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決意
しおりを挟む「あ、先輩、あの…すみません。スマホ…教室に置いてきちゃってて」
「ああ!そうか。ごめん、ごめん。じゃあまた今度教えるよ」
…今度っていつになるんだろ…
「じゃあ、今度…」
そんな機会があるといいな…
「じゃあ、僕は帰るね。坂崎さんも、気をつけて。お大事にね」
爽やかな笑顔を残して、先輩は去っていった。
千載一遇のチャンスを逃した私の気持ちは、空気の抜けた風船のように、萎んでいた。
その後、職員会議から帰ってきた先生に御礼を言って、私は保健室を後にした。
教室に戻ると森田がいた。
「お!花音もう大丈夫か?」
「うん…」
「おい。まだ元気ないじゃん。送って行こうか?」
「いや…大丈夫。今日、生徒会は?」
「ん?今日は大してやることなかったから、もう済んだ。そんな事気にしなくていいから、もう帰るぞ」
私は反論する元気もなく、森田に連れられてトボトボとバス停まで一緒に歩いた。
「大丈夫か?家まで送らなくて」
「大丈夫…。なんか疲れちゃって…」
「そっか…あんまり無理すんなよ。
あ、そうだ。さっき廊下で渉先輩に会ってさ」
「うん。保健室に顔だしてくれた」
「俺が花音が体調悪くなった事、言っちゃったからな。勝手にごめん」
「いいよ。隠す程の事じゃない」
「でさ、ほらそん時、先輩へのお土産を俺が持ってて」
私は明日、改めて先輩に持っていこうとロッカーにお土産を仕舞って学校に置いて来ていた。
「うん。教室に持って帰ってくれてありがとうね。明日、先輩にもう1度持って行ってみるよ」
「それでさ、先輩が『もしかして、タイミングが合わない時もあるかもしれないから、良かったら僕の連絡先、坂崎さんに教えといてくれる?』って言われたんだ。
お前、先輩の連絡先知らなかったんだな。てっきり、知ってるかと…」
と森田が言い終わるより先に、
「え?教えてくれるの?マジ?」
と食いぎみに私は聞き返した。
「あ、ああ。先輩から言われてるしな。って、花音、目が血走ってる。怖いよ」
おっといけない。でも形振りかまってられない。
私はなんとか本郷先輩の連絡先をゲットする事に成功した。
家に帰り、深呼吸を10回してから、先輩へメッセージを送る。
すぐに先輩から返信が届いた。
え?先輩レスポンス早い!可愛い!
お土産は明日の放課後、先輩が生徒会室へ来てくれる事になった。
これでやっと、お土産を渡せるが、まだ1つ問題が残っている。
先輩の彼女?問題だ。
もう、これは直接聞くしかないよな。
で、もし、先輩に彼女が居たら…居たら…居たら…どうしよう?
…よし!その時は諦めよう。そして……爽太くんに乗り換えよう。
節操なしと思われるかもしれないが、略奪愛は私には無理だ。
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