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第21話
しおりを挟む「でも…結局はルードリヒ殿下が立太子されました。結果として我が国でもそれは周知されておりますが…理由を伺っても?」
と私が言えば、
「もちろんです。僕に都合の悪いことは何一つありませんから。
父が理由を表に出したがらないのは、ヘリッジ公爵を次期国王に…と考えていたからに他なりません。
ヘリッジ公爵は…野心家でしてね。新しい事業に手を出しては失敗を重ねてきました。
確か、ラインハルト王国のサーチェス公爵の御長女でいらっしゃるエリザベート夫人の持参金も既に借金の補填にとあてがわれておりましたしね。
それでも彼の暴走は止まらず…結局脱税まで仕出かす始末。
野心家の彼の目指す所は国王であったようですが、それを僕が父に暴露したのです。
証拠を掴むまで少し時間が掛かってしまいましたが…」
と言うルードリヒ殿下に、
「それでは…エリザベート様は…ミラス王国でいかがお過ごしだったのでしょう?私は…陛下とエリザベート様の婚約解消以来、彼女には1度しかお会いしていなくて…」
と私は訊ねてみたのだった。
別に心配な訳ではないが…いや、やはり少し心配だったのかもしれない。
「元々、エリザベート夫人は持参金目当てで結婚された様なものだったのではないか…と僕は考えています。
我が国はお恥ずかしながら、側室も愛人も貴族であればウェルカムな所があります。
ヘリッジ公爵も多分にもれず、愛人がおりました。
夜会でもエリザベート夫人を放って愛人と過ごす事も多く、エリザベート夫人は随分と悔しい思いをした筈です。
僕の婚約者のリンダはそんなエリザベート夫人を憐れに思い、嫁いできた当初はなるべく声を掛けるようにしていたのですが…」
と、そこまで言うと、何故かルードリヒ殿下は言い淀んだ。
チラリと私と…そして陛下の顔を見る。何だか言いにくそうだ。
陛下は、
「エリザベート夫人が私を良く思っていない事は百も承知。例え彼女が私を罵っていたとしても甘んじてそれを受け入れなければならない程に、私は彼女に悪いことをした。
遠慮なく言って貰って構わない」
と言う陛下に、ルードリヒ殿下は、
「あの…エリザベート夫人が罵っていたのは…陛下ではなく…その…クロエ妃陛下の方で…」
と言うルードリヒ殿下に、私はつい、
「へ?私?」
とすっとんきょうな声を上げた。
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