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83話
しおりを挟む「その時の病が元で前国王……私の父は子の出来にくい体になった。その事を知っているのはその時の医者と……アナベル、お前だ」
「はぁ?何の証拠があって?私はそんな事を聞いた覚えはないわ。どうやってそれを証明するの?」
アナベル様は何故か自信がありそうに微笑んだ。
「証拠はない……と自信がある様だな。確かに証人は居ない。あの時担当していた宮廷医師は死んでいたしな」
と言う陛下の言葉に私はゾッとした。もしかして……いや、まさか。
「では、何の証拠もないのにそんな言い掛かりを?」
と不敵な笑みを浮かべるアナベル様が怖い。
「証人は居ないと言ったが、証拠がないとは言っていない。あの当時のカルテを破棄したからと安心したか?残念ながら、あの担当医は日誌を書いていた。カルテ程詳しくはなかったが、簡潔に『子種減少か?』と書いてあった。この日誌の存在を知っている者は殆ど居なかったから、証拠を探すのに骨が折れたよ」
と陛下は該当のページを開いた日誌を掲げた。
一瞬、アナベル様の顔色が変わるが、直ぐにいつもの調子で、
「そんな物が何の証拠に?それに私がそれを知っていたという根拠にもなりませんね」
その言葉に陛下は次のページをめくる。
「ここに『陛下には告げぬ様に忠告』と書いてある。担当医に忠告出来る者は?その力を持つのは一人しか居ない」
「そう?貴方じゃないの?」
「残念ながら七年前の私にそんな力はない。だが、ここで大事なのは誰が知っていたか、ではなく七年前には父は不妊症を患っていたという事だ。ローランドは今、いくつだ?」
「そこの日誌が陛下の事を書いていたとして……絶対に子が出来ないとは書いていない。万が一の確率で授かったという事よ。ローランドは奇跡の子だわ」
とアナベル様は微笑みながらそう言った。
「まぁ、そう言うだろうと思っていた。これだけでは弱い事もな。じゃあ、次だ。おい!」
そう言うと陛下は扉の近くに居た護衛に声を掛ける。
すると、開かれた扉から一人の男性が現れた。
アナベル様は振り返ってその男性を見ると、扇を取り落とした。
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