お飾り公爵夫人の憂鬱

初瀬 叶

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第104話

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「まぁまぁ!ステラ!久しぶりね。
オーネット公爵の事があって、まだ喪も明けていないから貴女をお茶に誘うのも控えていたのよ。でも会えて嬉しいわ」

「王太后様、お久しぶりでございます。
随分とご無沙汰をして申し訳ございません。今回はパトリシア様の代理として参りました。
場違いかと思いましたがパトリシア様からのお祝いの品を持って来るという使命が御座いましたので」
と私が笑顔で言うと、

「ええ。それについてはパトリシアから手紙を貰ったわ。……さぁ、先ずは座って頂戴」
王太后様はパトリシア様の名前を口にすると少し悲しげな表情をした。
……パトリシア様の容態はあまり良くないのかもしれない。

しかし、王太后様も私もその事には決して触れない。
私は勧められた席に腰を下ろした。

王太后様を囲んで和やかな時間が過ぎる。ここに集まっているのは、陛下以外でこの国の貴族に嫁いだ彼女のお子様方やその配偶者。
そしてその方々の子ども、所謂彼女の孫だ。

私だけ他人感が半端ないが、これもパトリシア様の頼み。
私は自分の今まで収集した情報を駆使して会話の糸口を掴むと、場違いな人間ながらも交流を深めていった。

自分でもいつの間にこんなに社交的な人間になったんだろうと思う。
公爵家に嫁ぐという事は、人間を成長させるらしい。

ある程度の時間が過ぎ、皆が次々と王太后様へと贈り物を手渡していく。
それに続いて私が絵画を渡すと、

「まぁ!これは……ポールの作品ね。しかも珍しい……風景画だわ」
王太后様はその絵画を愛しむように眺め、サインを確認して頷いた。

「風景画は珍しい作品なのですね。知りませんでした。申し訳ございません、不勉強で」
と私が言えば、

「彼が評価され始めたのはここ10年程……彼が亡くなってからだもの、知らなくてもおかしくはないわよ。…………懐かしい風景だわ」

そう言えば王太后様もアンプロ王国の出身……そう彼女はその国の王女だった。

アンプロ王国は我が国の支配下にある。彼女は人質のようなものだった。
王太后様も色々と苦労をしただろう事は想像に容易い。

きっとポール・ダンカンの描いたあの風景は彼女の想い出の中にあるアンプロ王国の景色だったに違いない。

絵画を見た王太后様の微笑みは、まるで嫁ぐ前の少女時代を思わせる程、無垢なものだった。
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