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第25話
しおりを挟む「おっと…クロエ妃陛下。お戻りでしたか」
ルードリヒ殿下が帰国して3日。私達の生活は元通りだ。通常、通常。
今日は町の人が気軽に通える治療院の開院祝いに参加してきた。
実はこの治療院、ユニ先生のお弟子さんの医師が開院するという事で、非公式ながらも私も参加したという訳だ。
町の人々は驚いていたが、私が顔を出す事でこの治療院の信頼度が上がるのなら、利用してもらって構わない。
その代り、絶対に町の人々の役に立ってもらわなければ困るのだが。
そこから戻って来た私は、廊下でセドリックに会った。
「ええ。治療院の開院祝いに行ってきたの。立派な医院だったわ。町の人達に『かかりつけ医』が居る事が重要なの。少しでも不調を認めた時、いつもとの違いがすぐに分かって貰えるもの」
と言う私に、
「確かに。ユニ先生のお墨付きですしね。これから町の人々の為に尽力していただけると良いですね。…ところで、妃陛下は今、お戻りで?」
というセドリック。
ん?質問の意味がわからない。
「そうよ?今、帰ってきたばかり。今から陛下に報告へ…」
と私が言いかけると、
「まぁ、妃陛下なら大丈夫でしょうが…陛下は今、すこぶる機嫌が悪くて。誰も近寄らないんですよ」
とセドリックが肩を竦めた。
「陛下が?今朝は普通だったわよ?」
朝から私を膝に乗せたまま朝食を食べていた。最近の朝食スタイルはいつもそうだ。まごうことなき、バカップルである。
「実は…先程サーチェス公爵と…エリザベート様がおみえになりまして…」
「え?面会の要請なんて見ていないわ」
「陛下も今朝それを確認したばかりで。どうしても緊急で会いたいと言うんで、許可したんですがね…」
とため息をつくセドリック。
「何があったの?」
と私が聞いても、
「私の口から聞くよりも、陛下の口から聞いた方が良いでしょう。まぁ、妃陛下なら部屋に入れるでしょうし」
とセドリックが言う。
…よっぽど陛下の機嫌は悪いらしい。いつも基本穏やかな人なだけに、怒ると怖い。
私はセドリックと別れ陛下の執務室へ向かった。
廊下の護衛も私の姿に、
「妃陛下。今、陛下は…」
と口ごもる。
「機嫌が悪いのでしょう?大丈夫よ。お話を聞くだけだから」
と私は微笑んだ。
「では…。私達が声を掛けても『うるさい!今は誰とも話したくない』と仰るので…」
と護衛は困った顔をした。
私は彼らの意図を汲んで、私から扉へ声をかける。
「陛下?クロエでございます。只今戻りました。少しお話をさせていただいても?」
「……………入れ」
中々間が長かったが、入室の許可を得た。
私は心配そうな護衛に頷くと、部屋へ入って行った。もちろん1人だけで。
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