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第五章 バスケットボーイズ
時代が早すぎた
しおりを挟む前世で芸人として、大活躍していた”もりもりにんに君”。
この真島中学校の卒業生だと言っていたが、何しに来たんだろう。
気になるなぁ……生で芸能人なんて見たことないし、ちょっと後をつけて見るか!
数時間に渡って数学の教師から居残り指導を受けたので、部活をやっている生徒以外はみんな帰宅している。
学校の廊下を歩いても人気を感じず、静かすぎて恐怖さえ感じてしまう。
だが、この長い廊下を抜ければ、あのにんに君がいるんだ! もう少し、頑張ろう。
体育館に入ると、なぜか中は静まり返っていた。
普段なら生徒たちの練習する足音やかけ声などが、元気に聞こえてくるはずなのに……。
「えぇ~ 今日はこの学校のOBで、両刀高校の2年生。”中川 譲二”くんに来てもらったから……」
と赤いジャージ姿の教師の隣りに立つのは、なぜか白いタンクトップにデニムのショートパンツ姿の中川先輩。
なんで、着替えたんだ?
それを真面目にバスケ部の生徒たちが、体育座りをして話を聞いている。
「あ、あいつもいる……」
その中には、ツンツン頭の少年もいた。
鬼塚だ。大好きなバスケの話だから、いつも以上に真剣な顔つき。
どうやら、中川先輩は鬼塚の憧れのようだ。
目をキラキラと輝かせて、前のめりで話を聞いている。
「じゃあ、お前ら。中川くんに何か質問は無いか?」
ってこれ、完全にバスケとしての先輩だよな……。
あのネタとか、見れないのかな。
でも、まだ芸人じゃない中川先輩だし。
と一人で、体育館の隅で隠れていると。
「はい! 俺から良いですか!?」
一人の少年が姿勢を正して、挙手した。
鬼塚だ。
「お、鬼塚か。いいぞ、言ってみろ」
「はい!」
すると、鬼塚はその場で立ち上がり、「俺、1年の鬼塚 良平って言います!」と自己紹介を始めた。
中川先輩は可愛い後輩だと、ニコニコ笑っている。
「あの……俺、1年なのに先輩からレギュラーメンバーに入れてもらえて、嬉しいんですけど」
「うん、良かったね!」
「でも俺は中川先輩みたいに背が高くないから……みんなの足を引っ張っている気がするんです」
体格ゆえのコンプレックスを聞かされて、これには中川先輩も少し険しい顔になる。
「なるほど……」
「俺1年生の二学期に入っても、150センチないんです。毎日牛乳もたくさん飲んでいるんですが、これから身長は伸びると思いますか?」
「……」
黙り込む、にんに君。
さすがの中川先輩も、身体の話となれば別だ。
いくらエースだったとは言え、身長は必ず個人差が生じる。
簡単には答えられるはずがない……。
しかし俺の予想とは反して、にんに君が取った行動に呆然としてしまう。
いきなり右腕に力こぶを作ると、反対の手でパシパシと叩き始める。
「おい、聞かれてますよ……この子の身長、伸びるのかい? 伸びないのかい?」
これには、俺も声に出して突っ込んでしまう。
「え、今”アレ”をするの? ウソでしょ?」
何人かの部員が俺の声に気がついたが、にんに君は無視する。
「伸~び~る! ファイト・パワーーー!」
堪えきれなくなった俺は、その場で爆笑してしまった。
「はははっ! めっちゃウケる! さすが、にんく君だ……あ~ お腹痛い~!」
だが、俺以外の部員はあのネタを見ても笑いもせず、真面目に話を聞いている。
鬼塚に至っては感動から泣いていた。
「ありがとうございます、中川先輩! 俺、これからも毎日牛乳を飲んで、練習を頑張ります!」
鬼塚のやつ、真に受けている……。
まだ、にんに君のデビューは、早すぎたのかな?
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