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scene・28
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家でも私は特に澄海には何も言わずに過ごしていた。
しかし、
「そういえば、最近『歌みた』上げないね。どうしたの?」
澄海から、ピアノの依頼が全くない事に気付いた私はそう尋ねた。
「ん?……うん?そうだったっけ。最近はあんまり歌いたい歌がないからかな」
と澄海はヘラりと笑顔を見せた。
彼が不安な時に見せるその表情は、嫌でも彼女から聞いた話を思い起こさせる。
もしかしたら、澄海は迷っているのではないか。もし彼が相談してきたのなら、話を聞いてあげられるのに。
そう思うと、もどかしい気持ちになる。
「そう……。なら、また2人で曲を作る?それなら君が歌いたい歌を作れるでしょう?」
「ううん。今は……歌いたくないんだ」
と澄海は少し俯いた。
最近の澄海は、歌を歌う事が楽しそうに見えた。
歌う事は得意じゃないって言っていたけど、嫌いな訳じゃないんだろうな……とファンの皆の『歌みた』へのコメントを嬉しそうに見せてくれる彼を見て、そう思っていたのだ。
なのに何故そんな悲しそうな顔をするこだろう。
もしかしたら、私に義理立てをしている……とか?
グループ活動が今まで協力してきた私への裏切りとでも思っているのだろうか?
私はヘラりと笑った澄海の表情の裏の裏まで見通せないかと、つい彼の顔を見つめてしまう。
「ん?乃愛さんどうかした?」
そんな私を見て、澄海は不思議そうに首を傾げた。
私はつい、
「ねぇ。……私に何か話したい事とか……ない?」
と尋ねてしまっていた。
元カノからグループに誘われている事を、勝手に知らされていたと知れば、澄海も良い思いはしないだろう……そう思っていたのに。
澄海の不安そうな様子に居ても立ってもいられなくなってしまった。
「……何で?……別に何にもないよ」
と澄海は私から目を反らす。
肝心なところで嘘が付けない澄海を可愛く思いながらも、私は
「ごめん……本当なら澄海の居ない所で自分の話をされているのは不快かもしれないし、それをこうして口に出すのも間違ってるかもしれないけど……澄海、グループに誘われてるんでしょう?」
とついに全てを口に出してしまった。
澄海はそれに驚いた表情で
「……誰から?」
と一言呟いた。
「誰でも良いじゃない。大切なのは、澄海が大手歌い手グループのメンバーに誘われているっていう事実でしょう?」
「……断ったから。もう、その話」
「どうして?!歌い手はグループ活動した方が伸びるんだって澄海も言ってたじゃない!チャンスでしょう?」
「だ、か、ら!もうその話は終わったの!俺は別にグループ活動したい訳でも、歌い手として伸びたい訳でもないから!」
と澄海は怒ったように私を見た。
しかし、
「そういえば、最近『歌みた』上げないね。どうしたの?」
澄海から、ピアノの依頼が全くない事に気付いた私はそう尋ねた。
「ん?……うん?そうだったっけ。最近はあんまり歌いたい歌がないからかな」
と澄海はヘラりと笑顔を見せた。
彼が不安な時に見せるその表情は、嫌でも彼女から聞いた話を思い起こさせる。
もしかしたら、澄海は迷っているのではないか。もし彼が相談してきたのなら、話を聞いてあげられるのに。
そう思うと、もどかしい気持ちになる。
「そう……。なら、また2人で曲を作る?それなら君が歌いたい歌を作れるでしょう?」
「ううん。今は……歌いたくないんだ」
と澄海は少し俯いた。
最近の澄海は、歌を歌う事が楽しそうに見えた。
歌う事は得意じゃないって言っていたけど、嫌いな訳じゃないんだろうな……とファンの皆の『歌みた』へのコメントを嬉しそうに見せてくれる彼を見て、そう思っていたのだ。
なのに何故そんな悲しそうな顔をするこだろう。
もしかしたら、私に義理立てをしている……とか?
グループ活動が今まで協力してきた私への裏切りとでも思っているのだろうか?
私はヘラりと笑った澄海の表情の裏の裏まで見通せないかと、つい彼の顔を見つめてしまう。
「ん?乃愛さんどうかした?」
そんな私を見て、澄海は不思議そうに首を傾げた。
私はつい、
「ねぇ。……私に何か話したい事とか……ない?」
と尋ねてしまっていた。
元カノからグループに誘われている事を、勝手に知らされていたと知れば、澄海も良い思いはしないだろう……そう思っていたのに。
澄海の不安そうな様子に居ても立ってもいられなくなってしまった。
「……何で?……別に何にもないよ」
と澄海は私から目を反らす。
肝心なところで嘘が付けない澄海を可愛く思いながらも、私は
「ごめん……本当なら澄海の居ない所で自分の話をされているのは不快かもしれないし、それをこうして口に出すのも間違ってるかもしれないけど……澄海、グループに誘われてるんでしょう?」
とついに全てを口に出してしまった。
澄海はそれに驚いた表情で
「……誰から?」
と一言呟いた。
「誰でも良いじゃない。大切なのは、澄海が大手歌い手グループのメンバーに誘われているっていう事実でしょう?」
「……断ったから。もう、その話」
「どうして?!歌い手はグループ活動した方が伸びるんだって澄海も言ってたじゃない!チャンスでしょう?」
「だ、か、ら!もうその話は終わったの!俺は別にグループ活動したい訳でも、歌い手として伸びたい訳でもないから!」
と澄海は怒ったように私を見た。
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