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116話
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朝、朝食の場にも現れない陛下を心配する。
「陛下は?」
朝食の給仕についたメイドに尋ねると、
「今朝は要らないと断られたましたので、執務室にお茶だけ持って行きました」
とそのメイドは答えた。
「そう……執務室にいらっしゃるのね」
私は呟いた。……ずっと夜通し執務室にいらっしゃったのかしら?
しかし、陛下と顔を合わせて私は何と声を掛ければ良いのか、私にはまだ答えが見つかっていない。そう……私はまだ迷っていた。
いや、自分の気持ちはわかっている。しかし、そちらを選んで本当に後悔しないのか……そう問われれば自信持って頷くことは出来ないだろう。
今日はサーレム殿下が帰国の途に就く。最後に私達で話し合いを設けるがそのテーブルに私もつく。そこで答えを出すのだと思うと、つい顔にも緊張が走る。私の答えが……今後の二つの国の行く末に影響をもたらしたら……どうすれば良いのだろう。
そんな私の準備をするマーサが、私の前に回り込むと、
「クレア様が何かを悩んでいるのは分かっています。それがとても大変な事なのだろうと想像も出来ます。でも、私はクレア様の選ぶ道を応援しますよ。ですから、是非クレア様の心のままに。
ずっと我慢して生きてこられたじゃないですか。たまには、我が儘を言っても良いんではないですか?それが……陛下の……お母様の願いでもあると思います」
そうマーサは優しく言うと私の頬を両手で包み込む。その手の温もりに私は勇気を貰った気がした。
準備を終えた私は意を決して、謁見室に入る。そこには既に陛下の姿があった。
「陛下……」
私が近づいて陛下に言葉を掛けようとすると、陛下はそれを遮って、
「クレア、俺の話を先に聞いて欲しい」
と、真剣な顔で私に言った。
「お前が何と言おうと、俺はお前を手放すつもりはない。それは決定事項だ。失業者の問題でお前が悩むのなら、戦をしたって構わない。そうすれば、一気に失業者問題は片がつく」
「陛下!それはなりません!」
と私が目を見開くと、
「わかっている。だが、それぐらいの決意だと言いたかったんだ。昨日寝ずに考えた事がある。戦をせずに済む方法だ。上手くいくかは分からないが、何もしないよりマシだ。折角国王になったんだ。やるべき事をやるよ」
と陛下は私の目を見てそう言った。
「陛下は?」
朝食の給仕についたメイドに尋ねると、
「今朝は要らないと断られたましたので、執務室にお茶だけ持って行きました」
とそのメイドは答えた。
「そう……執務室にいらっしゃるのね」
私は呟いた。……ずっと夜通し執務室にいらっしゃったのかしら?
しかし、陛下と顔を合わせて私は何と声を掛ければ良いのか、私にはまだ答えが見つかっていない。そう……私はまだ迷っていた。
いや、自分の気持ちはわかっている。しかし、そちらを選んで本当に後悔しないのか……そう問われれば自信持って頷くことは出来ないだろう。
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そんな私の準備をするマーサが、私の前に回り込むと、
「クレア様が何かを悩んでいるのは分かっています。それがとても大変な事なのだろうと想像も出来ます。でも、私はクレア様の選ぶ道を応援しますよ。ですから、是非クレア様の心のままに。
ずっと我慢して生きてこられたじゃないですか。たまには、我が儘を言っても良いんではないですか?それが……陛下の……お母様の願いでもあると思います」
そうマーサは優しく言うと私の頬を両手で包み込む。その手の温もりに私は勇気を貰った気がした。
準備を終えた私は意を決して、謁見室に入る。そこには既に陛下の姿があった。
「陛下……」
私が近づいて陛下に言葉を掛けようとすると、陛下はそれを遮って、
「クレア、俺の話を先に聞いて欲しい」
と、真剣な顔で私に言った。
「お前が何と言おうと、俺はお前を手放すつもりはない。それは決定事項だ。失業者の問題でお前が悩むのなら、戦をしたって構わない。そうすれば、一気に失業者問題は片がつく」
「陛下!それはなりません!」
と私が目を見開くと、
「わかっている。だが、それぐらいの決意だと言いたかったんだ。昨日寝ずに考えた事がある。戦をせずに済む方法だ。上手くいくかは分からないが、何もしないよりマシだ。折角国王になったんだ。やるべき事をやるよ」
と陛下は私の目を見てそう言った。
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