36 / 189
第36話
しおりを挟む
私は手渡された封筒から遺言状を出して広げる。
「こちらは私が前々からご主人様より預かっていた物で御座います」
というギルバートの言葉に促されるように、私はそれを読んだ。
『 遺言書
遺言者 ディーン・オーネットは次の通り遺言する
遺言者は遺言者の有する全ての財産、権利を我が子 テオドール・オーネットに相続させる』
……ん?『我が子 テオドール・オーネット』とは?
私の疑問は黙っていてもギルバートに伝わった事だろう。だって見覚えのない言葉が並んでいるのだから。
察するにこの『テオドール』という人物が公爵様が養子に迎える予定としていた男性である事は間違いなさそうだ。
しかし、養子にする人物をわざわざ『我が子』と書くのだろうか?
ギルバートはそんな私に、もう1通懐から書類を出して広げて見せた。
「テオドール様というのは、ご主人様であるディーン様の実子で御座います」
とギルバートは私に言った。
…………はい?『実子』?!
「どういう…こと?」
私は驚き過ぎて何故か小声で聞いてしまった。
「少し長い話になりますが、お聞き願いますでしょうか?」
というギルバートに私は頷く事が精一杯だった。
「テオドール様の母親はアイリスという平民の女性です。アイリスとディーン様は幼い頃からの幼馴染みで、想い合っておりました。しかしアイリスとディーン様では身分が違う。このオーネット公爵家に平民であるアイリスは相応しくありません。
2人の結婚など誰にも許されない。それはディーン様も重々承知しておりました。
しかし……そんな中アイリスは身籠りました。もちろんディーン様の御子である事は間違い御座いません。そして、アイリスはディーン様の血を引く子を産みました。それがテオドール様です」
淡々と話すギルバートには申し訳ないが、衝撃的過ぎる事実に話が頭に入ってこない。
「えっと……公爵様は女嫌いなのでは?」
と私は今じゃなくても良いだろうという質問をしてしまう。本当に今じゃなくて良い。
「女嫌いなのは事実です。強いて言うなら『アイリス以外の』女性という事です」
「では……前公爵様はテオドール様の事を?」
「ご存知ありませんでした。前公爵様はご主人様の女嫌いにほとほと頭を悩ませておりました。何と言ってもディーン様が片っ端から婚約話を断っていくのですから」
「でも……それはアイリスさんの事があったからでしょう?」
「左様で御座います。例えアイリスと結婚出来ずとも、他の女との結婚など耐えられないと仰っておいででしたから」
「ギルバートはその女性との事を……」
「知っておりました。私にとってご主人様は唯一無二のお方。ご主人様を裏切るつもりは毛頭御座いませんでしたから、この秘密は私だけが」
ギルバートの妄信的な公爵様への忠義が伺えた。
「こちらは私が前々からご主人様より預かっていた物で御座います」
というギルバートの言葉に促されるように、私はそれを読んだ。
『 遺言書
遺言者 ディーン・オーネットは次の通り遺言する
遺言者は遺言者の有する全ての財産、権利を我が子 テオドール・オーネットに相続させる』
……ん?『我が子 テオドール・オーネット』とは?
私の疑問は黙っていてもギルバートに伝わった事だろう。だって見覚えのない言葉が並んでいるのだから。
察するにこの『テオドール』という人物が公爵様が養子に迎える予定としていた男性である事は間違いなさそうだ。
しかし、養子にする人物をわざわざ『我が子』と書くのだろうか?
ギルバートはそんな私に、もう1通懐から書類を出して広げて見せた。
「テオドール様というのは、ご主人様であるディーン様の実子で御座います」
とギルバートは私に言った。
…………はい?『実子』?!
「どういう…こと?」
私は驚き過ぎて何故か小声で聞いてしまった。
「少し長い話になりますが、お聞き願いますでしょうか?」
というギルバートに私は頷く事が精一杯だった。
「テオドール様の母親はアイリスという平民の女性です。アイリスとディーン様は幼い頃からの幼馴染みで、想い合っておりました。しかしアイリスとディーン様では身分が違う。このオーネット公爵家に平民であるアイリスは相応しくありません。
2人の結婚など誰にも許されない。それはディーン様も重々承知しておりました。
しかし……そんな中アイリスは身籠りました。もちろんディーン様の御子である事は間違い御座いません。そして、アイリスはディーン様の血を引く子を産みました。それがテオドール様です」
淡々と話すギルバートには申し訳ないが、衝撃的過ぎる事実に話が頭に入ってこない。
「えっと……公爵様は女嫌いなのでは?」
と私は今じゃなくても良いだろうという質問をしてしまう。本当に今じゃなくて良い。
「女嫌いなのは事実です。強いて言うなら『アイリス以外の』女性という事です」
「では……前公爵様はテオドール様の事を?」
「ご存知ありませんでした。前公爵様はご主人様の女嫌いにほとほと頭を悩ませておりました。何と言ってもディーン様が片っ端から婚約話を断っていくのですから」
「でも……それはアイリスさんの事があったからでしょう?」
「左様で御座います。例えアイリスと結婚出来ずとも、他の女との結婚など耐えられないと仰っておいででしたから」
「ギルバートはその女性との事を……」
「知っておりました。私にとってご主人様は唯一無二のお方。ご主人様を裏切るつもりは毛頭御座いませんでしたから、この秘密は私だけが」
ギルバートの妄信的な公爵様への忠義が伺えた。
323
あなたにおすすめの小説
私、女王にならなくてもいいの?
gacchi(がっち)
恋愛
他国との戦争が続く中、女王になるために頑張っていたシルヴィア。16歳になる直前に父親である国王に告げられます。「お前の結婚相手が決まったよ。」「王配を決めたのですか?」「お前は女王にならないよ。」え?じゃあ、停戦のための政略結婚?え?どうしてあなたが結婚相手なの?5/9完結しました。ありがとうございました。
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi(がっち)
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
【完結】お荷物王女は婚約解消を願う
miniko
恋愛
王家の瞳と呼ばれる色を持たずに生まれて来た王女アンジェリーナは、一部の貴族から『お荷物王女』と蔑まれる存在だった。
それがエスカレートするのを危惧した国王は、アンジェリーナの後ろ楯を強くする為、彼女の従兄弟でもある筆頭公爵家次男との婚約を整える。
アンジェリーナは八歳年上の優しい婚約者が大好きだった。
今は妹扱いでも、自分が大人になれば年の差も気にならなくなり、少しづつ愛情が育つ事もあるだろうと思っていた。
だが、彼女はある日聞いてしまう。
「お役御免になる迄は、しっかりアンジーを守る」と言う彼の宣言を。
───そうか、彼は私を守る為に、一時的に婚約者になってくれただけなのね。
それなら出来るだけ早く、彼を解放してあげなくちゃ・・・・・・。
そして二人は盛大にすれ違って行くのだった。
※設定ユルユルですが、笑って許してくださると嬉しいです。
※感想欄、ネタバレ配慮しておりません。ご了承ください。
【完結】私の望み通り婚約を解消しようと言うけど、そもそも半年間も嫌だと言い続けたのは貴方でしょう?〜初恋は終わりました。
るんた
恋愛
「君の望み通り、君との婚約解消を受け入れるよ」
色とりどりの春の花が咲き誇る我が伯爵家の庭園で、沈痛な面持ちで目の前に座る男の言葉を、私は内心冷ややかに受け止める。
……ほんとに屑だわ。
結果はうまくいかないけど、初恋と学園生活をそれなりに真面目にがんばる主人公のお話です。
彼はイケメンだけど、あれ?何か残念だな……。という感じを目指してます。そう思っていただけたら嬉しいです。
彼女視点(side A)と彼視点(side J)を交互にあげていきます。
【完結】長い眠りのその後で
maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。
でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。
いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう?
このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!!
どうして旦那様はずっと眠ってるの?
唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。
しょうがないアディル頑張りまーす!!
複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です
全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む)
※他サイトでも投稿しております
ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです
※表紙 AIアプリ作成
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめる事にしました 〜once again〜
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【アゼリア亡き後、残された人々のその後の物語】
白血病で僅か20歳でこの世を去った前作のヒロイン、アゼリア。彼女を大切に思っていた人々のその後の物語
※他サイトでも投稿中
夫に相手にされない侯爵夫人ですが、記憶を失ったので人生やり直します。
MIRICO
恋愛
第二章【記憶を失った侯爵夫人ですが、夫と人生やり直します。】完結です。
記憶を失った私は侯爵夫人だった。しかし、旦那様とは不仲でほとんど話すこともなく、パーティに連れて行かれたのは結婚して数回ほど。それを聞いても何も思い出せないので、とりあえず記憶を失ったことは旦那様に内緒にしておいた。
旦那様は美形で凛とした顔の見目の良い方。けれどお城に泊まってばかりで、お屋敷にいてもほとんど顔を合わせない。いいんですよ、その間私は自由にできますから。
屋敷の生活は楽しく旦那様がいなくても何の問題もなかったけれど、ある日突然パーティに同伴することに。
旦那様が「わたし」をどう思っているのか、記憶を失った私にはどうでもいい。けれど、旦那様のお相手たちがやけに私に噛み付いてくる。
記憶がないのだから、私は旦那様のことはどうでもいいのよ?
それなのに、旦那様までもが私にかまってくる。旦那様は一体何がしたいのかしら…?
小説家になろう様に掲載済みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる