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第73話 sideテオ
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〈テオ視点〉
「テオ。私、明日は出掛けなくてはならないの。アーロンは置いていくから、アーロンの仕事を手伝っておいてね」
ステラ様に声を掛けられ、俺はふと我に返った。
あの大雨の夜。うちのパン屋の側にあった木に雷が落ちた。
樹齢100年程の大木は大きな音を立てうちのパン屋の方へと倒れた。
俺の17歳の誕生日を翌日に控えたその日、俺は仕事を失った。
そしてその数日後……今度は父親を喪った事を知らされた。
しかし、その事実を知っても母親はあまり悲しそうではなかった。
……あんなに会うのを楽しみにしていた男が死んだんだぞ?俺はますます自分の母親がわからなくなった。
母親に王都へ行こうと言われた時、てっきり叔祖父を頼っていくのだと思っていた。
『トミー叔父さんは病気で寝たきりだし、コビーは何故か私を嫌ってるから、商会には頼れないの。でも大丈夫よ、あなたにはちゃんとした家があるでしょう?』
『まさかオーネット公爵家に行くつもり?止めろよ。あそこには奥さんが暮らしてるんだろ?』
『何故?あそこは元々あなたの家よ?あと1年もしないうちに当主になるのは、テオドール、あなたなんだから遠慮する必要はないわ。それに、私だってディーンの面影を感じて生きていきたいの』
その後、俺は何度も止めた。でも母親は聞く耳を持たなかった。
……そして俺もステラ・オーネットという人物に会ってみたいという好奇心に抗えなかった。
「わかりました。明日はどちらに?」
つい尋ねてしまった。
彼女がどこへ出掛けようと俺には関係ない筈なのに。
最近は夕食も共に取る事が多くなった。何だか彼女がこの屋敷に居ないと考えるだけで胸がざわつく。……寂しいのか?俺。17歳にもなって?
「王太子妃殿下のお茶会に呼ばれているの。喪中だから……と何度かお断りしていたんだけど、そろそろ顔を見せて欲しいと言われては、そう無下に断る事は出来ないわ」
とステラ様は微笑んだ。
彼女の笑顔を見ると、少し胸の鼓動が早くなる気がする……もしかして俺、病気かな?
そんな俺の胸の事情など誰にもわかるはずもなく、会話は続いていく。
「アーロン、ジーナのお店から連絡はまだない?」
「まだですねぇ…。さすがにかなり稀少な物らしいので難しいのかもしれません。間に合わない時の事を考えて別の贈り物を用意しては?」
「それはもう頼んであるから大丈夫よ。出来ればお誕生日の贈り物にしたかったのだけど……」
というステラ様とアーロンさんの会話に堪らず口を挟む。
「どうかしましたか?」
「もう2ヶ月もすれば、王太子妃である、パトリシア殿下のお誕生日なの。パトリシア殿下はお香が好きでね。とても珍しいお香があると聞いて、それの入荷を待っているんだけど……」
とステラ様は眉間にシワを寄せた。
「……公爵になったら、そのような事も記憶しなければならないんですね……」
俺は貴族の仕事の多さに辟易した。
正直、ステラ様の記憶力は異常だ。その事は一緒に仕事をし始めて直ぐに理解した。
彼女は1度目にした物を忘れない。俺が彼女に『凄いですね』と目を丸くすれば、『ちょっとした特技なの』と少し誇らしそうな顔をした。……その顔が可愛らしかった事を思い出す。
「うーん。当主の方々の趣味や、領地の特産物などは覚えていた方が良いと思うけど、ご夫人方の趣味まで覚える必要はないわよ。それは、テオの奥さんになる人の仕事ね」
とステラ様に言われ、俺は思わず、
「結婚……?」
と聞き返してしまった。
「そりゃそうよ。そろそろ候補者だけでも考え始めないと……と思っていた所よ。公爵を継げば釣書が山の様に届くでしょうけど、今から候補者を絞っておいた方が、何かとスムーズでしょう?」
と微笑むステラ様の笑顔に、俺は今度は胸ではなく頭を殴られたような衝撃を覚えた。
……結婚?俺が?貴族の娘と?
「テオ。私、明日は出掛けなくてはならないの。アーロンは置いていくから、アーロンの仕事を手伝っておいてね」
ステラ様に声を掛けられ、俺はふと我に返った。
あの大雨の夜。うちのパン屋の側にあった木に雷が落ちた。
樹齢100年程の大木は大きな音を立てうちのパン屋の方へと倒れた。
俺の17歳の誕生日を翌日に控えたその日、俺は仕事を失った。
そしてその数日後……今度は父親を喪った事を知らされた。
しかし、その事実を知っても母親はあまり悲しそうではなかった。
……あんなに会うのを楽しみにしていた男が死んだんだぞ?俺はますます自分の母親がわからなくなった。
母親に王都へ行こうと言われた時、てっきり叔祖父を頼っていくのだと思っていた。
『トミー叔父さんは病気で寝たきりだし、コビーは何故か私を嫌ってるから、商会には頼れないの。でも大丈夫よ、あなたにはちゃんとした家があるでしょう?』
『まさかオーネット公爵家に行くつもり?止めろよ。あそこには奥さんが暮らしてるんだろ?』
『何故?あそこは元々あなたの家よ?あと1年もしないうちに当主になるのは、テオドール、あなたなんだから遠慮する必要はないわ。それに、私だってディーンの面影を感じて生きていきたいの』
その後、俺は何度も止めた。でも母親は聞く耳を持たなかった。
……そして俺もステラ・オーネットという人物に会ってみたいという好奇心に抗えなかった。
「わかりました。明日はどちらに?」
つい尋ねてしまった。
彼女がどこへ出掛けようと俺には関係ない筈なのに。
最近は夕食も共に取る事が多くなった。何だか彼女がこの屋敷に居ないと考えるだけで胸がざわつく。……寂しいのか?俺。17歳にもなって?
「王太子妃殿下のお茶会に呼ばれているの。喪中だから……と何度かお断りしていたんだけど、そろそろ顔を見せて欲しいと言われては、そう無下に断る事は出来ないわ」
とステラ様は微笑んだ。
彼女の笑顔を見ると、少し胸の鼓動が早くなる気がする……もしかして俺、病気かな?
そんな俺の胸の事情など誰にもわかるはずもなく、会話は続いていく。
「アーロン、ジーナのお店から連絡はまだない?」
「まだですねぇ…。さすがにかなり稀少な物らしいので難しいのかもしれません。間に合わない時の事を考えて別の贈り物を用意しては?」
「それはもう頼んであるから大丈夫よ。出来ればお誕生日の贈り物にしたかったのだけど……」
というステラ様とアーロンさんの会話に堪らず口を挟む。
「どうかしましたか?」
「もう2ヶ月もすれば、王太子妃である、パトリシア殿下のお誕生日なの。パトリシア殿下はお香が好きでね。とても珍しいお香があると聞いて、それの入荷を待っているんだけど……」
とステラ様は眉間にシワを寄せた。
「……公爵になったら、そのような事も記憶しなければならないんですね……」
俺は貴族の仕事の多さに辟易した。
正直、ステラ様の記憶力は異常だ。その事は一緒に仕事をし始めて直ぐに理解した。
彼女は1度目にした物を忘れない。俺が彼女に『凄いですね』と目を丸くすれば、『ちょっとした特技なの』と少し誇らしそうな顔をした。……その顔が可愛らしかった事を思い出す。
「うーん。当主の方々の趣味や、領地の特産物などは覚えていた方が良いと思うけど、ご夫人方の趣味まで覚える必要はないわよ。それは、テオの奥さんになる人の仕事ね」
とステラ様に言われ、俺は思わず、
「結婚……?」
と聞き返してしまった。
「そりゃそうよ。そろそろ候補者だけでも考え始めないと……と思っていた所よ。公爵を継げば釣書が山の様に届くでしょうけど、今から候補者を絞っておいた方が、何かとスムーズでしょう?」
と微笑むステラ様の笑顔に、俺は今度は胸ではなく頭を殴られたような衝撃を覚えた。
……結婚?俺が?貴族の娘と?
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結果はうまくいかないけど、初恋と学園生活をそれなりに真面目にがんばる主人公のお話です。
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