とりあえず結婚してみますか?

初瀬 叶

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王都へ sideレオ

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王都に着いてそのまま俺は王宮へ赴いた。

結婚証明書を事務官に手渡す。
陛下からの返答は早くても明日以降になるとの事だった。
時刻はもう夕方であったが、俺はついでに近衛騎士団団長の元へ向かう。
ノックをし部屋へ入ると団長はまだ仕事中だった。

部屋に入った俺にちらりと目を向けると

「お前、まだ休暇中だろ?もう仕事がしたいのか?顔色は良くなったみたいだが、きちんと休め。」
そう説教される。

「いや、今日はご報告と相談がありまして…少しお話よろしいですか?忙しいなら、出直します。」
そう言うと、

「もう、今日は終わりだ。話を聞こう。そこに掛けろ、お茶の準備をさせる」

そういって、団長は隣の部屋の事務員へ声をかけた。

「で、話というのは?兄上の事か?」

兄が廃嫡された事は団長も知っている。
心配を滲ませた目で俺の返答を待っている。

「いえ。兄の事では大変ご迷惑をお掛けしました。長期のお休みまで頂いてしまって。でも、その事ではありません。」

「長期といってもたった10日間じゃないか。気にするな。それで?」

「はい、実は結婚する事になりまして…」

「はぁ?!結婚?!誰が?」

団長、めちゃくちゃ声がデカイです。
きっと隣に居る事務員にも聞こえている事だろう。

「私が、です」

「お前が?!誰と?」

「コッカス伯爵家のレベッカ嬢と、です」

「それは、実在する人物か?妄想ではなく?」

「妄想じゃありませんよ!今、結婚証明書も提出してきました。
あとは陛下に受理されるのを待つだけです。」

「本当にお前が結婚するのか?女嫌いのお前が?男色の噂もあったお前が?女を見る目が冷たすぎて、絶対零度の騎士と呼ばれたお前がか?」

酷い言われようだ。

「女嫌いですが、男色ではありません。どんな噂があっても、結婚したのは私です。」

そうしている間に、事務員の女の子がお茶を運んできた。
きっと団長のバカでかい声が聞こえたのだろう。
俺の顔をチラチラ見て行く。

「ひゃー。明日は槍でも降るんじゃないか?それとも天変地異?」

俺の結婚は、そこまで驚かれる事か?

「明日の天気は晴れみたいですよ。ところで、結婚休暇の申請もしたいのですが…今も休暇中なので、どうしたら良いか相談したかったのですが…」

とりあえず、レベッカが来てからも少しは一緒に居る時間が欲しい。
彼女だって慣れない家に1人は嫌だろう。

「へぇ~。ということは、本当に結婚したんだな。」

「だから、さっきからそう言ってます。」

「いや、普通に信じられんだろ。お前が青い顔して休みを取って、まだ5日目ぐらいだろ?その間に何があったら、結婚する話になるんだ?しかも、婚約じゃないんだろ?結婚だろ?」

「まぁ、色々ありまして。」
俺は言葉を濁す。

「事情があり、結婚は急ぎましたが、式は半年後に挙げようかと。」

「妊娠でもさせたのか?」
ちょうどお茶を飲もうとしていた俺は、思わず吹き出しそうになった。

「さ、させてませんよ。色々と事情があるんです。事情が!」

「うーん。事情は言えないって事か。まぁ、それはいい。詮索するつもりはない。」
なら、その話は置いといて、休暇の話をしてほしい。

「で、結婚休暇なんですが…」

「ああ、それなら、結婚証明書が受理された日から10日間はとる事が出来るぞ。まぁ、その前の休暇と重なるが、その分はこちらで取り消しの手続きをしておこう。」

「ありがとうございます。では、受理されたら、また申請書を提出に来ます。」

「ああ、何なら郵送で良いぞ。申請書は持って帰れ。」

「はい。ではそうさせていただきます。」

そして俺は残りのお茶を飲み干して、席を立つ。

「衝撃的すぎて忘れていたが、改めて結婚おめでとう。一度奥さんを連れて来いよ。」
と手を出された。

俺は、団長の分厚い手を握り、

「ありがとうございます。いずれ紹介させていただきます。」
と言って俺は部屋を退出した。



フィリップ殿下にも報告しようかと思ったが、旅の装いそのままだ。
埃っぽい格好で会うのも憚られる。
もう時刻も遅くなったし、明日出直そうと考えて騎士団の詰所から出ようとすると

「おい!レオナルド!」
と大きな声が聞こえる。
この声は間違いない。俺の主、フィリップ殿下だ。
振り向くと殿下は走ってこちらへ向かって来ていた。

「殿下。お疲れ様でございます。このような格好で申し訳ございません。」
と頭を下げる。

「挨拶はいい。お前に話がある。ちょっと俺の執務室まで来い。」と言われた。
断る事は出来ない。俺は殿下の後に着いて行く。

部屋に入るなり殿下は

「さっき、お前の結婚証明書が提出されたと聞いて、慌てて書類を確認したんだが、あれは何かの冗談か?」

「冗談ではありません。れっきとした結婚証明書ですよ。」
みんな俺をなんだと思っているんだろう。

「冗談じゃないんだな。それに相手はあのレベッカ・コッカス嬢で間違いないか?」

殿下の言い方が引っ掛かる。


あのってどの?
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