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第13話
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”アカネコ”とクサの眼の前に”アオカラス”が駆けつける。その右手には、干からびた黒い5本指の鉤爪のようなものを持っている。
「”取り除け”!」
”アオカラス”の呪文に答えるように、5本指の鉤爪はミシミシと動き出し……クサの心臓に向かって一直線に伸び、突き刺さった。
「グ……」
鉤爪はクサの心臓をえぐるように動き、そして埋め込まれた骨を引き抜いた。クサはそのまま倒れ込み、もはや動かなくなった。
「……ふう」
”アカネコ”の懐から、毛の生えた黒い棒がこぼれ落ちて砕け散ると、変身魔法が解除される。
「見たか”アカネコ”、親子揃いのサキを買うなら、ヒラ付きの物を買うべきなのだよ。バラで買うから養子物を掴まされるんだ」
”アオカラス”は干からびた黒い5本指の鉤爪―人間の掌の燻製―を、”アカネコ”に見せびらかすように得意げに振ってみせる。
「だって、高いじゃないですか」
「ふん、必要経費だと割り切れ。そもそも、お前だってクサの捕獲に失敗しなければ、ケモノを使わなくて済んだんだぞ?」
”アカネコ”は、毛の生えた黒い棒―猫の足―が砕け散ったことを思い出し、計算する。金に関する高速演算は、即座にヒラ付きを買わなかったことの損失を算出した。
「ぐぬぬ……」
それ見たことかといいたげな顔の”アオカラス”を見て、”アカネコ”は更に唸った。
「……ぐぬぅ」
”アカネコ”の損失はまるで他人事のように、”アオカラス”はクサに転送魔法の印を刻む。
「ま、ムシは取り逃してしまったが、手土産は増えたな」
「まあ、そうですね」
”アカネコ”はクサを見る。ムシの魔法が説かれた今、もはやクサただの死体となった。正式な手続きを踏んで魔術協会に持ち帰れば、それなりの報酬を得られるだろう。
ムシにそそのかされたクサを救えなかったことは悔やまれるべきことだが、しかし、ムシに落ちなかっただけマシだとも言えよう。それに、”アカネコ”にとっては美味しい収入源だ。
「これでケモノを書い直す費用も……」
「多少は足しになるだろうな」
仕事を終えた”アカネコ”と”アオカラス”は、早速皮算用を始めた。二人は、クサを魔道具にすることに対する罪悪感を一切持たない。少なくとも、そう見える。
死人に口なし魔力あり。
黒い魔術は死を喰らう。
「”取り除け”!」
”アオカラス”の呪文に答えるように、5本指の鉤爪はミシミシと動き出し……クサの心臓に向かって一直線に伸び、突き刺さった。
「グ……」
鉤爪はクサの心臓をえぐるように動き、そして埋め込まれた骨を引き抜いた。クサはそのまま倒れ込み、もはや動かなくなった。
「……ふう」
”アカネコ”の懐から、毛の生えた黒い棒がこぼれ落ちて砕け散ると、変身魔法が解除される。
「見たか”アカネコ”、親子揃いのサキを買うなら、ヒラ付きの物を買うべきなのだよ。バラで買うから養子物を掴まされるんだ」
”アオカラス”は干からびた黒い5本指の鉤爪―人間の掌の燻製―を、”アカネコ”に見せびらかすように得意げに振ってみせる。
「だって、高いじゃないですか」
「ふん、必要経費だと割り切れ。そもそも、お前だってクサの捕獲に失敗しなければ、ケモノを使わなくて済んだんだぞ?」
”アカネコ”は、毛の生えた黒い棒―猫の足―が砕け散ったことを思い出し、計算する。金に関する高速演算は、即座にヒラ付きを買わなかったことの損失を算出した。
「ぐぬぬ……」
それ見たことかといいたげな顔の”アオカラス”を見て、”アカネコ”は更に唸った。
「……ぐぬぅ」
”アカネコ”の損失はまるで他人事のように、”アオカラス”はクサに転送魔法の印を刻む。
「ま、ムシは取り逃してしまったが、手土産は増えたな」
「まあ、そうですね」
”アカネコ”はクサを見る。ムシの魔法が説かれた今、もはやクサただの死体となった。正式な手続きを踏んで魔術協会に持ち帰れば、それなりの報酬を得られるだろう。
ムシにそそのかされたクサを救えなかったことは悔やまれるべきことだが、しかし、ムシに落ちなかっただけマシだとも言えよう。それに、”アカネコ”にとっては美味しい収入源だ。
「これでケモノを書い直す費用も……」
「多少は足しになるだろうな」
仕事を終えた”アカネコ”と”アオカラス”は、早速皮算用を始めた。二人は、クサを魔道具にすることに対する罪悪感を一切持たない。少なくとも、そう見える。
死人に口なし魔力あり。
黒い魔術は死を喰らう。
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