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誰にしようかな?
しおりを挟む死んだのか?私死んだのか?
でも、死んだ理由が思い出せない。
とりあえず、今考えても仕方ない。
ここで生きていくしかない。
私は祖母の家に帰ってきた。
知らない街、知らない家なのに迷いもしない。
これって転生チートってやつ?
とにかく、今はどうやってこのゲームを攻略するかだ。
やっぱり誰かを攻略して、ハッピーエンドに持っていく事が重要だろう。
このゲーム、バッドエンドとかあったっけ?
攻略出来なかったら、約束の場所に『AKARI』が現れず、メールが届く。その場所に行けなくなった事と、もう私に連絡が出来なくなる事が書かれたメールだ。
それでエンド…だったはず。バッドエンドとは言えなくはないが、他の乙女ゲームみたいに、断罪されたり、処刑されたりしない。平和。
ちゃんと最後まで攻略すれば良かった…とか、せめて動画を最後まで見れば良かった…とか後悔するが、もう遅い。
中途半端な知識しかない、このゲームに転生したのが運命ならば受け入れるしかない。
さて、誰を攻略するか。それが問題だ。
推しである本郷先輩?それとも途中までだが、攻略した(しかけた?)爽太くんか?
夏目先生と、まだ見ぬ隠しキャラは論外だろう。
私は自分の欲望に忠実になる事にした。
せっかく推しのいるゲームに転生したのだ。
推しを攻略したい。
ネタバレを読んでいるから、あらすじはわかる。
彼の悩みも知っている。大丈夫、なんとかなるはず。
明日からは攻略に向けて頑張る所存だ。
祖母と夕食を取る。祖父も数年前に亡くなっており、今は祖母だけがこの家にいる。私が使っている部屋は元は母の部屋だ。
祖母が私が来るからと部屋をリフォームしてくれていた。
だからやたらと可愛い部屋だったのかもしれない。
16歳の部屋にしては少し少女趣味だったし。
母には弟がいるが、私の叔父に当たるその人は海外生活をしているらしい。
そして、その叔父さんである古本 匡(たすく)さんが、このゲームの隠しキャラ、攻略対象4だ。
実は、母と叔父は血が繋がっていない。叔父は祖母の親友の子どもだ。
祖母の親友はシングルマザーで匡さんを育てていたが病気になり亡くなってしまう。施設に預けられていた匡さんを探しだし、祖母は引き取り養子にして育てるのだ。
今思うと、このゲームの攻略対象もヒロインもなんらかの闇を抱えてる。
青春ってほろ苦いな。
今、ヒロインは私だ。両親を亡くしたのは私ではない。私には心になんの澱もない。こんなので、『AKARI』と仲良く出来るのだろうか。不安は尽きない。
「花音ちゃん、学校どうだった?」
祖母が心配そうにしている。
「まだ慣れないけど、楽しそうな学校だったよ。でも、勉強頑張らなくちゃね。」
あの学校は進学校だから、それなりに頭が良くなくては入れない。
私も入れてるって事は頭が良いのだろう。きっと。
「そう。良かった。あんまり無理はしないでね。」
祖母は私の顔色を伺っている。
そりゃそうだろう。両親を亡くした少女が元気そうにしてても、空元気だと疑いたくなる気持ちもわかる。
気を使われてる空気をビンビンに感じる。
江梨子さん大丈夫よ。空元気じゃなくて、私はホントに元気だから。
ただ、ちゃんと攻略できるか不安なだけだから。
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