ご存知!エルフ三人娘

デバスズメ

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元祖vs本家!?ポテサラ農場の決闘!!

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「畑が見えてきたってことは、そろそろ町につくな」
街道を歩く三人のエルフ達。先頭を歩くのは、バンブーアーマーに身を包み、胸にサラシを巻いた、バンブーエルフのメンマだ。

「そうだねー」
呑気にニコニコ歩くのは、簡素な貫頭衣を着た、金髪のクソバカエルフ、ハカセ。クソバカエルフなんて種族名だが、"森の賢者"の異名を持つ、ずば抜けた知能の持ち主だ。

「ここらへんはモンスターも少ないし、平和だゆ」
最後尾を歩く、ずんぐりとしたエルフは、ポテサラエルフのポテチ。ミスリル銀の保存箱を背負っており、それは魔法によって、中には見た目以上の荷物がぎっしり詰まっている。

「んでも、ちょっとおかしいゆね」
畑を見渡すポテチが疑問を感じる。
「ん?なにがおかしいんだ?」
「この畑、聞いてた話と違ゆ。もうすぐ収穫なのに、ポテトの葉っぱが少なすぎゆ」
ポテサラエルフは顎の力が弱く、ポテトサラダを主食とする農耕エルフだ。そのため、畑の異変にはいち早く気がつく。

「そしたら、届け物のついでに調査でもしてみるか」
「さんせーい」
メンマの提案にハカセが二つ返事で答える。彼女たち三人は、ヒューマンならざる旅エルフである。旅エルフは閉鎖的なエルフの集落を出て、他の旅エルフと協力しながら世界の見聞を広める。

旅エルフには、大きな目的がある。それは、ヒューマンを助けることで、自分たちが友好的なエルフ族だと知ってもらうことだ。旅エルフの文化が広まって以降、エルフの村焼き事件はほとんど発生していない。

「ポテチも早く話を聞きたいゆ」
「ああ、そうだな」
三人は町に急ごうとした。だが、その時だ!
「うわー!助けてくれー!」
右畑の奥の森から男の悲鳴!
「やべえ!行くぞ!」
三人は森に急ごうとした。だが、その時だ!
「キャー!助けてー!」
左畑の奥の森から女の悲鳴!

「ええい!アタイは男の方に行く!ハカセは女の方を!ポテチは町に行って報告だ!」
とっさの状況でもメンマは冷静に判断し、的確な指示を出す。
「ほいほーい!」
「わかったゆ!」
三人はそれぞれの方向に急ぐ!

「うおおー!誰かー!」
メンマの向かった森では、男が巨大イノシシに追われていた。
「モンスターか!だが、アタイの敵じゃねえな!」
メンマは腰のバンブーを手に取り、魔力で強化!バンブーは魔力をまとった竹光となりイノシシを切り裂く!
「ボアアアアアッ!」

一方その頃!
「助けてー!」
ハカセの向かった森では、女が巨大イノシシに追われていた。
「助けるよー!」
メンマは全身に魔力を込めてイノシシに突っ込む。クソバカエルフがクソバカエルフと呼ばれる理由はいくつかあるが、彼らはとにかく魔力の扱いが下手で、単純な放出や強化くらいしかできない。

しかし、魔力の扱いの下手さを補うほどの、膨大な魔力を持っている。それこそ、魔力を込めたパンチが、一撃必殺の打撃になるほどの。
「おりゃー!」
メンマの右魔力アッパーが炸裂!
「ボアアアアア!」
巨大イノシシは宙を舞ってそのまま墜落!

「だいじょうぶだいじょぶ?」
ハカセはニコニコして、女に声をかける。
「は、はい。ありがとうございます」
「じー……」
女の無事を確認したハカセは、彼女の顔をじっと見る。
「なにか、わけあり?」
「えっ……!」
クソバカエルフの叡智によって事情を見抜かれ、女が驚く。
「実は……」

一方その頃。
「すごい、あのイノシシを一撃で……」
「なあに、あれくらい。バンブー林の巨大パンダにくらべりゃあ、大したことねえよ」
メンマはそう言うが、どこか得意げにも見える。

「あの、あなたはもしや、旅エルフの方では」
「ああ、先に町に行ってる仲間もいるぜ」
その言葉を聞いた男は、申し訳無さそうに言葉を返す。
「助けていただいてありがたいのですが、皆さんを満足におもてなしするのは難しいかもしれません」
「ん?何か訳ありって感じか?」
「実は……」

----------

それから少し経過して、三人は無事に町についたのだが……。
「で、なんだこの状況は……」
「ポテチも困ってゆ……」
「元祖と本家、だって!おもしろそう!」
三人はテーブルに座らせられており、目の前には二種類のポテサラが置かれていた。

「私のポテサラこそ、ポテサラエルフがこの地にもたらした、元祖ポテサラ。元祖の方が美味しいにきまっているでしょう」
シェフ帽子をかぶった男が胸を張る。
「てやんでい!俺っちのポテサラこそ本家ポテサラよ!旅エルフの方々だって、こっちの方が気に入るに決まってらぁ!」
鉢巻の男が張り合う。

「(聞いてた話より厄介なことになってねぇか……)」
「(んゆ……)」
「(どうしよっかー……)」
三人はヒソヒソ声で会話する。ハカセとメンマは、助けた人から事の成り行きをそれぞれ聞いており、ポテチにも軽く話していた。なんでも、二軒のポテサラ屋は、元々は仲が良かったらしい。

メンマとハカセが助けた二人は、それぞれポテサラ屋の跡取りで、今年結婚する予定だった。両家もめでたく祝おうとしていた。しかし、ひと月ほど前から険悪な雰囲気になってしまった。原因は、ポテトの不作だ。

今年はなぜかポテトが不作で、収穫前だというのに葉っぱがほとんど出ていない。こんなことは初めてで、原因不明だった。そのうち、段々と相手の手入れが悪かっただの言い合いが加速し、いつの間にか、道を挟んだ二軒のポテサラ屋は完全に対立してしまっていたのだ。

「てやんでぃ!旅エルフの方々!どっちが旨いか、白黒はっきり付けてくんな!」
「そう急かさずとも、私のポテサラの方が美味しいことはわかりきっているでしょう」
「なんだとぉ!?」
白熱する元祖店長と本家店長。

「まあまあ!わかったよ!食えば良いんだろ!食えば!」
メンマが仲裁に入り、ハカセとポテチに目配せをする。
(とりあえずこの場は穏便にすませよう)
(ほーい)
(んゆ)
三人はアイコンタクトで会話し、ポテサラを食べる。

だが、穏便に済ませようといったメンマが、一番最初に驚いた。
「うおお!なんだこれ!」
メンマは本家ポテサラをモリモリ食べる。
「ゴロゴロとしたポテトに大切りの野菜!アタイはこのポテサラ好きだぜ!」
普段からバンブーを食べているバンブーエルフのメンマは、歯ごたえのある食感に抗えなかった。

「特に、このカリカリした酸っぱいやつ!厚切りのハムとホクホクのポテトで飽きそうになった口をさっぱりとしてくれる嬉しい食感!たまんねえなァ!」
「フフフ。それこそ本家ポテサラの秘密、カリカリポテトです」
「カリカリポテト……」
ポテチは聞いたことのないポテトに耳を傾ける。

「はい。コインほどの大きさのポテトを酢漬けにしたもので、食感と酸味のアクセントが素晴らしい。これこそ、硬いものも食べるヒューマンのポテサラ、すなわち、この町の本家ポテサラなのですよ!」
「なゆほど……」
ポテチは何か思うことがあるようだが、その発声はハカセの声にかき消された。

「うわー!やわらかくて、トロッとしてる!」
ハカセは、ほとんどペースト状になったポテサラを食べて感動する。
「でもでも、野菜の味もするし、ハムの味もする!なんでなんで!?」
好奇心旺盛なクソバカエルフは、未知の味に抗えなかった。

「ヘヘッ!すべての食材を柔らかくなるまで蒸してマッシュするんでぃ!もちろん、ハムもほぐれるまで茹でて、茹で汁を出汁に混ぜ込んで無駄にしねぇ!これこそが、顎の力が弱いポテサラエルフの、元祖ポテサラだってもんでぃ!てやんでぃ!」
元祖店主が威張るように解説する。

「それにそれに!なんだかいっぱい食べられちゃう!なんでなんで!?」
ハカセは元祖ポテサラをパクパク食べながら聞く。
「ヘヘッ!そりゃあおめえ、シワシワポテトのおかげってもんでぃ!」
「シワシワポテト……」
ポテチは聞いたことのないポテトに耳を傾ける。

「おうよ。小せぇポテトをな、塩漬けと天日干しの繰り返しで、シワシワになるまで柔らかくしてな、それをすりつぶして混ぜてるんでぃ。これが、すべてが柔らかい、ポテサラエルフの元祖ポテサラでぃ!」
「なゆほど……」
ポテチは何か思うことがあるようだが、その発声は店主たちの声にかき消された。

「それで、あんたはどっちが旨いと思うんでぃ?当然、ポテサラエルフさんなら、俺っちの元祖ポテサラの方が旨いよな!」
「なんのなんの!旅エルフの方ならば、ヒューマンの文化もわかっていただけるはずです。本家ポテサラを評価してくださるはず」
「んゆ……」

ポテチは二人の圧力に押されて、双方のポテサラを食べる。だが……。
「ポテチは、どっちのポテサラも、あんまり美味しくないゆ……」
「な、」
「な、」
「「なんだってー!?」」

二人の店主が驚愕する中、ポテチは両方のポテサラをすごい早さで食べ終え、席を立つ。
「ちょ、どこへ行くってんでぃ!?」
「どこって、畑だゆ」
「畑に行って、何をしようというのです?」

慌てる店主二人を尻目に、ポテチは町の外の畑に向かう。
「お、おい!ポテチ!」
ポテチを追いかけようとするメンマを、ハカセが止める。
「だいじょうぶ。ここはポテチに任せよ?」
「……ああ、ハカセがそう言うなら、そうするしかねぇな」
メンマはニヤリと笑って答える。

クソバカエルフは知能が極めて高い。しかし、それゆえに、過程や前提をすっ飛ばした会話をする。その結果、ヒューマンとは意思疎通が難しく、明るすぎる正確も相まって、話が通じないクソバカなエルフというイメージを与えてしまったのが、はるか昔。今でも種族名として残っているのだ。

しかし、ハカセと長く一緒に旅をしてきたメンマには、ハカセの言葉は頼もしい。よくわからないが、ハカセが大丈夫だと言ったなら、大抵のことは大丈夫なのだ(たまにひどい目にあったりもするが)。今回も、メンマはハカセの言葉を信じた。

「さあさあ、それではハカセ様は我々の宿へ。古来より伝わるポテサラエルフの元祖ポテサラについて、語り合いましょう。」
「メンマの姉貴はこっちの宿に来てくれてってもんでぃ!歯ごたえのあるヒューマン向けの本家ポテサラをもっと食ってもらわねぇとな!」

「おいおい!宿は別かよ!」
「メンマ、また明日ねー」
慌てるメンマに対して、ハカセは呑気だ。二人はそれぞれ、道を挟んで向かい合った宿屋へと連れ去られていった。

----------

……時刻は夜。
「こんなことに巻き込んでしまい、申し訳ございません……」
ハカセの泊まる部屋に、元祖ポテサラ屋跡取りの男が挨拶に来ていた。
「いいよいいよ。気にしない、気にしない」
ハカセはニコニコしている。

「はあ……。ですが、仲間の方とは離れ離れに」
「それはね、だいじょーぶ!だって、明日になれば、また会えるもん!それに、メンマは強いし」
ハカセは自信に満ちた声で答える。
「はは、確かに、そのとおりですね。メンマさんは、あの巨大なイノシシを一撃で倒したくらいですから」

「え?そっちもイノシシだったの?」
ハカセは男に問う。
「はい。もしかして、あの娘の方にも大きなイノシシが……」
「そうそう。ってことは……なるほど」
ハカセのクソバカエルフ超速演算頭脳が、一つの回答を導き出した。畑の不作が2匹のイノシシモンスターだったとすると、どう計算してもモンスターが足りない。つまり、まだ倒すべきモンスターが、残っているのだ。

「明日は頑張らないといけないから、おやすみー!」
ハカセはベッドに転がり込むように眠った。
「お、おやすみなさいませ……」
いきなりの入眠に驚きつつも、男は部屋を後にした。

一方その頃、メンマも同じように、本家ポテサラ屋の跡継ぎ女と会話をしていた。
「このようなことに巻き込んでしまい、申し訳ございません」
「なあに、良いってことよ。どうせ明日は三人揃って大仕事だ。今夜はゆっくり休ませてもらうぜ」
メンマは明日のことを考えて横になる。

「明日、ですか?」
「ああ、アタイは難しいことはわからないけど、ハカセはいつもどおりニコニコしてるし、ポテチもいつも通りポテトのことばっかり考えてる。だったら、アタイもいつも通りのことを考えれば良いってことさ」
メンマはニヤリと笑って答える。

「いつも通り、ですか……」
「ああ、あんたもいつも通り考えてみたらどうだ?アイツと結婚したいって、いつもお互いに思ってるなら、堂々と言っちまえよ」
メンマの竹を割ったようなストレートなアドバイス。だが、それが逆に、両家の争いに巻き込まれて雁字搦めになっていた心にひびいいた。

「ほんじゃ、アタイは寝るぜ。明日は忙しくなりそうだからな」
そう言うとメンマは目を閉じて即座に眠った。メンマもやはり、周辺に他のモンスターが潜んでいる可能性を、バンブーエルフのカンで感じ取っていた。
「……はい、おやすみなさいませ」
女はお辞儀をして、部屋を後にした。

一方その頃、ポテチは畑を一通り調べて、一つの確信を得ながら寝ようとしていた。
(間違いないゆ。この畑、魔力の淀みがあゆ……)
魔力の淀み、それはすなわち、モンスターである。その姿は見えなくとも、ポテチは気配を感じ取っていた。

(今日は疲れたから、ここで寝ゆ)
ポテチは畑の柔らかい土にズブズブと埋まり、スヤスヤと眠りにつく。ポテサラエルフは土に埋まって寝ることで、大地と魔力の循環を行い、休息するのだ。

----------

……そして翌日の昼頃。ポテチに呼ばれたメンマとハカセは、ポテト畑にやってきていた。
「この畑、養分が全然足りてないように見えゆけど、実際は、養分を奪ってるモンスターがいゆね」
「やっぱりな。で、アタイ達がどうにかしようってわけだな?」
「そういうことだゆ」

「よっしゃ!やってやるぜ!」
メンマは武器を構える。
「でもでも、そのモンスターは?」
ハカセが言う通り、見渡す限り平和な畑だ。モンスターがいそうな気配もない。
「それはこれから、掘り起こすんだゆ」

ポテチは両手で杖を構える。それはポテトを潰す道具に似ていた。
「ムニャムニャ、ムニャムニャ……」
ポテチはヒューマンには聞き取れない声で呪文を唱える。ポテサラエルフの魔法は大きく分けて二種類ある。そのうち1つが、土壌に影響する魔法だ。

この魔法は本来、ポテトを急速成長させたり、肥料となる有機物を素早く分解するために使われる。だが、今回は、地中に潜むモンスターを強引に呼び出すための餌として、畑に魔力を流しているのだ。

「ムニャムニャ……ムニャムニャ……」
ポテチの呪文が大地に魔力を巡らせる。そして、その成果は、地響きとなって現れた!
ズゴゴゴゴゴ!
「な、なんだ!?」
メンマは慌てて武器を構える。
「来たよ来たよ!」
ハカセも全身に魔力をみなぎらせる。そして現れたのは……。

「ジャガアアアアアアア!!」
巨大なポテトモンスターだ!
「げええ!なんだありゃ!」
驚くメンマ!無理もない!

「慌てんなゆ」
ポテチはポテサラ杖を構える。
「しょせんはポテトだゆ。いつもみたいにポテサラにすゆ」

「そうそう!いつもどーり、やっつけちゃえばいーんだよ!」
ハカセも全身に魔力を纏い、臨戦態勢だ。目に見えるほどの強力な魔力が、ハカセの全身にほとばしる!

「ハハ、そういうことなら、アタイもやったるか」
バンブーウェポンを構えたメンマが吠える!三エルフの戦闘体制が整った!

「ジャガアア!!」
巨大ポテトモンスターの叩きつけ!
「ハッ!そんなもん!」
メンマの竹光一閃!鍛え抜かれた刀を凌駕する切れ味の刃が、ポテトモンスターの腕を一刀両断!
「ハッハァ!見たか!」
だが!

「だめだゆ!」
「え?……うわあ!」
ポテチの助言は時すでに遅し。メンマが切断したポテト腕は、新たな小さいポテトモンスターになっているではないか!
「ポテトは切っても増えゆ!潰すゆ!」

「えーい!」
メンマの斬撃によって増殖したミニポテトモンスターを、ハカセが粉砕!
「助かったぜ!」
「でもでも、あの大きいのは潰せない!」
ハカセの魔力パンチは威力絶大だが、家ほどもあろうかというポテトモンスターを攻撃しても、細かい破片にするのが精一杯だ。

「だったら、どうすりゃいいんだ!?」
「どうしよどうしよ!」
勝機が見えず慌てるメンマとハカセ。
「……バラバラにてきないゆなら、丸ごとポテサラにすゆ。メンマ、ハカセ、作戦Bで行くゆ」
ポテチの言葉に、ハカセはニヤリと笑う。
「了解だぜ!ハカセ!魔力は頼んだぞ!」
「ほいほーい!」

「ジャガアア!」
相談する三人に、ポテトモンスターの巨腕が振り下ろされる!
「当たるかよ!」
「ほいゆ!」
「わっほーい!」
三者三様の掛け声で散開!そのままポテチは小柄な体型を生かしてポテトモンスターの足元を走り回る。

「ジャガ!ジャガ!ジャガア!」
ポテトモンスターはポテチを仕留めようと、連続で拳を振り下ろす。しかし、ポテチには当たらない。当たったように見えても、地面に潜って攻撃を回避しているのだ!

ポテチがポテトモンスターの気を引いている間に、メンマは呼吸を整え、魔法の準備をする。バンブーエルフが用いる魔法は大きく分けて二種類。一つはバンブーに魔力を込めて成長変形させる魔法。そしてもう一つが、ゴシキノタンザクと呼ばれる札を用いた魔法だ。

今回メンマが使うのは後者であり、札の色に応じた魔法が発動する。メンマは青い札を手にして、呪文を唱える!
「ササノハサラサラゴシキノタンザク!」
青い札は活性の札!突如ポテトモンスターの周囲でバンブーが急速成長!強靭なバンブーの檻が完成した!

「ジャガアアアア!!」
ポテトモンスターは暴れるが、鋼鉄の数倍の強度を持ったバンブー檻を破ることはできない!ここから赤の符で火を放てばトドメを刺せるが、メンマには致命的な弱点があった。札に魔力を込めるのが、とんでもなく苦手なのだ。

このままでは、閉じ込めた良いものの、メンマ一人ではどうしようもでない。……だが、今はたよてる仲間がいる!
「よーし、ハカセ、いつもの魔力頼むぜ」
「ほいほーい」
そう、今のメンマには、魔力強化が大得意なクソバカエルフが仲間にいる!
「来たぜ来たぜ!」
メンマは札に滾る魔力を感じ、呪文を唱える!

「ササノハサラサラゴシキノタンザク!」
赤の札から炎が迸り、ポテトモンスターを閉じ込めるバンブー檻に着火!炎上!

「ジャガアアアアアア!!!!!!!」

「やったぜ!」
「やったやったー!」
「丸焼きだゆ!」
三人はハイタッチし、焼けゆくポテトモンスターを見る。メンマの炎魔法により、淀んだ魔力によるモンスター化は解除され、ただの巨大なポテトとなっていた。中までじっくり火が通るには、だいぶ時間がかかるだろう。

……それから一晩中、巨大なポテトはじっくりと焼かれたのであった。

----------

……そして翌日。
「野菜切っちゃうぞー」
「ハムはこんなもんでいいか」
「んゆ!ちょうどいいゆ!」
昨夜じっくり焼いたポテトモンスターをベースに、三人はポテサラを作っていた。

そして、そこには町の人々も集まっていた。
「てやんでぃ!本当に美味いポテサラを食わしてくれるってんで、台所を貸してやってんでぃ!まずいもん食わしたら、ポテサラエルフだってタダじゃ置かねえでぃ!」
本家ポテサラ屋の店主が息巻く。

「そうですよ。ポテサラエルフから継承した元祖ポテサラに勝る味なのか、確かめさせてもらいましょう」
元祖ポテサラ店主も息巻く。

「おまたせしたゆ。そんなに慌てなくても、全部食べさせてあげゆ」
ポテチは、なんと四種類のポテサラをテーブルに並べた。
「これは……」
「どういうことなんでぃ……」
ポテサラエルフが作るポテサラこそが、唯一のポテサラだと考えていた店主二人は、言葉に詰まる。

「百聞は一食に如かずと言ゆ。どんどん食べゆ」
ポテチの言葉を聞き、二人の店主はポテサラを食べ比べる。
「……む!」
「……こりゃあ!」
二人は顔を見合わせた直後、すぐさまポテサラをバクバクと食べる。

「極限までマッシュされたポテトのなめらかな舌触りの中に、爽やかなカリカリポテトの咀嚼音が効いてやがる!それにこの野菜はどうだ?シャキシャキした野菜の瑞々しさの、柔らかく煮込んだハムと相性の良さ!」
元祖ポテサラ屋の店主が舌を巻く。

「だが、こちらも素晴らしい。ホクホクとした荒いマッシュのポテトに絡むジャムのようなシワシワポテトのソース。このソースは細かくすり潰した野菜も入っているな?厚切りで焦げ目の付いたハムとの相性も良い!」
本家ポテサラ屋の店主も舌を巻く。

「そうだゆそうだゆ?他の2つも、食感を変えたり、味を変えたりした、ポテチの故郷に伝わるポテサラだゆ」
「「し、しかし、どれが真のポテサラなのか……」」
元祖店主と本家店主は声を合わせて困惑する。
「まだそんなことも分からないゆか?」
ポテチはため息を付いて、二人を見据える。

「ポテサラに、元祖も本家もないんだゆ。そもそも、カリカリポテトとシワシワポテトは、材料は同じカチカチポテトなんだゆ」
「「えー!?」」

「カチカチポテトを酢漬けにしたのがカリカリポテト、塩漬けにして天日干ししたのがシワシワポテトなんだゆ。ポテサラの材料の違いもわからず、よく元祖だの本家だの、威張ってたもんだゆ」
「「す、すみません……」」
二人の店主は頭が上がらない。

「それに、ポテトモンスターが出たのは、畑の管理が悪かったからだゆ。それに気づいてたのは、あの二人だけだったゆ」
ポテチは両家の跡取りを指差す。
「……はい。二人で考えて、ポテトの連作障害が原因だということはわかったのですが」
「こんな状況で話しても信じてもらえないと思って……」

「……ああ!そういうことですか!」
本家店主が何かを思い出す。
「なんでぃ藪から棒に?」
「ポテサラエルフの言い伝えですよ。『ポテトは続けて育ててはならぬ。他の野菜を挟んで育てよ』という」
「ああ!思い出した!あれか!」
元祖店主もハッとする。

「ポテトの連作は、収穫量の激減だけじゃすまないゆ。今回みたいに、魔力の淀みからモンスターが生まれることもあゆ。だから、ポテト栽培で一番気をつけないといけないことだゆ」
ポテチは胸を張って言う。

「それじゃあ、今年の不作は、ポテトの収穫量を増やそうとして、連作を推し進めた、お互いに悪かったということですかね」
「そうみてぇだな。しかも、連作を止めようとしてくれていた娘夫婦の言うことも聞かずにな」

「夫婦って……」
「ああ、本家だの元祖だの細けえぇことは、今日限りだ!これからは一丸となってポテサラと町を盛り上げていこうじゃねぇか!」
「ええ、私もそう思います。共に良きポテサラと町を作っていきましょう!」
本家店主と元祖店主が固い握手!町民の拍手が鳴り響く!

「これにて円満解決ってやつだな」
「そうだねそうだね!」
「んゆー」
三人は顔を見合わせて笑う。

----------

……それから数日後。
「いやー、すっかり世話になっちまったな」
ポテサラの町を旅立った三人は、次なる旅へと歩みを進める。

「ちょっと名残惜しいゆけど、ポテサラいっぱい食べられて満足したゆ」
ポテチはあの後、様々なポテサラのレシピを教え、住民から大変感謝されていた。

「さあさあ、次の町が待ってるよ!歩こう歩こう!」
どんなときでもお気楽なメンマがずんずん先に進む。

「よっしゃあ!次の町まで元気いっぱい出発だ!」
「「おー!!」」
気を取り直したメンマの号令に、二人が元気良く答える。三人の旅は、まだまだ続く!

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