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その30
「え?害したって何をしたの?」
殿下…興味津々ですね。
それぐらいお勉強にも意欲的になって貰えると有り難いんですけどね。
しかし、私もこの話には興味がある。
ランバン王国と我がアルティア王国とに、国交はない。
そして、ランバン王国とこのベルガ王国にも国交はなかった筈。
フェルト女史をこの国に国外追放したという事は、彼女がこのベルガ王国で殺されても文句は言わないという事だ。というよりは、死んで欲しいと思われていたのかもしれない。
フェルト女史は困ったように、
「今更、ここで私が何を言っても仕方ありませんが、身に覚えの無いことなので、何をしたか…には答えられません。
しかし、その女性を殺害しようとした…そう罪状には書いてありましたわ」
「え?してない事で罪に問われたの?」
殿下は前のめりに、グイグイと質問する。
「そうですね、その当時は。
でも、今ではそれは冤罪であったと認められておりますし、ランバンに帰国しても良いと言われておりますが、帰る気持ちは御座いません。
まぁ、もう帰る家もありませんのでね」
「冤罪ってランバンの皆もわかってるんでしょ?なんで帰らないの?」
「冤罪だと知っているのは、ごく一部の貴族のみ。
私を犯罪者と断罪した方が高貴な御方なので…公には出来なかったのです。
それに、私の実家は私が罪に問われた段階で、直ぐに私を除籍しました。
私はこの国に来た時はただの『イヴァンカ』でしたの」
「じゃあ、フェルトって…」
「私の主人はバーナード・フェルト。この国の宰相をしております」
……宰相の奥様!
「へぇ~平民になったのに、宰相と結婚するなんて、玉の輿じゃない!」
…殿下…腐っても王女なのですから、少しは言葉を選んだらどうだろう…。
「そうですわね。確かに。
私はこの国に来て、心から良かったと思っておりますの。
ランバンに居ても、きっと幸せにはなれなかったでしょうから」
そう言って微笑んだフェルト女史の顔は本当に幸せそうだった。
その後、休憩を終えた2人はまた勉強に戻る。
私はそこを少し離れ茶器を片付けながら、さっきのフェルト女史の話を思い返していた。
…はっきり言って、あの話…今のランバン国王の話じゃないだろうか?
だって、フェルト女史は元は公爵令嬢。
それを冤罪で犯罪者に仕立て上げ、国外追放までしてしまうとは…かなりの権力者じゃなきゃ無理だ。
それが出来る人物は…限られるのではないだろうか?
まぁ、フェルト女史から真実が語られる事はないだろうが、どこの国でも、愚かな人間は居るものだ。
そう思いながら、私は片付けを終えた。
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