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その31
廊下に居る護衛の方から声がかかる。
「陛下より『今日の晩餐はミシェル王女殿下もご一緒に』との事です」
…あぁ…この時が来てしまった。
晩餐会は謁見の間と違い私もその場には入れる。
しかし部屋の隅に控えるのみ。
ハラハラドキドキしながら殿下の一挙手一投足を見守るなんて…考えただけでも寿命が縮まりそう。
私がその旨を殿下に伝えると、一緒に居たフェルト女史は、
「では、晩餐会用のマナーを少しお復習しましょうか?」
と有難い申し出をしてくれた。
私には願ったり叶ったりだ。
フェルト女史は、
「私も昔…ランバンに居た頃は、獣人の方々が苦手でしたのよ?
お国柄でしょうかね。ランバンでは獣人の方々を毛嫌いする傾向にありましたから。
ですが、見かけや能力に違いはあっても、お互い同じ『人』なのです。
人と接する時は最低限のマナーと、お互いを不快にさせない事が大切です。
特別なマナーがわからない時には、素直に習えば良いのです。私もそうしてきました」
…フェルト女史もきっと、この国で苦労する事も多かったのだろう。
この気持ちが殿下にきちんと伝わっていれば良いんですけどね…。
フェルト女史は晩餐用のマナー、会話のマナーやコツを殿下に教えてくれた。
これで私のハラハラドキドキが少しは軽減される事を祈りたい。
フェルト女史が退室した後、私は殿下を晩餐会仕様に作り上げる。
殿下からは、
「もっと、豪華に飾り付けて!」
と言われたが、ジャラジャラしたアクセサリーは食事の時には相応しくない。
シンプルだが、我がアルティア産の良質なエメラルドのペンダントを着けるだけにした。
髪はハーフアップで横は編み込んでいく。少しでも食事の時に邪魔にならないよう心がけた。
自分で言うのもなんだが、中々の出来映えだ。
殿下は見た目だけはとても愛らしい。本当に、もったいない。
時間になり従者が迎えに来た為、殿下と私は晩餐会の会場に向かう。
私は、前を歩く従者に、
「すみません。今日の晩餐会に出席される方は…」
と質問した。
前の様な失態を避ける為、前もって出席者を聞いて、殿下に覚えておいて貰う為だ。
「それでしたら、今日は、陛下と妃陛下。王太子殿下と、第三王子殿下のみで御座います」
と従者から聞いて、私は少しホッとした。
人数は少ない方が良い気がする。
殿下がたくさんの方々と会話を楽しむなんて、ハードルが高すぎる。
会場に到着し、殿下は席へ案内される。
私は部屋の隅に控えた。
そこには既にアーベル殿下が着席しており、その後直ぐに陛下と妃陛下、王太子殿下が入室して来た。
私はアルティアで見た絵姿と人物を合致させていく。
…なんだろう…王太子殿下って…誰かに似てる?
そう思って私がつい王太子殿下の顔をまじまじと見ていると、それに気づいた王太子殿下が、私に向かって微笑んだ。
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