おじさんとショタと、たまに女装

味噌村 幸太郎

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第六章 温泉と学生時代

出会ってしまった

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 介抱するためとはいえ、見知らぬ女の子を一晩、我が家に泊らせてしまった。
 俺はなにもしていない。
 頭痛が酷いと言うから、和室に引いてある布団で寝かせてあげた。

 彼女が怖がるかもしれないと、俺はキッチンであぐらをかいてウトウトしている。
 

「あ、あの……おはようございます」

 瞼を開くと、眼鏡をかけたショートボブの女性が立っていた。
 昨晩起きた出来事を忘れていた俺は、思わず悲鳴を上げてしまう。

「うおっ!?」
「ご、ごめんなさい。起こしてしまって……あの私、もうだいぶ良くなりましたので」
「ああ……そうか。なら良かった。ひとりで帰れるかい?」
「はい。何から何までありがとうございました」
「いいよ。ああいうの、見ていて嫌だからさ」

 俺がそう言うと、彼女はなぜか吹き出す。

「フフッ……変わってますね」
「は?」
「でも、そういうの、良いと思います」
「?」

 その日は何事もなく終わり、もう彼女と会うことは無いと思っていた。
 同じキャンパスとはいえ、学部も名前も知らない。
 だけど、ある日。彼女の方から俺の元へ会いに来た。
 
 話す時間が長いだけで、意味もわからない講師の話を、ボーっと聞き流していると。
 隣りに座っていた同級生が、俺の肩を指で小突く。

「おい、黒崎。お前に会いたがってる女の子がいるらしいな」
「はぁ?」
「本当だって! ほら、教室の後ろに立ってるじゃん」
 
 どうせ、いつもの冗談だと思っていたが。
 一応、後ろへ振り返ってみる……すると、確かにひとりの女の子が目に入る。
 眼鏡をかけた地味な女。あ、この前の介抱した子か。
 
 講義から抜け出して、廊下で彼女と話すことにした。

「良かった! こちらの学部だったんですね!」
「きみ……よく俺を見つけられたね」
「はい! 先輩にちゃんとお礼をしたくて、キャンパス中を探しました!」
「そうなんだ……」


 それからだ。未来と話すようになったのは。
 二人を仲良くするラッキーアイテムが、嘔吐てのがロマンないけど。
 学部こそ違えど、同じ大学の学生だし。顔を合わせる機会もある。
 次第に仲良くなって電話番号を交換したり、二人きりで食事へ行く仲に。

 気がつけば、俺ん家で一緒に暮らしていた……。
 彼氏彼女の関係になり、あいつも俺のことを「先輩」から「翔ちゃん」と呼ぶようになった。
 
 それから、10年経った今。
 また同じ光景を見ることになるとは。

 
「うおえぇぇ! ご、ごめん、翔ちゃん。迷惑かけて……」
「謝らなくていいから。吐けるなら、出しちゃえよ」

 と元カノの背中をさすっている。
 3年前に俺からこいつとの縁を切ったはずなのに、また学生時代に戻ってしまった。
 まさかと思うが、これを狙って居酒屋へ誘ったのか?
 いやいや、こいつに限ってそんな考えは……。
 
 自分から誘った居酒屋で、調子にのって日本酒をがぶ飲みしたから。
 食べたものを全部、吐いている。
 外で吐くのもご近所に色々と迷惑をかけてしまう。
 だから、俺の家に連れて来た。

 久しぶりに彼氏の家へ入ったと言うのに、パンプスを脱ぎ捨てると、トイレへ直行。
 現在に至る。
 彼女が少しでも楽になれるよう、俺はずっと背中をさすっている。

「少しは良くなったか?」
「う、うん……本当にごめん。前よりはお酒、強くなったと思ったのに」
「お前はそんなに強くないだろ」
「でも、翔ちゃんと一緒に飲めるのが、憧れだっから。うぇぇ……」

 ついには、泣き出してしまった。
 これはこれで、罪悪感を抱いてしまうな……。

「別に、酒を飲まなくてもいいだろ? ちょっと待ってろ、水を持ってくるから」
「ごめん……」

 もう吐くものは残っていないだろうが、気持ちが悪いのだろう。
 トイレにしがみつく未来を残して、俺はキッチンへ向かう。
 食器乾燥機の中に、ピカピカに磨き上げられたグラスが置いてあるのに気がつく。
 きっと、航太が洗ってくれたものだろう。

 グラスを手に取り、蛇口から水を流そうとした。その時だった。
 いきなり玄関のチャイムが鳴る。
 俺は何も考えず、グラスを持ったまま、扉を開いてみた。
 するとそこには……今、手に持っているグラスを磨き上げた張本人が立っていた。

「お、おっさん……遅くにごめんね。どうしても、今見せておきたくて」

 と頬を赤らめる。
 彼が恥ずかしがっているのには、理由がある。
 それは今、航太が着ている服装だ。
 
 編集部の高砂さんが送ってきたコスプレの一つ、中学生時代の体操服とブルマだ。
 必死に体操服の裾を引っ張り、ブルマを隠そうとしている。
 きっと股間の膨らみが気になるのだろう。
 まあ、彼のは可愛らしいサイズだが……。

「航太、お前……どうして?」
「お、オレもすごく迷ったんだぜ! でもさ、作品のためにと思ってさ……」

 だから最近、避けていたのか。
 とひとりで納得していると、背後からゾンビのようなうめき声が聞こえてきた。

「しょ、翔ちゃん……お水くれる?」

 ヤバい、今は未来が家に来ていたんだ。
 航太になんて言おう?
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