とりあえず結婚してみますか?

初瀬 叶

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翌日、時間通りにレオナルド様が迎えに来てくださいました。

お兄様は学校へ行っているので、タウンハウスの使用人達に見送られ、私はランバード伯爵家へ向かいます。
馬車の中では、レオナルド様がお兄様の様子を聞いてこられました。

「あの後、2人でじっくり話をして、理解してもらえました。すぐに結婚という話しに難色を示されていましたが…なんとか納得していただきましたわ。」

「そうですか。それは良かった。改めてサミュエル殿にもご挨拶をさせていただかないと。昨日はあんな感じだったので、不安だったんだ」

「では、また改めて、うちのタウンハウスへお越しくださいますか?今日であればお兄様も夕方には邸へ戻っていると思うますので。」

「善は急げだ。早速お邪魔させていただくよ。」

うちへの挨拶は置いといて、とりあえず今からは、ランバード伯爵夫妻への対応を話し合わなければなりません。

「2人の設定を決めておきませんと、私達の話が食い違えば、嘘がばれてしまうかもしれません。
ここはある程度細かく決めておきましょうか。まず、出会いは、昨日お兄様にお話した感じで良いと思うのですが、レオナルド様のご両親には妊娠しているという設定があるので、出会った時が昨日では、駄目ですもの。
妊娠が発覚してすぐにレオナルド様がご両親へお話されたと仮定すると、2人の出会いは3ヶ月前程でよろしいでしょうか?」

「ああ、それで構わないと思う」

「私は引きこもり令嬢なので、めったに王宮には来ませんが…3ヶ月前、レオナルド様は王都にいらっしゃいましたか?」

「3ヶ月…ああ、特にフィリップ殿下の視察もなかったし、王都にいたと思う。」

「では、私が3ヶ月前にちょうど、お兄様と王都に来てた日があるので、その日を出会った日にしましょう。
でも、うちの両親とそちらの両親が話をしてしまうと、嘘がばれてしまいますわ。妊娠についてもです。どうしても両家の間で矛盾が出てしまうのですが…」

「そうだな…。そう考えるとうちの両親には本当の事を話した方が良いのかもしれない」

「確かに、それが1番ですけれども…でもそうなるとランバード伯爵夫妻が、私に罪悪感をもってしまうかもしれませんね。」

「そうだな。今では利害が一致してるとはいえ、元はと言えば、俺の嘘が発端だ。レベッカをこんな形で巻き込む事をよしとしないだろう。」

「ですよね。やっぱり全てをお話するのは、無理がありますね。とにかく!お互いの両親が会う事になったら、その話題を全力で回避するしかありませんね。後は野となれ山となれです。」

「レベッカは見かけによらず、肝が据わっているんだな。」

「見かけによらず…ですか?」

「あぁ、外見はとても華奢でフワッとしていて可愛らしいのに。意外と大胆だ」
と笑顔でレオナルド様は言った。
確かに、私の見た目はどちらかと言えば、自分で言うのもなんだけど、可愛らしい方だと思う。童顔で幼くみえてしまうのは、実はコンプレックスだ。

出来れば年相応に見られたい。でも、可愛らしいと言われるのは、やっぱり嬉しく思うので

「可愛いですか?そう思っていただけるなら、嬉しいです。女性が苦手でも、私とはこうやってお話してても不快にはなりませんか?」

「ああ、昨日も言ったように女性とこんなに話すのは母以外では初めてだよ。自分でもビックリしている。
不快なんて事は少しもないけど、俺は女性を喜ばせるような会話は出来ないから、レベッカの方が不快になるのではないかと少し不安にはなるよ」

「まぁ。私もレオナルド様とお話しているのはまったく不快ではありませんよ。むしろ楽しいです。
私も家族以外の男性とこんなにお喋りしたのは初めてですもの」

「ははっ。お互い初めて同士だね。」

「そうですね。これならランバード伯爵夫妻にも、仲の良い恋人同士に見えるでしょうか?体の関係があるぐらいの仲良しに見えなきゃおかしいですものね?」

「体の関係?!」と言ったままレオナルド様は真っ赤になって俯いてしまった。

「それこそ、レオナルド様のお決めになった設定ですよ。仲良しに見えるように頑張りましょうね。後は何を聞かれても運命のお相手というワードで押しきればなんとかなりそうです。
それに、ある意味、本当に運命のお相手ですものね。」
と私にニッコリ笑った。
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