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第6話 戦う紫月ちゃん。
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山本紫月は、一撃で恋に落ちた。
その男は40歳目前の中年。笑顔から滲み出る優しさが、紫月の乙女心をがっちりと掴んだ。
現在のアルバイト先の先輩である彼は、勤務初日から、優しく彼女をフォローしてくれていた。世間話はした事がなかったが、それでも挨拶や業務指示には、思いやりが感じられた。
昔から、惚れっぽい性格なのは自覚している。だが、紫月の期待に答えられる人格者は、これまでいなかった。
そして今日、事件が起きた。
紫月が一目惚れしていた中年「室井剛志」が、彼女を助けてくれたのだ。紫月の目に狂いはなかった。輩に絡まれる彼女を颯爽と助け出した剛志は、まるで王子様だった。
嬉しかった。剛志は一回り以上年齢が上だし、とても相手にされないと諦めていたのだから。思いがけぬ接点が出来た紫月は攻めまくり、溢れる想いを告げた。剛志は紫月の想いを受け入れ、二人は結ばれた。
愛する人の腕の中。幸せに包まれながら、紫月は眠りについた。
次に目覚めた時、紫月は男の胸に顔を埋めていた。引き締まった筋肉。厚い胸板。剛志では無いようだ。
ゲームの世界に来た、と思い当たる。体を起こすと、眠り続ける「大賢者」ファーナスの顔が目に入る。整った顔立ちの美青年だ。
紫月は剛志に想いを告げる前、ファーナスに憧れを抱いていた。剛志には手が届かない。ならばこの仮想現実で、仮初めの恋に落ちてみるのも良いかも知れない。そう思っていた。アニメや漫画の推しキャラに、恋をするように。
共に旅をし、迷宮に挑む中で、紫月は、急激にファーナスへの想いを強めて行った。ゲーム世界ではセラと言う名前の公爵令嬢だ。彼女の生い立ちを面白がり、ファーナスは色々と世話を焼いてくれた。
運命の人。言い過ぎかも知れないが、その時の紫月は、そう思い込む程になっていた。
だが、彼が住まう「シャングリラ城」の一室には、お抱えのメイドが2名いた。彼女たちは、すでにファーナスと体の関係も持っている。そう聞いた訳ではないが、セラの勘は鋭い。彼女たちの雰囲気、そぶり、会話の内容。そういったものを総合し、間違いないと確信している。
この人たちには勝てない。自分が割って入る隙など、無いように思えた。例え仮想現実であっても、憧れなど抱くべきではなかったのだ。
しかし、彼には救ってもらった恩がある。だからせめて、目覚める時まではそばにいよう。そう思った。
(私は、剛志さん一筋で生きていく。もう、絶対に迷ったりしない)
セラは誓いを新たにし、美しい青年の世話を続けた。二人のメイド、レイン、アーリアと共に。
日が暮れて来た。今日もファーナスは目覚めなかった。セラは、今夜も自分が護衛を務めるとメイドたちに告げ、彼女たちを退室させた。
「もう、目覚めてはくださらないのですか? ファーナス様」
多数の医師や魔法使いに原因を調べさせたが、解決の糸口は見えなかった。
こうして彼の看病をしながら、やがて彼の胸の上で眠ってしまう事が、これからも続くのだろうか。
「祝杯あげようって、言ってたじゃないですか......。早く起きないと、一人で飲んじゃいますよ」
セラはファーナスの髪を撫でた。美しい、緑色の髪が、指の間をサラサラと流れた。
その時、強い殺気を背後に感じた。セラは即座に振り返り、飛んできた短剣を指で挟んで止めた。
「何者!」
セラは叫んだ。だが、そこには誰もいなかった。しかしセラにはわかる。姿は見えないが、確かに敵はそこにいるのだ。
「よくオレの存在に気づけたな。褒めてやるぜ女」
口調から察するに男だろう。敵の殺気は横に移動を始めた。セラの隙を伺っているのだ。
セラは油断なく構え、男の殺気を捉え続けた。相手の動きに合わせ、自身は円を書くように足の位置を移動していく。
いつまた短剣が飛んでくるかわからない。おそらく相手は暗殺者。短剣には猛毒が塗ってあるだろう。少しでも傷がつけば命を落とす。
「もう少し簡単に殺れると思ったんだがな。以外とやるなぁ女。隙がねぇ。ちょっと遊んでやるよ」
今まで感じていた殺気が、スーッと消えていく。
セラは一瞬だけ焦ったが、すぐに落ち着きを取り戻して目を閉じた。
スキル「気配察知」。パッシブスキルである「洞察」の上位版だ。意識を集中しないと使えないが、その分細かな殺気や気配も見つける事が出来る。
ーー飛んだ!奴は上だ!
見えないが、おそらく男は天井に張り付いている。そこから放たれた二本の短剣を弾き飛ばし、セラは大気中の魔素を、素早く「気」に変換した。
「気功波!」
両手のひらを合わせて突き出し、「気」の波を撃ち出す。
「うぐぁあああっ!」
気は男に直撃し、天井から落下させる。セラはトドメとばかりに男を蹴り飛ばし、壁に激突させた。男の姿が、スーッと浮かび上がる。全身黒ずくめで、頭と腰からは翼が生えている。魔族だ。しかも男だと思っていたが、女だった。
浅黒い肌に、銀色の髪。切れ長の目。かなり美しい容姿をしている。おまけに......めちゃくちゃ爆乳だった。
(わ、私の方が大きいもん ! 多分......)
セラは自分の胸を見下ろした。限りなく平らで、足元がよく見える。
(いいのよ、仮想世界で負けたって、悔しくなんかない! 現実世界では、負けてないんだから!)
「ぐ......っ」
セラがそんな雑念にとらわれていると、女はがっくりとうなだれ、動かなくなった。手加減したから死ぬ事はないはずだ。捕縛した上で手当てをしてやろう。
「さぁ、洗いざらい吐いてもらうわよ」
セラは空間をタップした。そしてカーソルを移動し、アイテムボックスから捕縛用の縄を取り出す。
女の目の前に立ち、彼女を見下ろした時。セラの背中に激痛が走った。
「何を洗いざらい吐かせるって?」
背後から声がした。セラは全身が痺れ、力が抜けていくのがわかった。がくりと膝をつく。麻痺毒だ。
「お前は遊びがいがありそうだからな。生かして置いてやる。だがファーナスにはそんな甘っちょろい事はしねぇ。さっさと殺せとのご命令なんでな。致死性の毒をたっぷり塗ったこの短剣で、ぶっ刺して終わりだ」
そんな、そんな......! 体が動かない。 助けを呼びたくても声が出ない。なぜ、背後から......。蹴り飛ばした感触は、確かにあったのに。
「ほーら! 刺したぞ! 大賢者ファーナスの最後だ! おー、いいねいいね、顔がドス黒く染まってくぜ! いつ見ても最高だね、この死に様は!」
セラの目から、涙が溢れる。恩人を、守れなかった。ファーナスは、セラを守ってくれたというのに。
「おー、死んだ死んだ。 よし、じゃあお前を回収してお仕舞いだな。楽な仕事だったぜ......あがっ!」
ドサリ、と人が倒れる音がした。
「大丈夫か、セラ。遅くなってすまない。【治療】」
セラの体が、暖かい光に包まれる。動く、体が動く!
セラはすかさず飛び起き、背後を振り返った。そこにはベッドから起き上がったファーナスと、先程の魔族の女が倒れていた。壁に蹴り飛ばしていたはずの女の体は、いつのまにか消えていた。幻覚を見せられていたのかも知れない。
「ファーナス様、ご無事だったんだですか!?」
セラが声を震わせながらそう言うと、ファーナスは衣服の乱れを直しながら立ち上がった。
「ああ。私の体は毒に耐性があってね。致死性の毒でもしばらくは持ちこたえられる。死ぬ寸前のところで意識が戻ったんだ。すかさず魔法で【逆転】を使ってな。肉体の時間を巻き戻したという訳だ。この女は、魔王直属の暗殺部隊の一人だろう。とりあえず今は眠らせているが、あとで色々喋ってもらう」
ファーナスが「拘束」と呟くと、地面から触手のような物が出現して彼女を捉えた。
「怖い思いをさせたな。こんなに事態が進んでいると思わなかった」
ファーナスは、気を失っていたはずだ。なのに、なぜか事態を把握していたような口ぶりだった。大賢者には全てお見通し、という事なのだろう。
「もう。いつもファーナス様は遅いんですよ! 私、凄く心配したんですから! 」
セラは立ち上がり、ファーナスに抱きついた。これは恋愛感情ではない。親愛の情だ。仲間として、無事を喜んでいるだけ。
(だって私には、剛志さんがいるんだから)
セラはファーナスの腕の中で、彼を見上げた。ファーナスは優しく微笑んでいる。やはりどこか、剛志に似ていた。容姿は全く違うが、醸し出す雰囲気が一緒なのだ。
「あの、ファーナス様、おかしな事聞いていいですか?」
「ん? どうした? 何でも聞くがいいぞ」
優しくセラの髪を撫でるファーナス。彼はセラを異性として意識しているのだろうか? もしそうだとしたら、どんなつもりでを撫でてくれるのだろう。
「室井剛志っていう名前に聞き覚えありますか。この辺りでは、聞かない名前ですが」
セラは何気なくそう聞いた。明確な反応を、期待した訳ではなかった。
だが、ファーナスは目を見開いた。確実に知っている人間の表情だった。
「まさか、知ってるんですか? ファーナス様!」
セラの胸が高鳴った。まさか、まさか......!
「君には叶わないな」
彼はそう言って笑った。
「室井剛志は、俺だよ。紫月ちゃん」
ファーナスはセラを抱きしめ、彼女の唇を優しく塞いだ。
その男は40歳目前の中年。笑顔から滲み出る優しさが、紫月の乙女心をがっちりと掴んだ。
現在のアルバイト先の先輩である彼は、勤務初日から、優しく彼女をフォローしてくれていた。世間話はした事がなかったが、それでも挨拶や業務指示には、思いやりが感じられた。
昔から、惚れっぽい性格なのは自覚している。だが、紫月の期待に答えられる人格者は、これまでいなかった。
そして今日、事件が起きた。
紫月が一目惚れしていた中年「室井剛志」が、彼女を助けてくれたのだ。紫月の目に狂いはなかった。輩に絡まれる彼女を颯爽と助け出した剛志は、まるで王子様だった。
嬉しかった。剛志は一回り以上年齢が上だし、とても相手にされないと諦めていたのだから。思いがけぬ接点が出来た紫月は攻めまくり、溢れる想いを告げた。剛志は紫月の想いを受け入れ、二人は結ばれた。
愛する人の腕の中。幸せに包まれながら、紫月は眠りについた。
次に目覚めた時、紫月は男の胸に顔を埋めていた。引き締まった筋肉。厚い胸板。剛志では無いようだ。
ゲームの世界に来た、と思い当たる。体を起こすと、眠り続ける「大賢者」ファーナスの顔が目に入る。整った顔立ちの美青年だ。
紫月は剛志に想いを告げる前、ファーナスに憧れを抱いていた。剛志には手が届かない。ならばこの仮想現実で、仮初めの恋に落ちてみるのも良いかも知れない。そう思っていた。アニメや漫画の推しキャラに、恋をするように。
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だが、彼が住まう「シャングリラ城」の一室には、お抱えのメイドが2名いた。彼女たちは、すでにファーナスと体の関係も持っている。そう聞いた訳ではないが、セラの勘は鋭い。彼女たちの雰囲気、そぶり、会話の内容。そういったものを総合し、間違いないと確信している。
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日が暮れて来た。今日もファーナスは目覚めなかった。セラは、今夜も自分が護衛を務めるとメイドたちに告げ、彼女たちを退室させた。
「もう、目覚めてはくださらないのですか? ファーナス様」
多数の医師や魔法使いに原因を調べさせたが、解決の糸口は見えなかった。
こうして彼の看病をしながら、やがて彼の胸の上で眠ってしまう事が、これからも続くのだろうか。
「祝杯あげようって、言ってたじゃないですか......。早く起きないと、一人で飲んじゃいますよ」
セラはファーナスの髪を撫でた。美しい、緑色の髪が、指の間をサラサラと流れた。
その時、強い殺気を背後に感じた。セラは即座に振り返り、飛んできた短剣を指で挟んで止めた。
「何者!」
セラは叫んだ。だが、そこには誰もいなかった。しかしセラにはわかる。姿は見えないが、確かに敵はそこにいるのだ。
「よくオレの存在に気づけたな。褒めてやるぜ女」
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セラは油断なく構え、男の殺気を捉え続けた。相手の動きに合わせ、自身は円を書くように足の位置を移動していく。
いつまた短剣が飛んでくるかわからない。おそらく相手は暗殺者。短剣には猛毒が塗ってあるだろう。少しでも傷がつけば命を落とす。
「もう少し簡単に殺れると思ったんだがな。以外とやるなぁ女。隙がねぇ。ちょっと遊んでやるよ」
今まで感じていた殺気が、スーッと消えていく。
セラは一瞬だけ焦ったが、すぐに落ち着きを取り戻して目を閉じた。
スキル「気配察知」。パッシブスキルである「洞察」の上位版だ。意識を集中しないと使えないが、その分細かな殺気や気配も見つける事が出来る。
ーー飛んだ!奴は上だ!
見えないが、おそらく男は天井に張り付いている。そこから放たれた二本の短剣を弾き飛ばし、セラは大気中の魔素を、素早く「気」に変換した。
「気功波!」
両手のひらを合わせて突き出し、「気」の波を撃ち出す。
「うぐぁあああっ!」
気は男に直撃し、天井から落下させる。セラはトドメとばかりに男を蹴り飛ばし、壁に激突させた。男の姿が、スーッと浮かび上がる。全身黒ずくめで、頭と腰からは翼が生えている。魔族だ。しかも男だと思っていたが、女だった。
浅黒い肌に、銀色の髪。切れ長の目。かなり美しい容姿をしている。おまけに......めちゃくちゃ爆乳だった。
(わ、私の方が大きいもん ! 多分......)
セラは自分の胸を見下ろした。限りなく平らで、足元がよく見える。
(いいのよ、仮想世界で負けたって、悔しくなんかない! 現実世界では、負けてないんだから!)
「ぐ......っ」
セラがそんな雑念にとらわれていると、女はがっくりとうなだれ、動かなくなった。手加減したから死ぬ事はないはずだ。捕縛した上で手当てをしてやろう。
「さぁ、洗いざらい吐いてもらうわよ」
セラは空間をタップした。そしてカーソルを移動し、アイテムボックスから捕縛用の縄を取り出す。
女の目の前に立ち、彼女を見下ろした時。セラの背中に激痛が走った。
「何を洗いざらい吐かせるって?」
背後から声がした。セラは全身が痺れ、力が抜けていくのがわかった。がくりと膝をつく。麻痺毒だ。
「お前は遊びがいがありそうだからな。生かして置いてやる。だがファーナスにはそんな甘っちょろい事はしねぇ。さっさと殺せとのご命令なんでな。致死性の毒をたっぷり塗ったこの短剣で、ぶっ刺して終わりだ」
そんな、そんな......! 体が動かない。 助けを呼びたくても声が出ない。なぜ、背後から......。蹴り飛ばした感触は、確かにあったのに。
「ほーら! 刺したぞ! 大賢者ファーナスの最後だ! おー、いいねいいね、顔がドス黒く染まってくぜ! いつ見ても最高だね、この死に様は!」
セラの目から、涙が溢れる。恩人を、守れなかった。ファーナスは、セラを守ってくれたというのに。
「おー、死んだ死んだ。 よし、じゃあお前を回収してお仕舞いだな。楽な仕事だったぜ......あがっ!」
ドサリ、と人が倒れる音がした。
「大丈夫か、セラ。遅くなってすまない。【治療】」
セラの体が、暖かい光に包まれる。動く、体が動く!
セラはすかさず飛び起き、背後を振り返った。そこにはベッドから起き上がったファーナスと、先程の魔族の女が倒れていた。壁に蹴り飛ばしていたはずの女の体は、いつのまにか消えていた。幻覚を見せられていたのかも知れない。
「ファーナス様、ご無事だったんだですか!?」
セラが声を震わせながらそう言うと、ファーナスは衣服の乱れを直しながら立ち上がった。
「ああ。私の体は毒に耐性があってね。致死性の毒でもしばらくは持ちこたえられる。死ぬ寸前のところで意識が戻ったんだ。すかさず魔法で【逆転】を使ってな。肉体の時間を巻き戻したという訳だ。この女は、魔王直属の暗殺部隊の一人だろう。とりあえず今は眠らせているが、あとで色々喋ってもらう」
ファーナスが「拘束」と呟くと、地面から触手のような物が出現して彼女を捉えた。
「怖い思いをさせたな。こんなに事態が進んでいると思わなかった」
ファーナスは、気を失っていたはずだ。なのに、なぜか事態を把握していたような口ぶりだった。大賢者には全てお見通し、という事なのだろう。
「もう。いつもファーナス様は遅いんですよ! 私、凄く心配したんですから! 」
セラは立ち上がり、ファーナスに抱きついた。これは恋愛感情ではない。親愛の情だ。仲間として、無事を喜んでいるだけ。
(だって私には、剛志さんがいるんだから)
セラはファーナスの腕の中で、彼を見上げた。ファーナスは優しく微笑んでいる。やはりどこか、剛志に似ていた。容姿は全く違うが、醸し出す雰囲気が一緒なのだ。
「あの、ファーナス様、おかしな事聞いていいですか?」
「ん? どうした? 何でも聞くがいいぞ」
優しくセラの髪を撫でるファーナス。彼はセラを異性として意識しているのだろうか? もしそうだとしたら、どんなつもりでを撫でてくれるのだろう。
「室井剛志っていう名前に聞き覚えありますか。この辺りでは、聞かない名前ですが」
セラは何気なくそう聞いた。明確な反応を、期待した訳ではなかった。
だが、ファーナスは目を見開いた。確実に知っている人間の表情だった。
「まさか、知ってるんですか? ファーナス様!」
セラの胸が高鳴った。まさか、まさか......!
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