お飾り公爵夫人の憂鬱

初瀬 叶

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第12話

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「わかりました!!私はディーン様と閨はせず、表向きの公爵夫人としての勤めだけ果たせば良いと、そういうことですね!!?」
と私は少し反抗的にそう言い返した。

「ご主人様と呼べと言えと言っただろ?!もう忘れたのか?君は馬鹿か?!」

「ばっ……。馬鹿ではありません!もちろん覚えておりますとも。しかし、ご主人様とは…。私は使用人では御座いません。名前で呼ばれるのが嫌なら、せめて旦那様と」

「…旦那様と君に呼ばれたくない。では、外では名前で良いが、屋敷の中では『公爵様』と呼ぶんだ。例外はなしだ。はぁ……もう出ていってくれ。君と話すのは疲れる」
とこの男は頭を抱えた。

『女嫌いの男好き』そんな噂も強ち大袈裟な嘘ではないのかもしれない。この男、女性を舐めてる。所謂『男尊女卑』思想の男だ。

「……わかりました。それでは失礼いたします。!」
と私は会釈して執務室を出るべく、扉の方へ向かう。

扉のノブに手を掛けた、その時、

「……ちょっと待て。さっき君はうちの親戚筋の家名をスラスラと答えたな。しかも家族構成まで。どうしてだ?」
と静かに尋ねられた。

「今日、執事のギルバートからこの家の歴史が書かれた本を渡されました。目を通すようにと」

「あれか。しかし……結構な量な筈だが?今日初めて読んだのだろう?」

「昔から、1度目にした物は忘れないんです」

「ほう……。確か学園には通っていなかった筈だが?」

「学園には通っておりませんが、マナー講師が付いていましたし、勉学は兄に教えて貰いました」

「ふむ……。確かに君の兄上は優秀で、特待生だったと聞いた」

「はい。しかし、優秀なのは兄で私ではありません。それと……差し出がましい様ですが、その机の上の書類の2行目。綴りが間違えているようです」
と私は答えると、扉を開けて部屋を出た。

こんな男と同じ空間にもう1秒も居たくない。


 「もう!なんなのアレは!!」
と部屋に戻った私は、自分の枕を思いっきり殴った。

確かに些か口を出し過ぎたかもしれないが、急に『白い結婚』と言われて、動揺してしまった。それを誤魔化す為でもあったかもしれない。
……別にあの男に抱かれたい訳ではないが、自分の役割として覚悟(……怖いな、とは思っていたし、あの男との閨を想像すら出来なかったけど!)を持って嫁いできたつもりだった。
なのに……『お飾り』の公爵夫人になれなどと言われるとは思っていなかった。
女として……とてもプライドが傷付いた事も事実だ。
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