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第三章
1.ヒロインになりたい件
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休み明け。学院へ足を踏み入れると、皆どこか浮き足立っているように感じられた。何か行事でもあったかな? 確認のため、横にいる先輩のアランくんとクロエに聞いてみた。あ、リオ様は珍しくジルベールと一緒に公務で欠席のため、お迎えにアランくんとクロエが来たの・・・・・・リオ様が居なくても、お迎えは強制でした。
「今日って、何か行事なんてあったかしら?」
「いいえ。今日から新学期で、今期の時間割をいただくくらいのはずよ・・・・・・授業も明日からだし」
「そうよね」
何か考え込んで話に入ってこなかったアランくんが、「ああ!」と拳で掌をたたいた。アルバでも、閃いたときのポーズは同じなのね。
「そういえば、本日より転入する者がいると伺っております」
「・・・・・・アランくん。ここ、学院の中」
「あ、そうで――そうだった。まだ慣れま、ぅー・・・・・・慣れねえわ」
ルシールさんとの交代で護衛騎士としてついていても、学院の中では普通に接してとの私のお願いに翻弄されるアランくん。しょうがないよね? 今まで『先輩』として一緒に学院で勉強していたのに、『護衛騎士』として学院に行くと態度変わるなんて・・・・・・淋しいよね?
クスクスと笑いあう私とクロエに、頬をポリポリと掻くアランくん。休暇中も代り映えしないメンバーだったが、学院に戻ったことで再び各科生徒としての生活が始まるための合図のように、笑いあっていた。
――そこに、突然やって来たピンク頭。え? ピンク?
「見つけたわ! 悪役令嬢レティシア!!」
指さしながらそう叫んだ、初めて目にする少女。誰?っていうか、悪役令嬢?? もしかして、忘れていたあの展開復活?
クロエと二人、顔を見合わせて固まってしまった。アランくんは私たちの少し前に出て、ピンク?との間に立ってくれた。ていうか、この世界に『ピンク』の頭いなかったと思うけど・・・・・・ストロベリーブロンドにしても、ピンクすぎるよね? というか、本当に誰?
「私がこの世界のヒロインのマルレーヌよ!!」
「「「マドレーヌ?」」」
「マルレーヌよ! マルレーヌ!!」
フンスッ!って聞こえてきそうなくらい、顔を真っ赤にしたピンクのマドレーヌ?は、勝手に来て勝手に怒って勝手に『ヒロイン宣言』してきた。あれ?ヒロインになりたいから髪が『ピンク』なの? 前世のゲームとかならわかるけど・・・・・・ん?もしかしてもなく、転生者よね?たぶん。
私がマドレーヌ食べたいな・・・・・・なんて思いながらピンクについて考えている間に、クロエが相手してくれていた。
「それで、マヌケーヌ?さんでしたか? レティシア様を呼び捨てにされるなんて・・・・・・。何か御用なの?」
くっクロエ姉さま! 眼が豚汁騎士科生見るときと同じです!! 『使えないゴミ』って目が物語ってます!! 戦闘モードに入りだしたクロエにビビった私は、そっとアランくんの真後ろに隠れる。ちょっと!アランくんまで何ビビってんの!?
「だから、マルレーヌって言ってるでしょ!! いい? 悪役令嬢のアンタなんかには、ぜーったいに負けないんだから!! 私がヒロインよ!」
クロエ姉さまの殺気を感じ取ることすらなくよく吠えるピンクのマドレーヌは、好きかって言って走り去っていった。何だったんだろう? それよりもこの後、爆発寸前のクロエ姉さまを鎮めるほうが大変だった。わたわたしている私とクロエが暴走しないように腕を抑えているアランくんのもとに、少し遅れて本物のヒロインが登場した。クロエ姉さまを幾らでも持ち上げることができ――いや、命を懸けれる本物のヒロインアリスにより、クロエ姉さまのお怒りも鎮まっていった。もうちょっと、早く来て欲しかった・・・・・・。
遅れてきたディオン殿下とアメリーと一緒に講堂で新学期の説明を受け、どの授業を選択するのかをいつものサロンの一角で話し合った。まだまだ暑い日差しが差し込むサロンは、まばらに座る生徒たちの間を通り抜ける魔法調整された涼しい風でいっぱいだった。
授業の話をしていると、空調の風と共に今朝のピンク頭の話が聞こえてきた。どうやら、ピンクのマドレーヌが今期の転入生らしい。えー・・・・・・面倒くさいことにならなきゃいいけど。ていうか、ピンクのマドレーヌか――チゴの実のマドレーヌ、食べたいなぁ。
いつも通り頭の中が平常運転で食べ物にそれだした私をよそに、皆の話はいつの間にか夏季休暇中のアリスのデートの話に移っていた。「それよりさぁ! ベルナール様がね?」とキャピキャピしながら話すアリスは、本物のヒロインが画面上で恋をしていた時と同じように愛らしく輝いていた。
これ、マドレーヌにヒロイン無理じゃない? もしかして、女神様が思い出させたのは、こんな奴が来るかもしれない――からの対策のため?なんじゃないかなって気もする・・・・・・。まぁそれより、あの頭の色・・・・・・すごく気になるわ。あとで、アリスにこそっと聞いてみよう。アルバの整髪料で何とかなるのかなぁ?
「今日って、何か行事なんてあったかしら?」
「いいえ。今日から新学期で、今期の時間割をいただくくらいのはずよ・・・・・・授業も明日からだし」
「そうよね」
何か考え込んで話に入ってこなかったアランくんが、「ああ!」と拳で掌をたたいた。アルバでも、閃いたときのポーズは同じなのね。
「そういえば、本日より転入する者がいると伺っております」
「・・・・・・アランくん。ここ、学院の中」
「あ、そうで――そうだった。まだ慣れま、ぅー・・・・・・慣れねえわ」
ルシールさんとの交代で護衛騎士としてついていても、学院の中では普通に接してとの私のお願いに翻弄されるアランくん。しょうがないよね? 今まで『先輩』として一緒に学院で勉強していたのに、『護衛騎士』として学院に行くと態度変わるなんて・・・・・・淋しいよね?
クスクスと笑いあう私とクロエに、頬をポリポリと掻くアランくん。休暇中も代り映えしないメンバーだったが、学院に戻ったことで再び各科生徒としての生活が始まるための合図のように、笑いあっていた。
――そこに、突然やって来たピンク頭。え? ピンク?
「見つけたわ! 悪役令嬢レティシア!!」
指さしながらそう叫んだ、初めて目にする少女。誰?っていうか、悪役令嬢?? もしかして、忘れていたあの展開復活?
クロエと二人、顔を見合わせて固まってしまった。アランくんは私たちの少し前に出て、ピンク?との間に立ってくれた。ていうか、この世界に『ピンク』の頭いなかったと思うけど・・・・・・ストロベリーブロンドにしても、ピンクすぎるよね? というか、本当に誰?
「私がこの世界のヒロインのマルレーヌよ!!」
「「「マドレーヌ?」」」
「マルレーヌよ! マルレーヌ!!」
フンスッ!って聞こえてきそうなくらい、顔を真っ赤にしたピンクのマドレーヌ?は、勝手に来て勝手に怒って勝手に『ヒロイン宣言』してきた。あれ?ヒロインになりたいから髪が『ピンク』なの? 前世のゲームとかならわかるけど・・・・・・ん?もしかしてもなく、転生者よね?たぶん。
私がマドレーヌ食べたいな・・・・・・なんて思いながらピンクについて考えている間に、クロエが相手してくれていた。
「それで、マヌケーヌ?さんでしたか? レティシア様を呼び捨てにされるなんて・・・・・・。何か御用なの?」
くっクロエ姉さま! 眼が豚汁騎士科生見るときと同じです!! 『使えないゴミ』って目が物語ってます!! 戦闘モードに入りだしたクロエにビビった私は、そっとアランくんの真後ろに隠れる。ちょっと!アランくんまで何ビビってんの!?
「だから、マルレーヌって言ってるでしょ!! いい? 悪役令嬢のアンタなんかには、ぜーったいに負けないんだから!! 私がヒロインよ!」
クロエ姉さまの殺気を感じ取ることすらなくよく吠えるピンクのマドレーヌは、好きかって言って走り去っていった。何だったんだろう? それよりもこの後、爆発寸前のクロエ姉さまを鎮めるほうが大変だった。わたわたしている私とクロエが暴走しないように腕を抑えているアランくんのもとに、少し遅れて本物のヒロインが登場した。クロエ姉さまを幾らでも持ち上げることができ――いや、命を懸けれる本物のヒロインアリスにより、クロエ姉さまのお怒りも鎮まっていった。もうちょっと、早く来て欲しかった・・・・・・。
遅れてきたディオン殿下とアメリーと一緒に講堂で新学期の説明を受け、どの授業を選択するのかをいつものサロンの一角で話し合った。まだまだ暑い日差しが差し込むサロンは、まばらに座る生徒たちの間を通り抜ける魔法調整された涼しい風でいっぱいだった。
授業の話をしていると、空調の風と共に今朝のピンク頭の話が聞こえてきた。どうやら、ピンクのマドレーヌが今期の転入生らしい。えー・・・・・・面倒くさいことにならなきゃいいけど。ていうか、ピンクのマドレーヌか――チゴの実のマドレーヌ、食べたいなぁ。
いつも通り頭の中が平常運転で食べ物にそれだした私をよそに、皆の話はいつの間にか夏季休暇中のアリスのデートの話に移っていた。「それよりさぁ! ベルナール様がね?」とキャピキャピしながら話すアリスは、本物のヒロインが画面上で恋をしていた時と同じように愛らしく輝いていた。
これ、マドレーヌにヒロイン無理じゃない? もしかして、女神様が思い出させたのは、こんな奴が来るかもしれない――からの対策のため?なんじゃないかなって気もする・・・・・・。まぁそれより、あの頭の色・・・・・・すごく気になるわ。あとで、アリスにこそっと聞いてみよう。アルバの整髪料で何とかなるのかなぁ?
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