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第九章 美少女でもいじめられる
地元の英雄
しおりを挟む鬼塚とのディナーデートは、何とか無事に終わった。
ただラブホテルの前で二人して騒いでいたから、誰かに見られていないか心配だ。
翌朝、学校へ向かうと担任の”ねーちゃん”先生にいきなり呼び出しを食らってしまう。
朝のホームルームが始まる前に、すぐ職員室へ来るように言われた。
俺、なんか悪い事でもしたかな?
とりあえず、急いで渡り廊下を抜けて職員室へ向かう。
いつものように扉をノックしようとしたら、ねーちゃんが隣りの部屋から顔を出して。
「水巻、そっちじゃないよ! こっちにおいで!」
と手招きされた。
「?」
この部屋は一度も入ったことない……って、校長室じゃないか!?
マジで俺、謹慎処分でも食らうのだろうか。
と恐る恐る、部屋へ入るとそこには……。
「おお、君が水巻 藍さんだね。女の子なのに勇気ある行動、すばらしい女子中学生だ!」
いきなり白髪の男性に両手で右手を掴まれると、力いっぱいブンブンと上下に振り回されてしまう。
誰だ、このおっさん。
校長先生ではないよな……だって、このおっさんの隣りにいる中年男性が校長先生だし。
辺りを見回すと、狭い部屋にたくさんの大人たちが俺を囲んでいる。
中にはカメラを手に持ち、勝手に撮影する奴らまで……。
一体、何が起きているんだ?
校長先生の後ろに立っていたねーちゃん先生が代わりに説明してくれた。
「いきなりでビックリしたよね。水巻さ、鬼塚の弟をトラックから助けたでしょ? だから福岡市長がわざわざ会いに来てくれたのよ」
改めて、俺の手を握るおっさんの顔をよく眺めてみる。
「え……マジで福岡の市長なんですか?」
「そうだよ。きみがお友達の弟を助けてくれたんだって? そのお礼をしたくて、学校にお邪魔させてもらったんだ」
と1995年当時の福岡市長が俺に頭を下げると、近くにいた記者たちが一斉にフラッシュをたく。
眩しくて、前が見えない……。
このあと、福岡市長とツーショットで地元の記者たちからインタビューを受けることになり。
数日後の新聞やローカルテレビなどに放送されるそうだ。
まあたくさんの大人たちから褒められることは、嫌な気分じゃない。
それにしても……福岡市の市長ってこんな老けてたっけ?
前世じゃ、こうもっとなんというか……。
※
市長から直々に賞状まで貰い、俺は鼻を高くして教室に戻る。
心配していた優子ちゃんが俺の顔を見て駆けつけてきた。
「大丈夫だった、藍ちゃん?」
「いやぁ~ 先生に怒られたわけじゃないよ~ むしろ褒められたというか……あ、優子ちゃん。数日後の新聞紙とかテレビをチェックしておいてよ」
「?」
首を傾げる優子ちゃんを無視して、自分の席に腰を下ろす。
前世じゃ、家に引きこもっていたこの俺が賞状をもらうとは……この世界も捨てたもんじゃないぜ!
その日の授業はいつも以上に、頭に入らなかった。
嬉しくて仕方なかったからだ。
市長なんか最後に「水巻さん、きみを誇りに思うよ。大人になったら市庁舎で働かないか?」なんて引き抜きするんだもんなぁ。
参っちゃうぜ。
帰りのホームルームを終えて、優子ちゃんと一階の下駄箱へ向かう。
ダサい白のスニーカーを土間に下ろして、かかとを入れた瞬間。何か異物が入っていることに気がつく。
とても気持ちの悪い感触が足に伝わってくる。
「うひっ!?」
あまりに冷たかったので、変な声が出てしまう。
隣りにいた優子ちゃんも俺の異変に気がつく。
「藍ちゃん? どうしたの?」
「いや、なんか靴に入っているみたいで……」
そう言ってスニーカーを脱いでみると。
「あ! これは……」
黄色の液体、いや固まりか?
なんかどっかで見たことのあるものだな。
ていうか、臭い。
「藍ちゃん、それってさ。マーガリンじゃない?」
「え? マーガリン? なんでそんなものが靴の中に……」
「やっぱりそうだ。今日の給食のパンについてたマーガリンだよ」
「なんで靴の中に入ってたのかな?」
「誰かが……入れたんじゃない」
食べ物を粗末にする奴は許せんな。
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