さんも、こればっかりは譲ってくれなかった。
何度も、何度もお願いしたのに、
「それは無理だ。カーライル公爵には逆らえん」
と言うばかり。
お母さんも私の気持ちを汲んで何度も一緒にお願いしてくれたけど、ダメだった。
ジェームスとリリーローズは政略結婚の相手だというのに、仲睦まじかった。
2人は端から見てもお似合いで、周りからも祝福されていた。
それがいつも燗に障る。
あの2人を見るとリリーローズを殺してやりたいと思う程に嫉妬した。
私だって顔は可愛らしいと良く言われていた。顔つきはお母さんに似ていたし、十分に男性にチヤホヤされる見た目をしていた。
何故か声だけがあの女、リリーローズに似ていると言われる事が多く、私は自分の声が大嫌いだった。
私はあくまでお母さんの連れ子。
タイラー侯爵家の養女だ。
例えお父さんの実子であっても、浮気して出来た子だから、元々は庶子だ。
庶子は家督を継げない為、私が婿を取り、その婿にタイラー侯爵家を継がせるのだとお父さんは常々言っていた。
だから、ジェームスとは結婚出来ないと。
それなら、タイラー侯爵家なんていらない。
私がカーライル公爵夫人になれば良いし、リリーローズがタイラー侯爵家を継げば良い。
私がいくらそう言っても、2人の婚約が覆る事はなかった。
私に出来る事は、少しでもジェームスの視界に私を映して貰う事。そして好きになって欲しい。
ジェームスから私を望んで貰えれば、きっと私がジェームスと結婚出来る。
私は2人のお茶会に無理矢理でも参加したし、街へ出掛ける時は偶然を装って、行く先々に出没した。
あんな澄ました女より、私の方が断然良いに決まってる。
私の事を知ってくれれば、ジェームスは私の事を好きになる。そう信じていた。
ジェームスは若くして公爵位を継いだ。彼が20歳の頃だ。
私は公爵家の護衛の1人と体の関係を持っていた為、ジェームスとリリーローズの間がギクシャクしている事を聞いていた。
そして運命のあの日、私はその護衛から、リリーローズとジェームスが喧嘩をして、リリーローズが泣きながら出て行った事を聞いた。
私は、お父さんからだと言って、媚薬入りの酒をジェームスに渡して貰うよう手配した。媚薬といっても、市井で買える恋人同士が楽しむ為の軽い物だ。犯罪を犯すわけではない。
ジェームスは公爵を継いだ責任の重さからか、最近酒量が増えていた。
上手くいけば、彼を襲って既成事実を作れる。
そう思った私は、その夜、ジェームスの元を訪れた。
公爵家には、その護衛に通用口からこっそり入れて貰った。
私が公爵夫人になった暁には、その護衛には今の何倍もの手当てを出す約束をしていたし、いつでも好きな時に抱いて良いと言っていた。
ジェームスを手に入れる為なら、好きでもない男に抱かれたって良い。
それに、体の相性も良かったし。
お母さんには、なんとかリリーローズを説得して、公爵家に連れてきて貰うよう頼んでいた。
私とジェームスが睦み合う様を見せつける事が出来るように。
私がタイラー侯爵家に来たのは4歳の頃。
それまでは、お母さんと2人で暮らしていた。
時々お母さんに会いにくるオジさんが自分の父親だと言う。
「じゃあなんで一緒に暮らさないの?」
とお母さんに聞いたら、
「意地悪な人が居て、私とマリーがお父さんと暮らすのを邪魔してるからよ」
と言った。
ある日お母さんが笑顔で
「邪魔者が居なくなったから、お父さんと暮らせるのよ」
と嬉しそうにしていたから、私もなんだか嬉しくなった。
お母さんは私のせいで、お母さんのお父さんやお母さん、お兄ちゃんと仲が悪くなったと言っていた。
そう言われて、申し訳ない気持ちになった事を覚えてる。
今になって考えると、既婚者と付き合って、子どもまで作ってたんだから、お母さんの実家はお母さんと縁を切ってたんだろうと思う。
2人暮らしの頃から、お父さんの援助は受けていたようだが、そんなに暮らしは楽じゃなかった気がする。
そして、私は侯爵家の養女になった。
今まで暮らした家より数倍は大きな邸。
領地も広大だと言っていた。私は正真正銘の貴族になった。
そして、私には同じ歳の義姉が出来た。
お人形のような美しさを持つリリーローズ。
私とお母さんに意地悪してた内の1人。
私はこの子が大っ嫌いだった。
いつも澄ました顔で、微笑んでいた。
きっと腹中では私の事、見下しているに決まってる。
リリーローズは何でも持っていた。
綺麗なドレスも、素敵な宝石も、そして彼…ジェームス・カーライル。その人も。
私がジェームスを知った時には、既にジェームスはリリーローズの婚約者だった。
私だってタイラー侯爵の娘。なら、結婚するのは私だって良かった筈だ。
しかし、あちらからの要望で、リリーローズが婚約者になってしまった。
リリーローズの婚約者として紹介された彼に私は一目で恋に落ちた。
黒い髪に整った顔。そして深い海のような青い瞳。
どうしても、彼が欲しい。
今まで、リリーローズの持っている物を欲しがれば、なんでも私の物にしてくれていたお父さんも、こればっかりは譲ってくれなかった。
何度も、何度もお願いしたのに、
「それは無理だ。カーライル公爵には逆らえん」
と言うばかり。
お母さんも私の気持ちを汲んで何度も一緒にお願いしてくれたけど、ダメだった。
ジェームスとリリーローズは政略結婚の相手だというのに、仲睦まじかった。
2人は端から見てもお似合いで、周りからも祝福されていた。
それがいつも燗に障る。
あの2人を見るとリリーローズを殺してやりたいと思う程に嫉妬した。
私だって顔は可愛らしいと良く言われていた。顔つきはお母さんに似ていたし、十分に男性にチヤホヤされる見た目をしていた。
何故か声だけがあの女、リリーローズに似ていると言われる事が多く、私は自分の声が大嫌いだった。
私はあくまでお母さんの連れ子。
タイラー侯爵家の養女だ。
例えお父さんの実子であっても、浮気して出来た子だから、元々は庶子だ。
庶子は家督を継げない為、私が婿を取り、その婿にタイラー侯爵家を継がせるのだとお父さんは常々言っていた。
だから、ジェームスとは結婚出来ないと。
それなら、タイラー侯爵家なんていらない。
私がカーライル公爵夫人になれば良いし、リリーローズがタイラー侯爵家を継げば良い。
私がいくらそう言っても、2人の婚約が覆る事はなかった。
私に出来る事は、少しでもジェームスの視界に私を映して貰う事。そして好きになって欲しい。
ジェームスから私を望んで貰えれば、きっと私がジェームスと結婚出来る。
私は2人のお茶会に無理矢理でも参加したし、街へ出掛ける時は偶然を装って、行く先々に出没した。
あんな澄ました女より、私の方が断然良いに決まってる。
私の事を知ってくれれば、ジェームスは私の事を好きになる。そう信じていた。
ジェームスは若くして公爵位を継いだ。彼が20歳の頃だ。
私は公爵家の護衛の1人と体の関係を持っていた為、ジェームスとリリーローズの間がギクシャクしている事を聞いていた。
そして運命のあの日、私はその護衛から、リリーローズとジェームスが喧嘩をして、リリーローズが泣きながら出て行った事を聞いた。
私は、お父さんからだと言って、媚薬入りの酒をジェームスに渡して貰うよう手配した。媚薬といっても、市井で買える恋人同士が楽しむ為の軽い物だ。犯罪を犯すわけではない。
ジェームスは公爵を継いだ責任の重さからか、最近酒量が増えていた。
上手くいけば、彼を襲って既成事実を作れる。
そう思った私は、その夜、ジェームスの元を訪れた。
公爵家には、その護衛に通用口からこっそり入れて貰った。
私が公爵夫人になった暁には、その護衛には今の何倍もの手当てを出す約束をしていたし、いつでも好きな時に抱いて良いと言っていた。
ジェームスを手に入れる為なら、好きでもない男に抱かれたって良い。
それに、体の相性も良かったし。
お母さんには、なんとかリリーローズを説得して、公爵家に連れてきて貰うよう頼んでいた。
私とジェームスが睦み合う様を見せつける事が出来るように。
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