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第177話
しおりを挟む「留学?!何故?」
「勉強の為……もありますが、他国に行けば私の命が狙われる事もありませんし、今ステラ様が懸念されている事も解決すると思うんです」
「確かに……でも、そんな急に……」
私は何を躊躇っているのだろう。別に問題はないではないか。テオにとって良いことである事は間違いない。だけど何故か私は首を縦に振れずにいた。
「奥様。隣国は我が領産出の鉄鉱石の輸出相手。実は鉄鉱石の加工技術に優れております。テオドール様はそちらを学びたいと」
とアーロンが私に口添えをした。
なるほど。2人がコソコソとしていたのは、この事かと思い至る。
「加工技術を?」
「はい。オーネット公爵領では産出のみです。それだけでもオーネット公爵領は巨万の富を得ています。しかし、それに加工技術が加われば最強になるのでは?と思いまして。
それを……タイラー伯爵領で行うのは如何でしょう。あの土地は今回の天候不良で農作物に大ダメージを負いました。荒れた田畑を元に戻すには時間がかかります。もちろん領民の気持ちも大切ですが、その土地を農地に戻すのを諦め、加工場を造るのはどうかと思いまして……」
ヴァローネ伯爵のせいで、あの土地は荒廃してしまった。私はあの土地の3分の2をどうするべきか悩んでいたのだが、テオはこれから何年も先を見据えたビジョンを既に考えていたようだ。
テオはしっかりと私の目を見て、そう言った。
……テオはいつの間にこんなに成長していたのだろう。私にはこんな事、全く思いつかなかった。
私に出来たのはオーネット公爵家を今のまま安定させ続ける事だけ。テオはさらに上を目指している。私は胸が熱くなった。
繋ぎの役目はそろそろ終わる。私の仕事はここまでの様だ。
「素晴らしいアイデアだと思うわ。私には絶対に思いつかなかった。テオ。貴方はこのオーネット公爵家の跡継ぎとして、本当に立派に成長してくれたのね。凄いわ」
と私が微笑めば、テオは照れた様に、
「ちゃんと技術を身に着けて帰ってから褒めて下さい」
と笑った。
アーロンとテオの間で、殆どの準備が終わっていた様で、テオの留学は3日後と決まった。
3日後にはテオはここから居なくなる。たった半年とはいえ、私は既に寂しさを感じていた。
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